舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These ~第三章 嵐の前~」誰のために, なんのために戦うのか, 陰謀, 欲望, 信念, 人々の生き様が宇宙で渦巻く。。

人気コンテンツ『銀河英雄伝説』の舞台化、新しいキャストになって三回目を迎える。今回のタイトルは舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These ~第三章 嵐の前~」。まずは第1章と第2章の”おさらい”から始まる。前回はヤンが帝国軍のイゼルローン要塞を無血占領したところまでであった。

今回は、その先の物語となっている。ヤンはイゼルローン要塞を無血占領すれば戦争は集結すると考えていたが、実際は自由惑星同盟の社会的システムは疲弊していた。しかもこの勝利で束の間の平和を求めたヤンの思惑とは逆に、帝国領に大群で侵攻という愚挙に出た。それは次の選挙のため勝利を求める声がより大きかったがため。「アムリッツァ星域会戦」ヤン率いる第十三艦隊も、敵に対応するのが精一杯の状況だった。同盟軍の歴史的大敗、それでもラインハルトは満足していなかった。そんな折に銀河帝国皇帝フリードリヒⅣ世が崩御する・・・・・・。

戦いにつぐ戦い、サブタイトルは『嵐の前』、この下りもかなりの”嵐”であるが、ストーリー的には今回は次につながる重要な部分。そして、テーマ的には”なんのために戦うのか”、ということ。そして両国にはびこる病巣、同盟政府は腐敗、権力者は常に安全な場所にいて戦争を賛美する。軍人であるヤンは戦うことに常に矛盾を感じている。一方の銀河帝国は急速に力をつけてきたラインハルトを面白くないと思っている門閥貴族、侮蔑的に『金髪の小僧』『下賎な輩』と罵る。ラインハルトは国務尚書(大臣)リヒテンラーデ候と組み、皇帝の孫、エルウィン・ヨーゼフを皇位に就けた。蚊帳の外に置かれた帝国最大の門閥貴族、ブラウンシュバイク公は、ラインハルトらに反感をもつ貴族たちを糾合し、「リプシュタット盟約」を結んだ。銀河帝国を二分する大規模な内乱が起こる。ラインハルトは、自由惑星同盟軍が、銀河帝国の内乱状態に乗じて攻め込んでくることを危惧し、ひとつの布石を打つ。それは自由惑星同盟軍内部の不平分子を扇動し、政府に対しクーデターを起こさせるという大胆なもの。しかし、ヤンはそれを察知し、最前線にいる身の上ながらも懸命に対応するが・・・・・。

ラインハルトは貧しい貴族の出身、武勲を重ね、昇進する。地位が上がると、いつまでも下級貴族ではふさわしくないので、階級的にもさらに上をいく。両国で、それぞれの企み、陰謀、思惑、欲望が幾重にも重なり合う。それがシンフォニーのごとくに観客に迫ってくる。ラスト近く、「スタジアムの虐殺」事件が起こる。そこでジェシカが無残な方法で殺されてしまう。彼女は婚約者を戦争で失っている(第1章で描かれている)。それがきっかけで反戦団体「反戦市民連合」に身を投じていたのであった。

 

映像演出、そして照明で宇宙での戦いをビジュアル的に見せる。ナレーションの声が!下山吉光!アニメファンならこの声はテンションが上がるポイント。そしてスパルタニアンでの出撃シーン、しょっぱなから見所。このシリーズの演出の見所はハイテクな映像、照明とアナログな表現のコラボレーション、壮大な宇宙の物語、今だからこそできる表現。また、場面的には捕虜交換式典、ここでヤンとキルヒアイスが出会う。そしてキルヒアイスはユリアンに激励の言葉をかける。敵同士であるが、お互いを尊敬しあっているのがよくわかるシーン、前シリーズでも宝塚版でも描かれていたが、この場面は本当に一時の清涼剤のような場面。

演出的にはアニメ版の良さを取り入れ、客席通路も使い、臨場感を出す。演出は「銀河英雄伝説」の熱烈ファンでもある大岩美智子、作品愛を感じる。キャストは新シリーズになって全体的に若返っている分、若さゆえの勢いと思い切りの良さも感じる。そして初参加のキャストも作品によく馴染み、あの世界観が舞台上に出現する。
そして”嵐の前”、これは本当に、作品の大きな山場の直前の物語。「銀河の歴史が、また1ページ」。

 

公演に先駆けて挨拶。登壇したのは、永田聖一朗/加藤将/畠山遼 釣本南/君島光輝/藤原祐規
小早川俊輔/米原幸佑 伊勢大貴 小西成弥 碕理人 汐月しゅう/大高雄一郎 福永マリカ。

