『アルスラーン戦記』は、田中芳樹による日本の大河ファンタジー小説で、中世の中東に似た異世界が物語の舞台。戦乱の中での王太子アルスラーンと仲間達の活躍を描く。
物語はルシタニア王国に征服されたパルス王国をパルスの王太子であるアルスラーンたちが奪還するまでを描いた第一部と、ミスルやチュルクといった隣国やかつてパルスを震撼させた蛇王ザッハークとその眷属たちとの戦いを描いた第二部で構成。
栄華を極めた国家、パルス王国。主人公で「あるアルスラーン王子は心優しいが、父の国王アンドラゴラス三世からは疎まれ、美貌の母・王妃タハミーネからは無関心に扱われつつも、臣下たちからは親交を持ち得ていた。
14歳になったアルスラーンは、侵攻してきたルシタニアとの戦争で初陣に臨むが、不可解な霧の発生やパルス万騎長カーラーンの裏切りに遭って総崩れし、多くの万騎長が戦死。九死に一生を得たアルスラーンは最強の武将ダリューンと共に落ち延びる。
劇場アニメは1991年に制作されており、テレビアニメは2015年。基本的に2Dでの作画だが、戦争シーンの兵士モブや武器は3DCGによるトゥーンレンダリング描写を用いており、アニメの音楽は「レッドクリフ」「魔女の宅急便」を手がけた岩代太郎。
舞台版はミュージカル仕立て、出だしはアルスラーン(木津つばさ)初陣から。しょっぱなから戦いのシーン、風の音、大きな旗が・・・・・そこには「突撃」と書かれている。「ヤシャスィーン!」、ファンならテンションの上がる言葉、ペルシャ語で「突撃開始」という意味だそうで、この物語もイランの英雄叙事詩をモチーフだそう。
こんなところを知っていると物語は俄然、面白くなる。そしてギーヴ(山田ジェームス武)が見た目が琵琶のような楽器を弾きながら歌い、布には地図が映し出される。この物語をベースになる、勢力争いをしている国々が描かれている。彼が持っている楽器はウード、。中東から(アラビア、イラクなど)北アフリカのモロッコにかけてのアラブ音楽文化圏で使われている楽器で琵琶とは近縁な楽器である。彼は物語の主要人物ではあるものの、ここではちょっと引いた立場の狂言回し的なポジションも担う。こういったところは舞台ならでは。兵士たちのコーラス、そして無敗を誇ったパルス王国であったが、カーラーンの裏切りにあい、国王は捉えられ、アルスラーンはダリューン(加藤将)と命からがら落ち延びた。
物語は原作通りに進行、アニメではセリフだったところが歌になっていたり、ここはクリエイター陣の工夫が見られる。ナルサス(斉藤秀翼)やエラム(熊谷魁人)との出会い、そしてアルスラーンはこういった信頼のおける仲間(部下)たちと出会い、次第にたくましくなっていく。そして、心からこの仲間たちとパルス王国の奪還を願うようになっていく。
アルスラーンと仲間たちの人間関係、そして戦いに明け暮れ、騙し、出し抜く、カーラーンの裏切りは、まさに『出し抜いた』といえよう。兵隊達は「戦争はいつまで続くのか」と歌う。生と死の隣り合わせにいる兵士たちもまた、激しく疲弊しているのであった。
カーラーンは謎の仮面をつけた男・ヒルメス(伊万里有)の側についた。このヒルメスもまた、パルス王国の『奪還』を目指していた、しかも並々ならぬ執着心を持って。彼には大いなる秘密があり、カーラーンはそれを知っており、また、ナルサスもまた、銀の仮面の男・ヒルメスが何者かを知っていた。しかし、アルスラーンは知らない、そしてなぜ、彼が自分を憎み、殺そうとするのかが理解できなかった。純粋で疑うことを知らなかった14歳の少年にしては過酷な運命の連続、それを仲間たちが支えるのである。また、「奴隷制度」について疑問を持っていたアルスラーンは、執拗なルシタニア軍からの追撃から逃れ、カシャーン城塞に到着する。奴隷制度の存続を望む城主ボディールの反逆にあったが、ボディールを討ち倒して奴隷を解放するものの、奴隷達からは「主人殺し」と責め立てられてしまう。アルスラーンは、皆、同じ人間だから人間が他の人間を奴隷として扱うことを彼の中ではよしとしなかったが、実際に奴隷を解放してみたら、奴隷達に追われてしまい、奴隷制度の難しさを身を以て体験する。奴隷たちにしてみれば、主人たちに仕えていれば、ある意味『安全』であった。ところがいきなり『自由』と言われても、その『自由』がなんたるかがわからない。現代には奴隷制度はさすがに存在しないが、『自由』とは何かを考えさせる場面だ。
