Ongakuza Musical「7dolls」、7つの人形たちと歌い踊る、「絶望」から「生」へ。

原作はポール・ギャリコ「七つの人形の恋物語」。ハリウッド映画「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者でも知られる作家だ。主人公は少女・ムーシュ(森彩香)、マレル・ギュイゼックという名だが、ムーシュ(蠅)と呼ばれている。幕開きは人形たちが「よろしく!」と幕から顔を出し、歌いだす。そして同じ格好をした俳優陣が歌う。おもちゃのピストルが「バン!」と鳴る。場面はストリップ劇場、セクシーな姿のダンサーが歌い踊る。この場末の劇場から追い出された少女・ムーシュ、これからどうしたらいいかわからない。途方にくれてセーヌ川に身投げしようとしたら・・・・・赤い髪の人形が!話しかけてきた!ムーシュはすっかり人形たちと仲良しになるが・・・・・。

これを見ていた人物、キャプテン・コック、彼は彼女を仲間に引き入れる。人形一座と一緒に過ごすムーシュ、彼女の中で何かが変わり始め、人形たちと心を通わせていく。人形たちと会話する孤独な少女、そして傷ついた男、キャプテン・コック(広田勇二)、人形使い。しかし、ムーシュが喋っている相手はあくまでも人形たち。彼らはムーシュに好意を寄せ、ムーシュもまた人形たちが大好き、それを操っているキャプテン・コックは、人間味を欠き、冷たい。しかし、人形を操っているのは彼なのだ。不思議な関係性、2幕冒頭では劇中劇「シラノ・ド・ベルジュラック」を上演、場所はヴァリエテ劇場。芝居は成功を収めるのであった。

歌が途切れない印象で、次々とミュージカルナンバーが出てくる。人形を俳優陣が演じることで、場面は生き生きとしてくるし、掛け合いも楽しい。ヒロインは個性的な7つの人形、黒人ゴーロ、そしてキャプテン・コックと流浪の旅を続ける。シンプルなセット、それを俳優陣が動かす、シニカルなセリフ、この2人の関係性、そして人形に話かけるという設定だが、人形はさしずめ精霊のよう。しかも人形を操っているのはコック。様々な解釈・見方ができるのだが、コックは『人形』を通して彼女とコミュニケーションをとっているのでは?という見方もある。人形は7体、つまり、この人形は7つのコックの『面』と考えることができる。そしてコックは実は悪人ではなく、不器用で心が傷ついた人物であることを観客は彼の表情や行動から読み取れる。

やってきたばかりの時は絶望の淵にいたムーシュ、そこから「生」へと向かう。ラストでムーシュは一座を離れることになるのだが、人形たちは彼女に様々なお餞別を渡す。そしてムーシュは前を向いて歩き始める。街に出て孤独な少女に声をかける。
影、闇、そこからの脱却、希望の光、寓話的、彼らの奇妙でファンタステックな生活をミュージカルナンバーで綴る。心に刺さるセリフ「30センチでもわたしの生きる場所がある」「もう一人じゃない 死よさらば」、ムーシュは自分の居場所がどこにもないと思っていたが、人形たちによって少しずつ、自分が存在することがおぼろげながらも意味のあることと理解していく。哲学的で詩的な作品、ミュージカル仕立てにしてエンターテイメント性をアップ、難しいことを考えずにムーシュと人形たちの楽しいやり取りだけを楽しんでもOK。久しぶりの上演作品、初演から進化し続けている。

<物語>
田舎町からやってきた、身寄りのない一人の少女。彼女にはマレル・ギュイゼックという名前があるのだが、周囲からはムーシュ(蝿)というあだ名で呼ばれ、蔑まれていた。都会に出てきたものの、器量が良いわけでもないムーシュは挫折続き。とうとう落ちぶれた場末のストリップ小屋からも追い出されてしまう。行くあてもなく、生きる気力を失って川に身投げしようとするムーシュだったが、そんな彼女に不意に赤い髪の人形が声をかける。続いて現れる、個性的で魅力あふれる人形たち。やがて彼女は死のうとしていたことも忘れ、人形たちとの会話に没頭していく。そんな様子を人形舞台の裏側でじっと見つめる男がいた。一座の座長のキャプテン・コックは、先ほどからムーシュの前に現れている7人の人形の遣い手。ムーシュに不思議な魅力を見出したコックは、彼女を一座の仲間に入れることにするのだが…。

【公演概要】
Ongakuza Musical「7dolls」
日程・会場:
<東京>
2019年11月7日(木)~10日(日)
草月ホール
<大阪>
2019年11月21日(木)
高槻現代劇場 大ホール
原作:ポール・ギャリコ「七つの人形の恋物語」
脚本・演出・振付:ワームホールプロジェクト
製作著作・主催:ヒューマンデザイン
音楽座公式HP:http://www.ongakuza-musical.com
文:Hiromi Koh