市川海老蔵第五回自主公演 ABKAI 2019~第一章 FINAL~『SANEMORI』人が人を思う気持ち、数奇な運命と絆と情と。

2019年11月5日~25日(月)まで Bunkamura シアターコクーン にて、市川海老蔵第五回自主公演 ABKAI 2019~第一章 FINAL~ 『SANEMORI』が上演される。 “現代のかぶき者”十一代目市川海老蔵が、近年積極的に取り組んでいる“伝統の継承” と“新時代の歌舞伎の創造”を融合させた舞台を目指し、2013年夏、初めて海老蔵自らが企画・製作を行った『ABKAI』も今回で五回目。
今回、十一代目市川海老蔵として最後の『ABKAI』に選んだ演目は、 以前より海老蔵が構想を温めていた「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)」より、「実盛物語」を主軸に『SANEMORI』と題し、新たな歌舞伎の舞台を創り上げる。

「実盛物語」は、登場人物となる斎藤実盛は歌舞伎において「生締(なまじめ)」とも呼ばれ、分別のある武将の典型的な役柄として描かれている。扇を用いて物語る場面がみどころで、平家に仕えながらも源氏に忠を尽くさんとする実盛の生き様や、ドラマ性があふれる時代物の名作と称されている。
また出演者には、高い身体能力と「滝沢歌舞伎」で培った確かなスキルで舞台を中心に活躍、人気急上昇中で先日 CD デビューを発表したジャニーズ Jr.のユニット Snow Manから宮舘涼太と阿部亮平が初参戦! さらに、歌舞伎界からは、市川右團次、中村児太郎らが出演、芝居に彩りを添える。

幕開きは源義仲(宮舘涼太)と手塚太郎光盛(阿部亮平)、宮舘涼太と阿部亮平、歌舞伎は初めての2人だが、幕開きという大役、舞台自体は慣れているのと、所作は稽古の成果もバッチリ。しょっぱなからの登場でやや緊張感も見え隠れしつつも、無事に大役を果たした。
プロローグから時間は遡る。源義仲と手塚太郎光盛はストーリーテラー的な立ち位置で説明するので、歌舞伎初心者でもわかりやすい。

最初の場面は「布引滝の場」そして都白川の義賢館の場へとつながる。ここの見所は、頼朝の亡霊と義賢の最期であろう。市川海老蔵が奮闘、ちなみに頼朝の亡霊は『SANEMORI』ならではの味付けで、こういったところは現代的なアレンジでファンタジックなテイストが全体の味付けになり、かつエンタメ性もぐっとアップする。また義賢(市川海老蔵)、派手な立ち回りのあと、切腹、小まん(中村児太郎)に白旗を託すところは涙な場面。そんな小まんは『白旗は渡しません!』の決意、追い詰められて琵琶湖に”ドボン”、ここの演出は布を使ってアナログ、しかし、小まんは沈み、運良く助けられるも・・・・・・斉藤実盛(市川海老蔵)の乗った船、彼は元は源氏方であったが、この時点では平家、そこで小まんがとった行動は・・・・・・展開を知っていても「ええ?そんなことしてまで!」、小まんの勇気ととっさの判断、白旗は・・・・・。

数奇な運命と意思のある行動、忠義、義理、人が人を思う気持ち、歌舞伎を難しく考えるとややこしくなるが、ヒューマンドラマとして捉えれば、意外なほどにシンプルだ。そして運命がめぐりめぐる展開、そして大詰へとストーリーは怒涛のごとくにまとまり、大きなうねりとなる。そして根底にあるのは、”人間”、ラストシーンは、美しい。実盛は一人の人間としてそこにいる、馬に乗って。世が世なら、こんな運命にならなかったのに、と思ったりする。

そもそも斉藤実盛は武士の鑑と言われている武将。史実でははじめは実盛は初め義朝に従っていたようだが、やがて地政学的な判断から義賢(市川海老蔵)の幕下に伺候するように。義朝の子・源義平は、久寿2年(1155年)に義賢を急襲してこれを討ち取る。そんなわけで実盛は再び義朝・義平父子下に戻るが、義賢に対する旧恩も忘れていなかった。義賢の遺児・駒王丸を預かり、駒王丸の乳母が妻である信濃国の中原兼遠のもとに送り届けたが、彼こそが後の旭将軍・木曾義仲。実盛は、義朝が平治の乱で敗れたあとは、平維盛の後見として源頼朝の追討に参加する。富士川の戦いで平家は大敗、そして多くの関東武士が源頼朝に追従していった中、忠実に平維盛に仕えていた。そして1183年、木曽義仲を討つために北陸に出陣し、そこで手塚光盛に討たれてしまう。こういった史実を押さえておけば、ストーリーはぐっと面白く感じる。

