『ここはグリーン・ウッド』は、那州雪絵が白泉社の雑誌「花とゆめ」に1986年から1991年にかけて連載した少女漫画作品。1991年から1993年にかけてOVA化、単行本は、花とゆめコミックスから全11巻で刊行。
開演5分前はベルではなく、学校でよく聞くチャイムの音、ここから気分は盛り上がる。そしてこの物語の主人公である蓮川一也(小西成弥)が登場する。モノローグ、名門男子私立緑都学園に晴れて入学、しかし、事故とか入院とかで5月に遅れて入学したのだった。そして舞台は一転して賑やかな寮の風景、男子学生たちが、それこそ『ワチャワチャ』と楽しそうだ。そして楽しい音楽に乗ってのオープニングで歌って!踊って!それから本編が始まる、という趣向だ。
物語は原作通りに進行、早速、いじられる一也、寮に入るや否や如月 瞬(大平峻也)が「実は女性」という「真っ赤な嘘」に簡単に騙される。騙したのは寮長の池田光流(長妻怜央)と生徒会長の手塚 忍(影山達也)であった。怒る一也であったが、逆に気に入られてしまった。それはたから見れば(客席から見れば)愉快で面白おかしい、本人にとってはいっときも気の休まることのない寮生活が始まるのだった。
実は一也は大好きだったすみれが兄と結婚してしまったことにいたたまれなくなり、この全寮制の学校を選んだのだが・・・・・なんと!兄である一弘(山田ジェームス武)が学校の保険医になっていた!彼にとっては不幸に不幸が重なる、『不幸のミルフィーユ』状態なのだが、これが超絶おかしいのが、この作品の楽しいところ。夏休み、皆が帰省するにもかかわらず、寮に残ったり、そこへ・・・・・・まさかの!そして本人にとっては絶対に知られたくない自分自身の『秘密』が次から次へと暴露されていく。そして夏休みも終わり、秋になり、冬休み。寮生活の四季折々の生活がドタバタ調で描かれていく。
主要キャラクターが個性的なのは言うまでもないが、脇のキャラクターも強烈な印象。寮の一室をゲーセンにする者、蛇を飼っている者、突如、ジャーナリズムに目覚める者などなど、インパクト大で、舞台上でしっかりと爪痕を残す。
歌あり、ダンスあり、そしてドタバタあり、なエンタメ要素満載のノンストップのおよそ2時間10分ほどの上演時間。学生生活やそこで起こった出来事など、観客自身の体験もちょっと思い出させてくれる、『ある、ある』な感情。実らない恋、クラスメイトにいたずらされた(した)こと、ちょっとした勘違い、思い込みで突っ込んでいったこと、誰もが経験したことのある出来事、感情、思い。ちょっとセンチメンタルな感情とクスッと笑える感情が入り混じる。ライトで肩のこらない作品である。
また、タイトルにもなっている「グリーンウッド」は緑都学園の寮「緑林寮」の別名で学生たちは親しみを込めてそう呼んでいるが、「緑林」は青々とした林という意味の他に、漢の王匡・王鳳などが反乱し、湖北省の緑林山にこもり盗賊となった中国の故事があり、転じて「盗賊」とか「盗賊の根城」などを意味する。また”Green Wood”、英国では無法者が集まる場として連想される。よって、この作品タイトル曲者たちが集まる寮の住人たちをイメージしている。
なお、ゲネプロ前に囲み会見が行われた。登壇したのは蓮川一也役:小西成弥、如月 瞬役:大平峻也、 手塚 忍役:影山達也、池田光流役:長妻怜央、そして脚本・演出のほさかよう。
まずは挨拶、
「一ヶ月間みんなで稽古をしてきて、これから(学校に)入学する時のようなドキドキとワクワク緊張が入り混じっているような感じです。お客様に楽しんでいただけるように全力で突っ走ります!」(小西成弥)
「単純に今日(初日)がくるのが待ち遠しくってすごく嬉しい気持ちで、朝、起きました。稽古前にご飯を食べに行ったり、学校みたいにわちゃわちゃして、男子校みたいなところもありつつ、稽古中は締めるところはきっちりやって・・・・楽しみですね。みんなで力を合わせて全力で届けていければ」(大平峻也)
