さくらももこ原作、向井葉月主演 舞台「コジコジ」役に立たなくっていい、いてくれるだけでいい。

まさかの舞台化と言われた舞台「コジコジ」が開幕した。よく知られているキャラクターが登場するが、今回は原作にもないオリジナルストーリーとなっている。

物語の出だしは学校のシーンから。アニメ第一話部分を覚えていれば、脳内で『変換』もできる場面だ。先生はなぜ、メルヘンの住人が勉強しなければいけないのかを説くが、コジコジ(向井葉月)はピンとこない。何かを考えるわけでもなく、黒板に書いてあることすらわからない。遊んで食べて寝てるだけの生活、それのどこがいけないのかコジコジにはさっぱり理解できない。次郎(輝山立)はテストの成績が芳しくない、母親に怒られる、と心配する。しかし、次郎のようなリアクションが一般的だ。

何になりたいのか聞かれて「コジコジはコジコジだよ」とさらりと答える。誰も自分以外の者にはなれない。しょっぱなからずしんと響く。原作同様にユルーークやってるキャラクターたちだが、彼らは彼らなりに考えて生きている。それを回想シーンや絶妙なやり取りで見せていく。

最初の歌はかなりシニカルで歌詞をよーーく聞いて見ると・・・・・・。メロディはよく聞くアニメのオープニングっぽい曲調、『っぽい』というところが肝心だ。
そして流れ星にお願いをするために流れ星を見つけにいくのだが・・・・・。

キャラクターたちの会話がとにかくいちいち面白おかしいが、時にはドキッとするような内容も含まれている。挙動が大げさ、驚き方も「そこまで驚かなくてもいいだろう」的な大仰さ。ところどころに歌とゆるいダンスを挟み込む。このゆる〜い感じが「コジコジ」らしいところ。効果音、「ガーーーン」「キラリン」と徹底的にマンガチック。回想シーンもここでいちいち、コジコジが「わかめ(回想・・・・海藻(笑))だね」というところもなかなかにおかしい。そしてついに流れ星の兄弟に会える一同・・・・・・。


ところが、ところが・・・・・最後の最後で・・・・「あらま」な事件、そしてそう切り抜けるか〜な展開、オリジナルではあるが、なんだかアニメにありそうな感じも漂う。
コジコジの向井葉月はじめ、皆、全力でゆるく演じ、被り物もよく似合っている。それぞれに悩んだり、傷ついたり。次郎(輝山立)は母親が厳しく成績の事をいうのでつい「お母さんなんかいなくなればいいのに」と思ったり、吾作(芦原健介)は妹のルル(伊藤小春)と比べてなんでブサイクなんだろうと悩んだり、ハレハレ(大神拓哉)はジョニーが気になるが、いつかジョニー(才川コージ)が記憶を取り戻して自分の前からいなくなるのではないかと心配する。そのジョニーは自分のルーツがわからないので悶々としている。それでも生きている。

スージー(あまりかなり)とブヒブヒ(服部ひろとし)は悪役であるが、徹底的なワルには見えないし、やかん君(いーま)はペロちゃん(宮崎理奈)に恋してお約束のように沸騰し、カメ吉(市川刺身)はお茶が飲めると大喜びする。ゲラン(中村ヒロユキ)は有名人の色紙集めに精を出し、ドーデス(足利至)はクール、そんなお約束キャラがところせましと駆け回ったり、派手にこけたり。そして・・・・・テル子が!可愛い!

ラストの歌は心温まる。役に立っていようがいまいが、そんなことはどうでもいいと思える。生きているだけで、誰かを幸せにできるかもしれない、いや、きっと幸せにできる。笑って笑って、そして「お〜っと」と思い、「そんなバカな」と思い、最後に、このオチは反則かもしれない。

<”そこはメルヘンの国”>
そこの住人たちは、泳げない魚と飛べない鳥の合体した半魚鳥の次郎くん、有名人のサインばかり集める太陽の王様ゲラン、
謎のブルガリア人ジョニーくん、天使らしからなる容姿で悪者に恋心を抱く天使・吾作、なぜかメルヘンの国にいる悪者ブヒブヒ、などなど、一癖も二癖もある変なキャラクターばかりだった。
そんな面々の中でも特に異彩を放つのは、年齢も性別も不明なコジコジという謎の宇宙生命体だった。
自由気ままでありながら、ときどき哲学的な発言で真理をついたり、かと思えばとんちんかんな言動で級友たちを呆れさせたりと・・。
コジコジと、コジコジをとりまくメルヘンの国のナンセンスファンタジー。
【公演概要】
舞台「コジコジ」
日程・場所:2019年8月21日(水)~25日(日)CBGKシブゲキ!!
原作:さくらももこ
脚本・演出:なるせゆうせい
出演:向井葉月(乃木坂46)、輝山立、宮崎理奈、大神拓哉、あまりかなり、市川刺身、中村ヒロユキ、服部ひろとし、青地洋、いーま ほか
公式HP:https://stage-of-cojicoji.com/
撮影:金丸雅代
取材・文:Hiromi Koh
(C)さくらももこ(C)舞台「コジコジ」製作委員会