不穏な動きでは映像を使用、また雷は照明で。基本は歌舞伎であり、思い切り崩すとか、そういったことはしない。しかし、現代人に合わせたテンポ感と伝統的な所作、殺陣も、アレンジを施さず、歌舞伎の殺陣だ。“伝統の継承” と“新時代の歌舞伎の創造”とはよく言ったもので、本当に”歌舞伎”、現代の表現に過度に寄せずにあくまでも伝統的な歌舞伎。特に若い観客は通常の歌舞伎だとテンポや内容、構成に馴染みがなかったりするが、そこをわかりやすくする配慮。また、客席通路も頻繁に使用、ラストの大立ち回りは1階客席をほぼ全部使うので、迫力満点!通路側に座れば『没入感』満載だ。そして子役が!可愛い!海老蔵も思わず『素』になって目を細めるほどの破壊力!
伝統はきっちりと守り、そこから21世紀を見据えた内容、企画。現代は、心や人情、恩、相手を思いやる気持ち、絆などが希薄になっているところがある。実盛を軸とした、この物語はそこに焦点を当て、人間が持つ心の機微を強調する。現代人が忘れてしまっている心、プロローグと序幕は50分、休憩を挟んで2幕は70分、大詰は10分、と一つ一つが見やすい時間の長さ、こういったところにも企画する側の配慮が感じられるし、歌舞伎外からの出演者を交えての公演。来年は襲名披露が控えているので市川海老蔵としての自主公演は今年が最後になる。だからなのか、信念と心厚い実盛を選んだのか、そんなところにも企画の心意気を感じる。

【初日に向けてのコメント】
[市川海老蔵 コメント]
源平布引滝『実盛物語』が古典歌舞伎としてこれまで長く愛されてきた所以は、やはり物語の根底に流れる当時の日本人が持っていた信念や思いに多くの人が共感し感銘を受けてきたからではないかと思います。『SANEMORI』では、その伝統をより多くの人にお楽しみいただけるよう、私なりに企画・演出をさせていただきました。
ジャニーズJr. Snow Manからご出演の宮舘さん、阿部さんには、歌舞伎の所作事など非常に熱心にお稽古いただき、これから約1ヶ月間共に舞台を作り上げるのがとても楽しみです。
市川海老蔵としては最後の「ABKAI」となりますので、是非皆様にはこの機会に歌舞伎の魅力を劇場でお楽しみいただければと思います。

[宮舘涼太(Snow Man/ジャニーズJr.) ]
この度ABKAI2019に出させていただき、新たな世界に飛び込むことで人間として、また表現者として沢山学ばせてもらえる機会を頂けたことに感謝しております。海老蔵さんにはとても愛のあるご指導をいただいております。
自分自身で考え抜き微力ではありますが、より多くの方々に熱量を伝え、伝統文化の魅力の虜になって頂きたく精一杯努めて
いきたいです。
この身ある限り皆様に幸せや活力を届けていきます。
是非劇場で木曽義仲を演じる宮舘涼太の生き様をご覧ください。

[阿部亮平(Snow Man/ジャニーズJr.) ]
まずは今回、古典歌舞伎の舞台に立てること、光栄に思い、深く感謝しています。
私、阿部が演じます手塚太郎光盛は、本作の主人公である実盛に深い恩があります。源平の垣根を越えたその絆に、観る人は必ず感銘を受けるでしょう。
恩人・実盛への想いを、古典歌舞伎初挑戦である私達に沢山の愛のある指導と助言をしてくださっている市川海老蔵さんへの感謝と重ね合わせて、演じていく所存です。
また手塚太郎から、宮舘演じる木曽義仲への、友情に似た忠義にも注目していただけたらと思います。
歌舞伎の世界は実に奥深く、日本人が感じ得る魅力が沢山詰まっています。今回初めて歌舞伎を観られる方にも、歌舞伎を愛する方にも認めていただけるような役者を、私は目指します。
海老蔵さんをはじめ沢山の素敵な歌舞伎俳優の皆様に囲まれて舞台に立てること、誇りに思います。
この檜舞台で得られる大きな経験値が、役者としての阿部亮平を大きくするだけでなく、
来年CDデビューする私達のグループSnow Manにも還元することができると信じています。

<配役>
源義朝の霊/義朝の弟 先生義賢/斎藤別当実盛・・・・ 市川海老蔵
小まん/後白河帝/巴御前・・・・中村児太郎
女房小よし ・・・・ 中村梅花
源義仲・・・・ 宮舘涼太
手塚太郎光盛・・・・阿部亮平
義賢御台 葵御前 ・・・・大谷廣松
平清盛/今井四郎兼平・・・・市川九團次
多田蔵人行綱/瀬尾十郎兼氏/樋口次郎兼光・・・・市川右團次

<あらすじ>
平安末期の武将、斎藤実盛。敵方の遺児である駒王丸の殺害を命じられるも、
幼子を殺すに忍びなく、密かに逃がしたという。成長した駒王丸は木曽義仲と名乗り、
源氏軍を率いて源平の合戦に臨む。平家軍の実盛は、かつて命を救けた駒王丸木曽義仲の家来、
手塚光盛に討たれて最期を遂げた。
平家物語に残されたこのエピソードを基にした「源平布引滝・実盛物語」は、若かりし日の実盛が
駒王丸と光盛に出会い、将来、光盛に討たれることを予見させるというストーリー。

【公演概要】
公演名:市川海老蔵 第五回自主公演 ABKAI 2019~第一章 FINAL~『SANEMORI』
日程・場所:2019年11月5日(火)~25日(月) Bunkamura シアターコクーン
出演:市川海老蔵 / 中村児太郎、中村梅花 / 宮舘涼太(Snow Man / ジャニーズJr.)、阿部亮平(Snow Man / ジャニーズJr.) / 大谷廣松、市川九團次 / 市川右團次
HP:http://www.zen-a.co.jp/abkai2019/story/index.html