舞台『さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~』人が人を思い、絆を深める、本当に大切なものは手放してはいけない。

2019年4月から6月にかけてフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送され話題になったTVアニメ「さらざんまい」、「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」など他に類をみない独自の作風で知られる幾原邦彦監督の最新作、浅草を舞台に中学生の矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太が、謎のカッパ型生命体“ケッピ”にカッパに変身させられゾンビの尻子玉を奪うため奮闘するなかで、人間の“つながり”と“欲望”を描いた物語。
幾原監督ならではの斬新な映像表現と衝撃的なストーリー展開、一度聴いたら耳を離れないキャッチ―な劇中歌、中学生3人組はもちろん、ご当地アイドルのサラや謎の警官2人組・新星玲央と阿久津真武といったキャラクターたちが人気を博しました。アニメファンを中心に大きな話題となった本作が、その熱気冷めやらぬなか早くも舞台化。

「この世界にはみんな繋がっている世界、でもそのつながりは簡単に消えてしまう」という声。そして、河童の金の銅像が出てきて・・・・・え?まずいんじゃない?え?「なんじゃこりゃー」、それからオープニング、アニメの映像をたっぷりと使って、アニメ感が舞台いっぱいに広がる。

アニメファンなら、アニメから飛び出した、という印象を受けるであろう。そして本格的に物語が動き出す。学校のチャイムの音、この物語の主要人物である矢逆一稀(木津つばさ)、久慈悠(設楽銀河)、陣内燕太(野口準)の出会いと関係性がここでわかる。

久慈悠は転校生、矢逆一稀と陣内燕太は幼馴染だ。そして、この3人、ケッピ(一内侑)と出会うが、ケッピをカエルと間違えたことで彼の怒りを買ってしまい、なんと!強引に尻子玉を奪われてカッパに変身させられてしまう。さあ、大変!元に戻りたい!と思うのは当然のこと。「元の姿に戻りたければ“ある方法”でつながり、ゾンビの尻子玉を持ってこい」ということで・・・・・・が大体の流れだ。

 

そんなこんなで3人は大奮闘する。そして3人のバックボーンや思い、人間関係が見えてくる。ストーリーはアニメに沿った展開、矢逆一稀には交通事故で車椅子生活になった弟の矢逆春河(深澤大河)がいる。吾妻サラの大ファンで矢逆一稀は弟のためになりすました自撮りを弟に送っている。久慈悠には兄・久慈誓(横井翔二郎)がいるが、裏稼業で生計を立てており、しかも過去に起こった事件で組に追われている身、そんなわけで弟とは離れて暮らしている。陣内燕太はサッカー部にいた頃は矢逆一稀とはゴールデンコンビであった。しかも矢逆一稀に恋愛感情を抱いている。そして新星玲央(中村太郎)、阿久津真武(高本学)は交番の警官であるが、実は・・・・・な過去がある。


展開はテンポよく、そしてところどころに歌を挟み込んで進行していく。カッパになってしまった時の歌とダンスが!可愛く、かつコミカルで思わず見入ってしまう。ケッピの愛嬌のある存在感、そして基本はアナログであるが、アニメの映像によって”アニメ感”を目一杯出したことにより、作品の面白さも伝わってくる。3人3様なところはアニメと相似形であるが、舞台らしく役者の個性も見え隠れしており、キャスティングの良さを感じる。設定はファンタジックでコメディ要素たっぷりであるが、中身の芯になる部分は人間の本質的なところを捉えている。どんなことをしてでも手に入れたいという”欲望”、誰かだ誰かを思う”愛情”、欲望と愛情が交錯し、時には欲望が全面に出る瞬間もあり、そこが、実は見所。社会生活を送っていると『本当は〜したいのに』と思う場面は何度もあるのが普通なこと。

この物語に登場するキャラクターもそれは同じこと。ところが、ケッピの怒りをかってカッパにされたからこそ見えるものがある。「僕は大切なものを諦めない」というセリフがあるが、大切なものは人それぞれ、家族だったり、あるいは友達だったり、あるいは何かを成し遂げようとする夢だったりする。10人いれば10通りの「大切なもの」がある。そして人が人を想う気持ち、そして育んできた絆、友情、愛。笑って笑って、最後にちょっと泣ける。そしてケッピが!WOW!ノンストップの1幕もの。帰りに思わず、カッパ巻を!

ゲネプロの前に囲こみ会見が執り行われた。登壇したのは矢逆一稀:木津つばさ、久慈悠:設楽銀河、陣内燕太:野口準、新星玲央:中村太郎、阿久津真武:高本学。

木津つばさは「努力しながらやってきました。いろんなことを学び、これからも学んでいきます」と挨拶。設楽銀河は「一人一人が誰かのために舞台を!(「17歳になったばかりじゃん!」と木津つばさが隣で・・・・・)楽しい現場です」とコメント。設楽銀河は11月25日が誕生日!野口準は「原作の魅力が2時間に詰まっています。衝撃的な展開、不思議な展開があります。ぜひ観ていただいて・・・・・・作品をさらにいい形にできたら」とコメントした。中村太郎は「アニメ観て台本を読んで、どうなるのか・・・・・力のある作品に、思った以上の作品になりました」と笑顔。高本学は「稽古から一丸となってやれました。本番もみんなで発展させていくことができると。カンパニー一同、精一杯頑張ります」と元気よく。
そして見所については木津つばさは「アニメに忠実な部分もありますが、演劇的なところもあります」と語るが、アニメ映像を使用したシーンは、本当にアニメっぽく、またグラフィックな場面ではなかなかにアート。心情を表現するシーンでは過剰な演出にならずにストレートプレイのしっかりとしたシーンに。またキャラクターの関係性も要チェック。稽古場での話になり、木津つばさが「死ぬほど飯食いにいきました!」といい、他のキャストが大笑い。そんなこんなの会見で賑やかに終了した。

【公演概要】
◇公演タイトル:さらに「さらざんまい」〜愛と欲望のステージ〜
◇原作:イクニラッパー/シリコマンダーズ
◇スーパーバイザー:幾原邦彦
◇脚本・演出:伊勢直弘
◇出演:
矢逆一稀:木津つばさ 久慈悠:設楽銀河 陣内燕太:野口準/
新星玲央:中村太郎 阿久津真武:高本学/
矢逆春河:深澤大河 久慈誓:横井翔二郎 吾妻サラ:帝子 ケッピ:一内侑 ほか

◇東京公演
日程:2019年11月28日(木)~12月1日(日)
劇場:シアター1010
〒120-0034 東京都足立区千住3丁目92 千住ミルディスⅠ番館 11F

◇大阪公演
日程:2019年12月7日(土)~12月8日(日)
劇場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
〒540-0002 大阪市中央区大阪城3番6号

◇制作:OfficeENDLESS
◇主催:アニプレックス OfficeENDLESS ローソンチケット
公式HP:https://butai-sarazanmai.com/?from=lower
文:高 浩美
©イクニラッパー/シリコマンダーズ  ©舞台「さらざんまい」製作委員会