こまつ座第129回公演『日の浦姫物語』禁忌の愛にゆれる、日の浦姫の半生!「多様性に逆らって世の中を作っていくこと自体が世の中の活力を弱めているんじゃないかと」(鵜山仁)

―禁忌の愛にゆれる、日の浦姫の半生!平安一大絵巻物語―

日の浦姫物語(ひのうらひめものがたり)は、井上ひさし作の戯曲。1978年に、杉村春子主演で文学座公演として、東横劇場、国立劇場大劇場で上演。また、同年6月から10月まで地方巡演。それから34年の歳月を経て、2012年11月10日から、こまつ座とホリプロによりBunkamuraシアターコクーンなどで主演に大竹しのぶ、藤原竜也、演出に蜷川幸雄という布陣で上演された。
双子間の近親相姦と、双子から産まれた子供を取り巻く事情を描いた作品であり、井上ひさし独自のユーモアに基づいた語り口でストーリーは進行していく。
もともとは杉村春子への当て書きで書き下ろした初期戯曲『日の浦姫物語』、これをこまつ座で初上演、演出には近年ますます円熟味の増す鵜山仁。日の浦姫の少女時代から老境までを演じるのは、『國語元年』(’15)、『私はだれでしょう』(’17)での好演が光る朝海ひかる。宿命の愛に翻弄される稲若と魚名の二役に、同じく『私はだれでしょう』で’17年前半期の読売演劇大賞優秀男優賞候補に名前を連ねた平埜生成。そしてベテランの辻萬長、毬谷友子がストーリーテラーである説教聖夫婦を演じる。
初日に先駆けて舞台のほんのさわりの部分が取材陣に披露された。披露されたのは序段(説教聖の前口上)、2段目(死から生まれた子供たち)、3段目(小島の堂守)。順番通りではなかったものの、踊り、歌もあり、また井上ひさしが描く独特の世界観と言葉、そして趣のあるセット、時には映像を用いたり。賑やかなシーンは楽しく歌い踊る。

 

そして初日に先駆けて会見も執り行われた。登壇したのは朝海ひかる、平埜生成、鵜山仁。
「一言でいうと近親相姦の話です。劣性の遺伝子を受け継ぐ、そういう意味ではいろんなリスクがあると言われています。問題はそこではなく、愛し合っている兄弟、そこから生まれた子供、いろんな不都合を世の中から抹殺するために大人たちが忖度を働く、そのことによって排除されていく、弱いものいじめ・・・・結局、そういういろんな生き方を排除していく、多様性に逆らって世の中を作っていくこと自体が世の中の活力を弱めているんじゃないかと。もちろん、そういう井上作品ですし・・・・・・・実はそういう深淵なテーマを秘めた作品で、それだけに広がりがあるというか、王朝絵巻と銘打ってこういう大変な扮装をみなさんにしていただいてヒーヒー言いながら稽古をやっていただいております(笑)、でも、それだけのものはお見せできると思います。身内の宣伝になってしまいますが、文学座の面々もたくさん参加しております(笑)こまつ座と文学座の近親相姦な関係も見ていただけたら(笑)」(鵜山仁)

 

「井上さんの作品に参加できること自体、幸せですが・・・・・セリフとの戦い、鵜山さんのリクエストとの戦い・・・・初日頑張ってきた成果をお客様に楽しんでいただけたら」(朝海ひかる)

 

「今回で井上作品は2回目です。鵜山さんの演出で難易度の高い要求で・・・・・でも難しいことはありがたいこと。日々の稽古、朝海ひかるさんと一緒に愛を育んでおりますが、なんか夢に出てくるんですよ、朝海さんが!夢を見るくらいこの作品に入っていってる、これも鵜山さんの演出?文学座さんのみなさんにかこまれて、全員野球のような、熱い作品になっていますので、すごく・・・・深いテーマもあり、笑って見られる作品になっていると思いますので、たくさんきていただけると!」(平埜生成)

井上作品について鵜山仁は「おっしゃることは世の中が具合が悪いので舞台の上だけでもこういういい人たちがいないと、とおっしゃってたので・・・・結局、やらなきゃいけないことはいいやつ、悪いやつが問題ではなく、世の中の矛盾みたいなものをどうやったら、もう一つ先、よりよく生きるという方向にふり向けるのか、そういうことをやっていけばいいんだっていうことを教わってきたような気がします。素直に受け入れられなかったひねくれた自分がいるのですが、ここんところ、しみじみ感じて、生きる力にふり向けるっていうか、せめて舞台の上からでも・・・・生かし合うっていう、メッセージを発することができないかっていうのを憚りながら託されているような気がします。井上作品の大きさ、その深さを噛み締めています。この作品にこれが、『がしゃ!』と詰まっている作品なので・・・・・なくなって10年、いよいよ深みにはまっていく気分です」としみじみ。

朝海ひかるは「見させていただくときはいろいろな感情を・・・・・自分でも気がつかなかった感情などを気づかせてくれる作品だなと思います。やる側としてはセリフをしゃべることの難しさ、改めて感じます。とても綺麗な日本語で他のお芝居では、なかなかないこと。この世界にどっぷり入って独特の言葉、今、使われない言葉、新鮮な形で蘇ってきます。こういうところが魅力的で大好きです」とコメント。
平埜生成は「たかお鷹さんとお話させていただいて、『多分、チェーホフとか好きなんだよ』とか話していて井上さんはチェーホフのような視点、そういうものを持っていらっしゃる方なのかな?と。お会いしたことはないですが、そんな風に感じていて、人の笑いは悪意から生まれるのではないかという風に思うんですが、そういうものが今回の作品には多くあるようで、なぜ人は笑ってしまうのか、こういう愛になぜ笑ってしまうのか、そういうことを考えると井上ひさしさんは、天才なんだなと感じます。鵜山さんの演出も天才なんだなと感じました」とコメント。二人について鵜山仁は「救われるっていうか、風通しがいい」と語る。朝海ひかるの魅力について聞かれた平埜生成は「夢に出てくるので・・・・・魅力というかもはや好きなので(笑)・・・・顔、声、スタイル、お芝居・・・・・完璧なパートナーをこの舞台で見つけることができました」とコメントし、朝海ひかるは「私にないものを全部持っている!不思議な感性に救われて毎日、お芝居をしています。顔を合わせるたびに『綺麗な顔だな』と・・・・・稲若にぴったり。舞台に出るといつもすごいなと思っています」と笑顔で。
和気藹々とした雰囲気で会見は終了した。

【公演概要】
<東京公演>
日程・場所:2019年9月6日〜23日 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
スペシャルトークショー:
9月9日13時公演後 鵜山仁
9月13日13時公演後 朝海ひかる、平埜生成
9月19日13時公演後 辻萬長、毬谷友子、たかお鷹
9月22日13時公演後 鵜山仁、朝海ひかる、平埜生成
<山形公演>
2019年9月28日 川西フレンドリープラザ・劇場
作:井上ひさし
演出:鵜山仁
出演:朝海ひかる、平埜生成、毬谷友子、辻萬長 他