あの国民的漫画、そしてアニメも放映開始から50年!舞台『サザエさん』が初日を迎えた。ちなみに日本初(世界初)の2.5次元舞台は「サザエさん」、当時映画でサザエさん役を演じて話題になった江利チエミ主演、これが1966年のこと。アニメ化は1969年、舞台化の方が早かったのである。
始まる前は舞台上のスクリーンに「サザエさん」の文字が。そして歌が!「私のサザエさん♪」、中央からサザエさん(藤原紀香)が「サザエでございまーーーーす!」と登場し、ここで大きな拍手。このフレーズがないと!
そして現在の磯野家を説明、10年後なので、カツオ(荒牧慶彦)はバイトに明け暮れる大学生、ワカメ(秋元真夏)は専門学校に通い、タラちゃん(大平峻也)は中学生だ。波平は退職し、家にいる。マスオは会社で出世して帰りが遅い。三幕構成だが、内容は連なっており、磯野家の『騒動』が描かれている。この3本は「10年後のサザエさん」「タマがいなくなった」「磯野家の団欒」(もちろん、「さーて、今回のサザエさんは?」と紹介してくれる)。この1幕では10年後の磯野家の状況や問題が提示され、そこから2幕、3幕は「どうなる?」な展開。
波平の誕生日、最近食事もバラバラ、「こんな時こそみんなで食卓を囲みましょう」ということになったが・・・・・・おやおや?マスオは仕事・・・・・カツオはバイト・・・・・あらまな展開。ここから家族の思いや考えが見えてくる。
アニメでお約束の曲やあのエンディング、じゃんけんも再現、こういったところは文句なく「キター!!!」と思える。アニメのイメージが強い「サザエさん」、声優交代もニュースになるほど関心が高いが、ここまで日本国民が知ってるコンテンツはそうないであろう(最近、マスオ役の増岡弘が引退)。磯野家の不穏(?!)な動き、波平が・・・・花沢不動産に・・・・・。もしや????と思う家族たち。おしゃべりのカツオの同級生の花沢さん(成田沙織)が波平がきたことをわざわざカツオに知らせたりするが、憶測であれやこれやと心配し右往左往する磯野家の人々、これが面白おかしく、そして愛おしい。
サザエ、マスオ、波平、フネ、これが期待を裏切らないキャラクター、舞台ならではの構築で単純に『再現度高い』というものではなく、役者の個性にあった役創り。また、脇を彩る、登場回数は少ないものの、花沢さん、穴子(野衣健吾)、中島くん(宇乃徹)がすごい!三河屋さん(山口森広)が・・・・お人好しでいい人!アニメが脳内で再生される!花沢さんの髪型が10年後も変わらないのは新しい発見(笑)。そして・・・・・波平の先祖が映像で枕元に現れたり、これを松平健が演じているのだが、ここは抱腹絶倒な場面、磯野家はお侍の家のようでしかも相当な甘党の様子(笑)。タマ(酒井敏也)は・・・・・・そう思ってたのか!という新たな発見も!
昨今、ありがちな話題(バイトの人手が足りない、残業続き、受験が近いなど)を散りばめ、しかもあの磯野家がブレない!盆の上に磯野家を『設置』、舞台の上手と下手は磯野家の外で起こった出来事を描き、視覚的にわかりやすい。明治座の花道も有効に使う。最後の最後のオチが・・・・・なんともハートフル。タマも無事に家に戻り、原作やアニメで見聞きしている「なんだ、もう、心配させちゃって」的なしかし、それがたまらなく優しい。サザエは「みんな、家族だから支え合って生きていこうよ」と言い「私っておっちょこちょいであわてんぼう」「たくさん話せばいいのよ」という。
最後の最後で・・・・・おたまを持って走るサザエさん!これでなくっちゃ的な終わり方、笑って、笑って、ほろりとして最後にまた笑う。まさに「笑う門には福来る」な舞台であった。
<配役>
サザエ:藤原紀香
マスオ:葛山信吾
カツオ:荒牧慶彦
ワカメ:秋元真夏(乃木坂46)/齊藤京子(日向坂46)※Wキャスト
タラオ:大平峻也
フネ:高橋惠子
波平:松平 健
タマ:酒井敏也
【公演概要】
公演名:明治座9月舞台「サザエさん」
東京公演 9月3日(火)~17日(火)明治座
福岡公演 9月28日(土)~10月13日(日)博多座
原作:長谷川町子
脚本・演出:田村孝裕
出演:藤原紀香 葛山信吾
荒牧慶彦 秋元真夏(乃木坂46)/齊藤京子(日向坂46)<Wキャスト> 大平峻也
高橋惠子 松平 健
主催:フジテレビジョン・明治座
公式サイト:https://www.meijiza.co.jp/info/2019/0903/
(C)長谷川町子美術館