ミュージカル「少女革命ウテナ~深く綻ぶ黒薔薇の~」開幕! 能條愛未「独特の世界観がさらに濃厚に」

2019年6月29日(土)にミュージカル「少女革命ウテナ〜深く綻ぶ黒薔薇の〜」が東京・シアターGロッソにて開幕した。2018年3月に上演された第1弾に続く今公演では、原作でも非常に人気の高い「黒薔薇編」が上演される。

原作の「少女革命ウテナ」は1997年に放送され、王子様に憧れる男装の少女・天上ウテナ(能條愛未)が「薔薇の花嫁」と呼ばれる少女・姫宮アンシー(山内優花)と出会うことから「世界を革命する力」を手に入れるための闘いに巻き込まれていく物語。ミュージカル第2弾となる本作も、第1弾「白き薔薇のつぼみ」に続いてスーパーバイザーにアニメの生みの親である幾原邦彦、脚本・演出を吉谷光太郎が務める。

本作では、「思い出を永遠にするため」に暗躍する天才・御影草時(徳山秀典)と、御影と行動を共にする謎の少年・千唾馬宮(こんどうようぢ)が登場。御影が主宰するゼミ「黒薔薇会」が開催される根室記念館で、2人が悩みを抱える少女たちをカウンセリングする形で、心の闇を解放し、黒薔薇のデュエリストに仕立ててウテナを追い詰めていく。


そんな黒薔薇のデュエリストとされてしまうのは、西園寺莢一(吉澤翼)に憧れる篠原若葉(竹内夢)、薫幹(樋口裕太)の双子の妹・薫梢(田上真里奈)、有栖川樹璃(立道梨緒奈)の幼馴染である高槻枝織(朝倉ふゆな)たち。


黒薔薇のデュエリストなった少女たちはセーラー服から決闘用の華麗で勇壮な衣装となり、黒薔薇の刻印を指にはめ、黒い薔薇を胸につけて、ウテナとの決闘に挑む。

決闘が開幕する前のキャスト・アンサンブル総勢による「絶対運命黙示録」のミュージカルシーンは荘厳で圧巻。「絶対運命黙示録」の楽曲だけでなく、ウテナがアンシーの体からディオスの剣を取り出すシーンや、黒薔薇のデュエリストが生徒会執行部のメンバーの体から剣を取り出すシーンなど、アニメの名シーンが決闘を盛り上げてくれる。


第1弾ではウテナと生徒会執行部との決闘だったが、今回はそこに黒薔薇のデュエリストも加わることでさらに決闘シーンは華麗で迫力あるものへとパワーアップしている。デュエリストたちの心情を描くミュージカルシーンを組み合わせた決闘シーンは、決着時の薔薇が舞い散る瞬間まで目が離せない。

そして、鳳学園の理事長代行でアンシーの兄でもある鳳暁生(吉岡佑)も今作から登場。アダルトな雰囲気を醸し出しながら、秘密めいた存在としてウテナとアンシーに関わっていく暁生の姿が舞台上に存在感を示す。

本作では、一つのシーンに舞台中央だけでなく、上手・下手で別場面を同時に進行させることによって、原作のストーリーをできるだけ盛り込んでおり、ギュッとテンポの良い展開と何回見ても新たな気づきのある演出がとられている。また、複数のシーンが同時に展開する演出の中で、暁生がウテナやアンシーと共に登場人物たちの行動を見ているシーンでは、全てを達観したような存在である暁生のらしさが出ている。

アンサンブルの様々なジャンルのダンスと共に贈られるミュージカルシーンの数々は音楽・歌唱ともに原作の世界観にマッチしたものとなっている。

その中でも、生徒会長・桐生冬芽の妹である桐生七実(鈴木亜里紗)は原作同様にコミカルな役回りの存在として、ミュージカルシーンでも楽しませてくれる。特に、牛に関わるあの小道具も登場するシーンは原作ファン必見。

男装少女などの特徴的なキャラクタービジュアルに、哲学的な言葉がちりばめられた独特のセリフ、書き割りのような背景、影絵少女による劇中劇など、宝塚や前衛演劇をモチーフとしていたアバンギャルドな原作だけに、2.5次元ミュージカルとも相性は抜群。「少女革命ウテナ」の世界観がしっかりとステージ上に表れている作品だ。

