キャストの熱気がドラマを大きく牽引!エンタメ要素ぎっちり!銀岩塩VOL.4 FUSIONICAL STAGE 「ABSO-METAL」〜価値×時間=幸せのメダル〜

壮大なファンタジーと緻密な心理描写を融合し、新しいエンタテインメントをめざす舞台プロデュース・ユニット“銀岩塩”の最新第4弾となる「vol.4 FUSIONICAL STAGE 『ABSO-METEL』~価値×時間=幸せのメダル~」が9月4日から9月8日までこくみん共済coopホール(全労済ホール)/スペースゼロにて上演。その初回直前のゲネプロにお邪魔してきた。

2015年12月に『ジアース アートネオライン 神聖創造物~その老人は誰よりも若かった~』で旗揚げし、続けて『牙狼〈GARO〉~神ノ牙覚醒~』(17)『神ノ牙-JINGA-転生』(19)と上演してきた銀岩塩だが、今回はユニットの“塩”こと塩田泰造による完全オリジナル脚本。これまでの銀岩塩のすべての舞台に出演してきた井上正大が、出演と演出を兼ねる。

舞台となるのは過去か未来か、この世界か異世界かも定かではない(もしかして宇宙船の中?)、いつかどこかの時代のAMORDIE(セント・アモーディ)学園。

この学園は才能や容姿、生命力など人間を構成するすべての要素が“アブソメタル”という特殊メダルに換算されることで絶対的価値となる環境下に置かれている。

生徒たちはそれぞれの力量に応じたアブソメタルを持ち合わせており、分不相応の量を持つと肉体や精神が悲鳴をあげてしまう。

また当事者同士の承認によってメタルは移動する(簡単にいえば、Aの才能をBが欲したとして、双方同意のもとで一定額のメタルを支払うことで、BはAの才能を我がものにできる。つまりは魔法の通貨ともいえる)。

またメタルをすべて失ってしまった者は、罰則として一時的に(いや永遠に?)地下労働に従事しなければいけない。

そんな学園を生徒会長ナイゼル(井上正大)および生徒会を率いるナンバーズが絶対的な力で支配している中、ひとりの青年ルカ(正木郁)が転入してきたことから、物語は始まる……。

本作は舞台前面に半透明のスクリーンが張られ、映像の投射によってそれぞれのキャラクターが保有するアブソメタルの額量や反応図、移動など映し出される仕組みになっている。

またところどころ舞台の諸所と同じシーンをロケ撮影したものをステージとシンクロさせながら映し出すことで、たとえばステージ上の生身の人物たちとスクリーンに映しだされる彼らのアップがオーバーラップし、エモーショナルな効果を高めることに成功している。

さらに“FUSIONICAL STAGE”と銘打っているだけあって、単に学園SFとしてのテイストだけでなく、歌あり踊りありのミュージカルが繰り広げられたり、激しい殺陣を含めたアクション・シーンもふんだん。まさにエンタメの諸要素を詰め込めるだけ詰め込んだ感がある。

キャラクター設定で唸らされるのは、主人公ルカの幼馴染ヴィヴィアン(伊藤萌々香)と彼女の歌声を狙うシェビー(丹羽絵理香)、自称“神の子”ダミエ(高﨑俊吾)とナンバーズ最強の武闘派アイコ(遊馬晃祐)、教師ローク(岩田有弘)と地下で亡霊の売店を営むマークツー(和泉宗兵)など、それぞれが対の関係性を保ちながらルカと対峙していくところ。

ナンバーズの面々も天井からスパイダーマンのように逆さ吊りで現れるジョンヒ(DoNcHY..)や、機関銃ぶっぱなしまくりのカ・イ・カ・ン女学生ミア(LILY)、仮面ライダーと見まがうほど(?)の機械の肉体を持つやまだ(ヤバイ仮面)など、ユニークなキャラ多数。

総体的に、少年漫画などに顕著な愛と友情と熱血のハイテンションSFハイパー学園ものを生身のパフォーマンスで披露されている感は強く、もっともそれに応じたキャスト陣のエネルギッシュさがドラマを上手く引っ張ってくれているので気持ちいいことこの上ない。

とにもかくにも2時間前後の上演時間が瞬く間に過ぎてゆくのは必至。衝撃のラストも含めて、ぜひその目と耳で、そして全身で体感していただきたい!