歌、アクション、芝居、壮大な物語ゆえに演じる側もかなりの苦労があったと思うが、大阪公演を経て、殺陣もダイナミックにこなし、しかも武器のイメージが中世の中近東、長い鎗や重そうな刀での大立ち回りは迫力満点。またハードなシーンばかりではなく、ナルサスが芸術を語る場面はちょっとコミカルな味付けで歌もなかなか楽しいし、またナルサスとアルフリード(岩戸千晴)も原作通り、ちょっと可愛らしい感じに仕上がっていた。
そしてラスト近く、ついに銀の仮面の男の正体がわかってくる。万騎長バフマン(佐久間祐人)が「その方を殺せばパルス王家の正当な血は絶えてしまう」と叫び、ダリューンらの剣のさえが鈍った隙をついてヒルメスは危機一髪!包囲網を脱出する。その言葉にアルスラーンも動揺する、自分はいったい何者なのか、と。この物語の面白さは”高貴な人間がある事情で国を追われ、仲間を集めて国を取り戻しにいく”話に止まらないところ。
ポジション的にはヒール役であるヒルメスもまた、実は高貴な人物、しかも陰謀によって国を追われた身である。対立する二人の『王子』、図らずもどちらもある意味『同じ』であり、しかも敵対関係にある。そのあとはいったいどうなっていくのか、原作を知っていても知らなくても、続きがみたいと思うのは人情だ。ラスト近く、アルスラーンは叫ぶ「パルスの全てを取り戻す!」と。ここからアルスラーンの真の冒険物語が始まるのである。なお、早くもBlu-ray&DVD発売決定!2020年2月28日発売!バックステージ映像や日替わりアフタートーク映像、千秋楽カーテンコール等、盛りだくさん!
ゲネプロ前に会見が執り行われた。
「大阪公演を経て、さらに全役者陣が団結し、より熱量の高いミュージカルをおみせできると思うので、是非劇場で観てほしいと思います」アルスラーン役:木津つばさ
「大阪公演で培ったものを東京公演で!」ダリューン役:加藤将
「大阪公演で確実にいいものになってきたと思います。さらに!爆発的によくなっていきますように」ナルサス役:斉藤秀翼
「大阪公演、いい楽日だったので、東京では引き続き頑張っていきたい」エラム役:熊谷魁人
「どんどんよくなっていくのを感じました。東京公演も一つ一つ、大事にしながら!」ギーヴ役:山田ジェームス武
「熱く、丁寧に!」ファランギース役:立道梨緒奈
「東京でも怪我なく!」アルフリード役:岩戸千晴
「大阪公演も無事に終わりまして、東京公演、俳優っていうのは瞬間を生きる職業だと思います。1ステージ、1ステージ、違うものだと思っています」キシュワード役:村田洋二郎
「大阪でやったこととはまた違うことを見せられたらと思います」カーラーン役:内堀克利
「東京公演では頑張りたいと」ザンデ役:滝川広大
「壮大かつ雄大な作品です。頑張りたいと思います」バフマン役:佐久間祐人
「東京も頑張りたいと思います。みんなで力を合わせて頑張りたい」ヒルメス役:伊万里有
役創りで難しいところは?と聞かれて木津つばさは「アルスラーンという役はもともとの年齢は14歳。僕は21ですが、14歳の頃の記憶をたどって・・・・こんな人間じゃなかったなと・・・・・原作である小説やコミックス、アニメのアルスラーンを観て勉強しつつも、ミュージカルならではの自分にしか演じることのできないアルスラーンをつくりあげられるように意識しました」、ヒルメス役の伊万里有は「ヒール役とは思っていなくて・・・・・役づくりにあたって、ヒルメスはヒルメスなりの正義があって戦っているというところを特に意識しました。また強さだけではなく、人間らしい部分や弱さをもっているキャラクターなので、そういった部分を演じるのは難しかったです」とコメント。
また、殺陣稽古を含めた稽古中の様子はどうだったかという質問に対して、ナルサス役の斉藤秀翼は「今回は殺陣が得意な役者や、歌が得意な役者などそれぞれ得意な分野が違う人たちが集っている環境だったので、とても勉強になる刺激的な空間でした。」と答え、エラム役の熊谷魁人は「それぞれが自分の演じるキャラクターの個性や仕草・表情を意識して稽古を行っていたという印象が強いです。観劇いただく際は一人一人の細かい仕草や表情の演技にも注目してほしいです。」と語りました。