まずは自由惑星同盟軍から。

「第1章と第2章では同盟国軍と帝国軍の攻防と内部情勢を描いていましたが、第3章はヤンとラインハルトの直接対決が激しくなって展開されていくところ、その影響がどう影響するのか、激動の始まりを感じさせる物語です」(小早川俊輔)

「ちょうど1年前の10月に初演、今回で3作目、今回からのメンバー、前回からのメンバー、いろんな力が集結して、この回を迎えることができました。個人的には1、2は派手なシーンがたくさんあるので、でも今回が一番派手ではないかな?と思っています」(米原幸佑)

「アッテンボローとして参加できるのがすごく嬉しいです。過去最大の人数で稽古場も大変でしたがみんなで力を合わせてこの世界観を作っていきたいです」(伊勢大貴)

「1章、2章とやってきまして、ずっと私服でしたが、今回から制服を!!着られるので嬉しく思っています。しっかりとユリアンを演じられたら!」(小西成弥)

「1章ではヤンの友人で・・・・・今回、ポプラン役で戻ってきました。新鮮な気持ちで、全力で楽しみながら演じることができたら」(碕理人)

「軍人たちの戦いがメインではありますが、その後ろにいる民間人たちの姿や信念を描く役割が自分にはあります」(汐月しゅう)

「第2章に引き続き、参加できることを嬉しく思います。戦闘シーンばかりではなく、暮らしている人の日常とか、そういう何気ないところも描かれているので、そういうところを楽しみにしていただけたら」(大高雄一郎)

「ここに立っていないメンバーの活躍が!いろんな人生が描かれています」(福永マリカ)

 

お次は銀河帝国軍

「サブタイトルが”嵐の前”、次につながるための作品。皇帝が崩御して実権を握っていくところの話です。追加キャストも加わり、さらにさらに!パワーアップ、迫力のある、見応えのあるシーンが多いです。原作を知っている方はまた一読してみていただけたら」(永田聖一朗)

「やってまいりましたよ!!!!!前回は艦隊が出てきて!それで!今回は頭からですよ!ど迫力!同盟軍と帝国軍がバッチバチに戦うわけです!キルヒアイスはラインハルト様と、どうなっていくのか。目が一つじゃ足りないです!いろんな人生を描いています」(加藤将)

「今回は艦隊戦、やっと艦隊に乗れます!今までの中で見所が一番多いです。『銀英伝』を愛している演出家、銀河の歴史を見届けていただければ」(畠山遼)

「新しいことにチャレンジしている作品です。僕らにしかできないことを!今日から千秋楽まで駆け抜けたいです(疾風ウォルフなだけに)。」(釣本南)

「初めて参加します。本当に嬉しくって。他にも初めての方がいらっしゃいます。物語がどう展開していくか楽しみです」(君島光輝)

「第2章から参加しています。ラインハルトのために暗躍します。艦隊戦から始まって激しい戦いを!エンタメ的にも楽しんでいただきたいです。見やすい舞台となっています」(藤原祐規)

【舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These ~第三章 嵐の前~」公演概要】
日程・会場:
<東京公演>
2019年10月24日(木)~27日(日) Zepp DiverCity TOKYO
<大阪公演>
2019年11月2日(土)・3日(日・祝) Zepp Namba

原作:田中芳樹「銀河英雄伝説」シリーズ(創元SF文庫)
脚本:米内山陽子
演出:大岩美智子
構成・監修:高木登

出演:
<銀河帝国>
ラインハルト・フォン・ローエングラム:永田聖一朗
ジークフリード・キルヒアイス:加藤将
オスカー・フォン・ロイエンタール:畠山遼
ウォルフガング・ミッターマイヤー:釣本南
ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ:君島光輝
パウル・フォン・オーベルシュタイン:藤原祐規
<自由惑星同盟>
ヤン・ウェンリー:小早川俊輔
アレックス・キャゼルヌ:米原幸佑
ダスティ・アッテンボロー:伊勢大貴
ユリアン・ミンツ:小西成弥
オリビエ・ポプラン:碕理人
ジェシカ・エドワーズ:汐月しゅう
ワルター・フォン・シェーンコップ:大高雄一郎
フレデリカ・グリーンヒル:福永マリカ
平川和宏、稲田恵司、海部剛史、川上和之、有川マコト、内堀克利、堤匡孝、谷戸亮太、大力、中村哲人、すがおゆうじ、冨田佳孝

公式HP:https://www.gineiden.jp

(C)舞台「銀河英雄伝説」制作実行委員会

取材・文:Hiromi Koh