なお、ゲネプロ前の囲み会見には能條、山内、吉澤、立道、樋口、吉岡、徳山が登壇し、意気込みや見どころなどを語った。

能條愛未:今回から新たに加わったキャラクターたちがすごく個性が強くて、そのキャラクターたちが物語をいい感じにかき乱してくれてることで、この作品の独特の世界観がさらに濃厚な感じになりました。

人には言えない秘密とか、ちょっと邪悪な部分が今回は前面に出ています。それをミュージカルでしかできない表現方法でみなさまにお見せできると思います。見ている方はどこか心がズッシリするような感じになると思うんですが、その感覚を楽しみつつ見てほしいです。

徳山秀典:御影草時という役は、体でも、そして感情でもあまり表現するところがないので、歌の部分でもパートによって歌一つにとってもみなさんに少しでも届くように頑張りたいと思います。

見どころとして、曲がものすごくあります。ずっと曲が流れていて、すべての曲が感動できて、まるでドラマの挿入歌のような曲もあれば、映画のオープニング・エンディングのような曲もあり、「黒薔薇」を象徴するような暗い雰囲気の曲もあります。それが、すべて物語に沿って流れているのですごく心地よく、音楽と共に流れていくというところが、「少女革命ウテナ」をミュージカルでやる素晴らしい意義だなと思います。音楽にもぜひ注目してください。

樋口裕太:
今回の舞台は1回目に見ると疑問があって、2回目になると気づくことがあって、3回目に「なるほど」と納得できる舞台だと思います。何回見ても新たな発見がある舞台だと思いますし、何回見に来ても絶対に楽しめる舞台だと思います。

立道梨緒奈:
アニメの世界が本当に忠実に再現されており、前作よりもキャラクターが増えたので、人間模様がすごく緻密に作られているんじゃないかと思います。そこをたくさん、瞬きせずに見て頂きたいです。

吉澤翼:
見どころはたくさんあるんですけど、その中でもアンサンブルのダンサーさんたちが本当にものすごいダンスをしてくれて、それも見どころの一つなのではないかと思います。色々なところで、色々なことが起こっているので、2回、3回見たらもっと楽しめるんじゃないかと思います。

吉岡佑:
1シーンの中に2つ、3つのストーリーがあって、目が足りないと思います。吉谷さんらしい演出で難しいところもあるんですが、「少女革命ウテナ」の世界観をすごく良く表現しています。何回も見て頂いて理解ができると、すごく楽しい舞台になっていると思います。

山内優花:
今回の物語では、いろんなキャラクターの心の闇や背負っているものが軸となって、決闘が行われていきます。その心の闇は見てくださる方の中にも眠っているかもしれないですけれど、心の中に誰もが持っている闇なので、見る方によって違うキャラクターに心を重ねていけるんじゃないかと思います。自分がどのキャラクターに一番思いを寄せやすいのか、そういうことを思いながら見て頂きたいです。

なお、11月20日(水)には千秋楽公演を収録したBlu−ray&DVDの発売が決定。詳細は公式HPを参照のこと。

【公演概要】
タイトル:ミュージカル「少女革命ウテナ~深く綻ぶ黒薔薇の~」
日程・場所:2019年6月29日(土)~7月7日(日)全10公演 シアターGロッソ
出演:
能條愛未、山内優花、吉澤翼、立道梨緒奈、樋口裕太、鈴木亜里紗、竹内夢、朝倉ふゆな、田上真里奈、こんどうようぢ、熊田愛里、吉岡佑、徳山秀典
<アンサンブルキャスト> 仲田祥司、多田滉、後藤光葵、吉田瑞貴
原作:ビーパパス
スーパーバイザー:幾原邦彦
脚本・演出:吉谷光太郎
主催:ミュージカル「少女革命ウテナ」製作委員会
企画・製作:エグジットチューンズ/ポニーキャニオン
制作:ポリゴンマジック
コピーライト:
©ビーパパス・さいとうちほ/小学館・少革委員会・テレビ東京 ©ミュージカル「少女革命ウテナ」製作委員会
公式サイト:musical-utena.com
公式Twitter:@musical_utena
取材・文:櫻井宏充