「楽しく濃密な稽古でした。多くの方に愛されている作品で、魅力的なキャラクターが多くいて、また魅力的な役者も揃っていると思うので、そちらも楽しみにしてくだされば」(影山達也)
「最初、みなさんにお会いした時は緊張してて僕自身、不安でしたが、みんな優しくってしっかり教えていただき、このまま、ずっと稽古が続けばいいなと(笑)、でも初日がきてしまったので、いい意味で稽古場と同じようにやっていけたらと思います」(長妻怜央)
脚本・演出のほさかようは「どこまで原作に忠実にいくか、どこまで再現するのか考えていました。主役は一也ですが、後半になればなるほど、群像劇の側面が出てきます。ドラマがあったりとか、こういう考え方なんだ、こういう生い立ちなんだっていうのが徐々に明らかになって、ちゃんと生きている一人の人間として描かれている作品なので、演出においても、ちょこっと出ているコたちにも何かしらのドラマがある。芝居の中で一つの物語になっているところを人間的に描いてきましたので、他の寮生も浮かび上がってくると思います。そちらも楽しんでいただければと思っています」とコメント。大勢の寮生が登場し、ワイワイとやっているシーンなどはよくみると一人一人が個性的。ここは要注目だ。
そして稽古場での面白エピソードについては小西成弥が「怜央が『ラーメン、食べる?』を毎日!」と暴露し、皆、大笑い。そして「本当の男子校にいるような、意味のないところで盛り上がる!」とコメント。また舞台ならではの気をつけていることについては「声の張り」と影山達也。長妻怜央は「原作のコメディのところはしっかりと」と語る。ほさかようは「あの年代の男子の、かっこいいところだけではなく、闇があったり、地味なところもあったり『かっこいいけど、こういうところもあるよね』と話し合って創った」とコメント。最後に小西成弥が「長く愛されてきた作品をやらせていただけるのは嬉しいです。1ヶ月間稽古してきて男子寮の感じは出来上がっています。笑顔になって帰ってもらえれば。学生時代を思い出して見にきていただいた方にも青春時代を思い出したりしていただき、面白がってくだされば」と締めくくって会見は終了した。
<『ここはグリーン・ウッド』とは>
1986~1991 年に『花とゆめ』(白泉社)にて連載されていた、那州雪絵の代表作。 主人公・蓮川一也は、初恋の女性が唯一の肉親である実兄と結婚してしまい、 失恋のショックから全寮制の名門男子高校「緑都学園」に進学を決意するも、入学前日に胃潰瘍を患い、1 か月遅れで入学・入寮することに。 しかし、学園附属の寮・通称「グリーン・ウッド」は、寮長の池田光流・生徒会長の手塚忍・同室の如月瞬を始め、 “変人の巣窟”と噂される程、一筋縄ではいかない個性派な面子が揃った寮だった!? 一也の前途多難な高校生活が、いま幕を開ける――!
【公演概要】
タイトル :SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』
日程・場所: 2019年7月19日(金)~7月28日(日) 天王洲 銀河劇場
原作:那州雪絵「ここはグリーン・ウッド」(白泉社)
脚本・演出:ほさかよう
作詞:浅井さやか
音楽:大石憲一郎
振付:泰智(KoRocK)
出演:蓮川一也役:小西成弥 如月 瞬役:大平峻也 手塚 忍役:影山達也
池田光流役:長妻怜央 平井浩基 北乃颯希 笹森裕貴 小田桐咲也 寺崎裕香 岡田あがさ
森遼 佐野真白
世古口 凌 /
内野楓斗 / 山田ジェームス武
アンサンブル・冨田ヒカル 前川ゆう
チケット発売日:2019年6月30日(日)10時~
公式HP:https://www.schoolstage-greenwood.com
公式ツイッター:https://twitter.com/stage_greenwood (@stage_greenwood)
クレジット:©那州雪絵/白泉社
取材・文:Hiromi Koh