そして、大阪公演の楽屋の様子はどうだったかという質問には、ダリューン役の加藤将が「楽屋は男と女で分かれていたのですが…」と答え、それに対しキャスト一同が「当たり前だよ!」とつっこみ、カンパニーの仲の良さが伺える中、加藤はギーヴ役の山田(ジェームス武)が大阪でたこ焼きを買ってきてくれ、キャスト陣で仲良く食べたことが印象深いと笑顔で語り、囲み取材中も終始和気あいあいとした雰囲気が伺えました。
続いて、歌についての質問に、ギーヴ役の山田ジェームス武が「僕は歌が苦手だったので、最初歌稽古が地獄でした(笑)でも稽古をしながら、ギーヴの詩は歌で表現するとこんな表現ができるんだ!と色々な発見があってとても新鮮でした。どのキャラクターもミュージカルだからこそ表現できる部分が沢山あるので是非注目してもらいたいです。」と熱く語りました。
そして最後に、ゲネプロ公演を観た原作者の田中芳樹先生からは「キャストの皆さまの熱気も伝わってきて、とても贅沢な時間を過ごさせていただきました。荒川弘先生の絵がそのまま舞台で躍動しているようで、幸せな気持ちになれました。キャスト、スタッフの皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。」とミュージカルへの感想が届いた。
<ミュージカル「アルスラーン戦記」概要>
■舞台タイトル
ミュージカル「アルスラーン戦記」
■日 程
大阪:2019年9月5日(木)~9月8日(日) 全6公演
東京:2019年9月11日(水)~9月16日(月・祝)全9公演
※公演回数・日時は変更の可能性があります
■劇場
大阪:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
東京:THEATRE1010
■チケット
一般席8,800円(税込/全席指定)
※未就学児の入場は不可となります
来場者特典:荒川弘先生 描きおろし複製ミニ色紙
チケット絶賛発売中!
■漫画
荒川弘(講談社「別冊少年マガジン」連載)
■原作
田中芳樹(光文社カッパ・ノベルス刊)
■演出/脚本
伊勢直弘
■作詞
うえのけいこ
■音楽
石塚玲依
■出演者
【アルスラーン】木津つばさ
【ダリューン】加藤将
【ナルサス】斉藤秀翼
【エラム】熊谷魁人
【ギーヴ】山田ジェームス武
【ファランギース】立道梨緒奈
【アルフリード】岩戸千晴
【キシュワード】村田洋二郎
【カーラーン】内堀克利
【ザンデ】滝川広大
【バフマン】佐久間祐人
【ヒルメス】伊万里有
【アンサンブル】平山トオル 菅原健志 甲斐祐次 白崎誠也 杉浦勇一 松村凌太郎 SOH 佐織迅 門田 奈菜 山﨑 紫生
※出演者は変更になる可能性がございます。
■スタッフ
美術:乘峯雅寛 舞台監督:清水スミカ 照明:田中徹 音響効果:天野高志(RESON) 衣裳:瓢子ちあき ヘアメイク:新妻佑子 特殊造形:林屋陽二 アクション指導:六本木康弘 振付:當間里美 歌唱指導:うえのけいこ 宣伝美術:五島英一 演出補佐:菊地創 演出助手:三国由佳(SPM)制作:Office ENDLESS
■主 催:エイベックス・ピクチャーズ株式会社
(C)荒川弘・田中芳樹・講談社/エイベックスピクチャーズ
■オフィシャルHP https://arslan-stage.jp
■公式Twitter @arslan_stage
<ミュージカル「アルスラーン戦記」Blu-ray&DVD情報>
ミュージカル「アルスラーン戦記」Blu-ray&DVDが早くも発売決定!
Amazon店舗特典は原作コミックスを手掛ける「荒川弘先生描き下ろしイラストカード」!
発売日:2020年2月28日(金)
価格:Blu-ray 9,100円+税/DVD 8,100円+税
【DISC1】本編(東京公演)
【DISC2】特典映像
全景映像、バックステージ映像、日替わりアフタートーク映像、千秋楽カーテンコール映像
【CD】劇中曲収録
※商品仕様・内容・デザインは予告なく変更になる場合がございます。
★店舗別特典★
Amazon:荒川弘先生描き下ろしイラストカード
アニメイト:ブロマイド3枚セットA(アルスラーン&ダリューン&ナルサス)
アニミュゥモ(エイベックス公式通販サイト):ブロマイド3枚セットB(アルスラーン&ダリューン&ナルサス)
※特典内容は変更になる場合がございます