さて、ゲネプロ終了後に出演者の囲み会見が行われたので、その模様も紹介しておきたい。

出席者はルカ役の正木郁、ヴィヴィアン役の伊藤萌々香、アイコ役の遊馬晃祐、ダミエ役の高﨑俊吾、ローク役の岩田有弘(銀岩塩の“岩”)、マークツー役の和泉宗兵、そしてナイゼル役兼演出の井上正大。

「ゲネプロを終えて、未だに汗が止まらないくらいの感じですけど、そのくらいの熱量と、加えて芝居に歌にダンスにアクションと、いろいろなエンタテインメント性が詰まっている舞台ですので、老若男女問わず楽しめる舞台になっています。
銀岩塩さんが作り出す独自の映像とアクションなどを通して、他の座組ではありえないような、オリジナルの最先端を行くようなものを目指しながら、みんなの気持ちをひとつにして作りあげてきましたので、そのあたりも注目していただけたらと思います」(正木郁)

「これから本番なんだ…と、ちょっとずつ実感しているところです(笑)。自分たちも楽しみつつ、見ていただいた方々にも『あっという間に終わっちゃったね』と思っていただけるような楽しい時間にできたらいいなと思っております。
ヴィヴィアンは多分、お客さんの目線で一番見やすいキャラクターではないかと思いますので、彼女と一緒の目線になって見ていただけたら嬉しく思います」(伊藤萌々香)

「僕は生徒会メンバーの役なんですけど、実はこのメンバーひとりひとりのキャラクターがとても強いので、自分もアイコとして負けないように出していこうと。そういった普通の生徒会とは異なるところなども注目していただければと思います。
映像も本当にすごくて、僕自身も客席から見ていたいほどなんですけど(笑)自分たちもそれに負けないように頑張っていきたいですね」(遊馬晃祐)

「“FUSIONICAL STAGE”と名前がついているようにダンス、映像、芝居、殺陣などすべてがフュージョンしてる作品で、僕自身も今回ダンスやアクションにも挑戦していますが、本当にいろいろなテクニカルがこの劇場には楽しく詰まっていますので、たくさんの方々にご覧いただきたいです。
僕が演じるダミエは、ルカと関わることで自分も変わっていくというストーリーがありますので、そういったところも自分の中で繊細に出していきたいと思いますね」(高﨑俊吾)

「銀岩塩にとって今回は旗揚げ以来のオリジナル作品。演出の井上君と脚本の塩田さんと私とで1年以上前から何度も打ち合わせを重ね、広く深く新しい世界を構想していく中で、さまざまなジャンルをエンタメとして融合させ、その上で素敵なキャストとキャラクターが揃えることができました。
私が演じるロークはミステリアス担当で、教師目線で学生たちがどうなっていくか、またマークツーなどとの関係性とか、それぞれの裏も推測していただけるのも面白いかなと思います」(岩田有弘)

「1カ月以上前からこのメンバーで揃ってずっと稽古してきましたが、本当に密度の濃い毎日で、気がつくとあっという間の日々でした。そんな感覚の中、SFというジャンルではありますが、恋愛あり、熱いバトルあり、ネタバレできない要素も多数あります。
今ここにいる郁の汗を見ていただければお分かりのように、さらっとやった芝居ではありません。みんな本当に汗だくになって、がむしゃらに舞台上で生きているところを見ていただきたいですね」(和泉宗兵)

「今回みんなと一緒に充実した稽古の日々を過ごすことができて、これからいよいよ本番の幕が開き、観客の皆さんと一緒に駆け抜けることができるのが楽しみです。僕としてはまだまだ演出としてやることがいっぱいありますし、ナイゼルとしても早くみんなに追いつかなきゃといったところもあります。
ナイゼルはルカと対比となるキャラクターですので、その関係性を上手く見せていけたらと。そして見に来てくださったお客さんが『こんなの観たことない!』と楽しんでいただけるような舞台になるよう頑張りたいと思います」(井上正大)

<銀岩塩とは?>
2015 年に立ち上げ、旗揚げ公演を本多劇場で『ジアース アート ネオライン 神聖創造物』~その老人は 誰よりも 若かった~を上演し、話題を呼び、Vol.2 では 全労済スペース・ゼロにて『牙狼神ノ牙-覚醒-』を上演。牙狼〈GARO〉の初舞台化を手掛ける。2019 年 1 月 5 日~14 日に銀河劇場にて神ノ牙-JINGA- 転生においてドラマと舞台をリンクさせ、さらに日本初のフュージョニカルスクリーンを使用した演出で話題を集めるなど、今後目を離すことができない新進気鋭 の注目団体である。新しいエンターテイメントを生み出す舞台プロデュースユニット。

<出演>
正木郁、伊藤萌々香 / 遊馬晃祐、高崎俊吾、丹羽絵理香、磯原杏華、doNcHY..、LILY、ヤバイ仮面、南誉士広、佐藤一真、佐藤大介 / 五代新一、桜樹舞都、淡海優、酒井颯斗、手塚早愛、RYU 龍 / EGA、橋本有一郎 / ヨッシ、SHUTO / 川島大樹、ビーナス・アンジェリック(映像出演)/ 岩田有弘、和泉宗兵 / 戸谷公人、井上正大
【公演概要】
銀岩塩VOL.4 FUSIONICAL STAGE 「ABSO-METAL」〜価値×時間=幸せのメダル〜
2019年9月4日〜9月8日 こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ
脚本:塩田泰造
演出:井上正大
美術・照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN)
映像:ヨリコジュン
主催:銀岩塩
公式HP:http://www.ginganen.com/vol4/
文:増當竜也