12月12日(木)よみうり大手町ホールにて、ストーリー・コンサート 『クララ 愛の物語』が上演される。本作は世界的に有名なドイツの2人の天才作曲家ロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームス、そして彼らを愛し支えたクララ・シューマンの物語。読売交響楽団のチェリスト・渡部玄一が生み出した本格的な演奏と朗読で構成した、今までにないスタイルの舞台。
渡部玄一が“ストーリー・コンサート”と名付け昨年長野県上田市においての初演では、大きな反響を呼び、待望の東京公演が実現。前作をさらにブラッシュアップし、クララ、シューマン、ブラームスの3役を朗読者2名で演じ分ける。
クララを演じるのは 元宝塚男役トップスターの水夏希。 退団後も 確かな表現力で ミュージカルをはじめ、様々な舞台で活躍している。 そしてシューマン、ブラームスの2役を演じるのは 数々のTV、舞台、そしてミュージシャンとしても精力的に活躍をみせている新納慎也。
音楽と愛に命を懸けた3人の壮大な半生をよりドラマチックに演じ、音楽と演劇が融合して編み出されるかつてない公演となる。
さらに2019年はクララ・シューマンが生まれて200年にあたり、その記念すべき年での上演。クララ・シューマンを演じる水夏希さんに演じるにあたって、また作品について語っていただいた。
「実在したとは思えないほど、(ドラマティックな)三人の関係性なので、とてもやり甲斐はあります」
――この作品の出演オファーを受けた感想は?
水:クララ・シューマンという存在をまだ知らなかった頃だったので、率直に「こんな人が実在していたんだ」という感想でした。宝塚のころにはもちろん生のオーケストラではありますけれど、クラシック音楽とコラボするのも初めてでしたから、とても楽しみでしたね。
――今回はクララのほぼ一生を描いていますよね。「女性の一生」を演じるということについてはいかがでしょうか。
水:幼少時代はないにしろ、シューマンとの出会いは10歳ですからね。劇中でもシューマンやブラームスとのエピソードがありますが、本来はもっともっといっぱいあるはずなんです。年代がジャンプすることもあって、エピソードもかいつまんだものであるので、観客として観た場合飛び飛びに思えるかもしれない。そこを、違和感がないように、ついてきていただけるように演じないと、読まないといけないなと思いました。実在したとは思えないほど、(ドラマティックな)三人の関係性なので、とてもやり甲斐はあります。
――挿入される曲の選び方も重要になっていますよね。
水:前半がシューマン、後半がブラームスという構成ですが曲調も全然違う。今回初めて聴いた曲もあったのですが、作曲家によってこんなにも違うのか、と。繊細な雰囲気を持つものもあれば、激しかったりとか、違いが明らかにわかります。ひとくくりにクラシックって思っていましたけれど、改めて聴いてみるとすごく面白いですよね。
――書かれた曲の年代を調べると、エピソードと近い部分もあったりしますね。
水:「クライスレリアーナ」は台本のエピソードそのままのタイミングで書かれた曲で、その時のシューマンの心情が表されていますよね。台本を書かれた渡部玄一さんが本当に詳しくて。このタイミングではこの曲!というのを拘っていらっしゃるようです。
「特に音楽は言葉がない分、国境を超える力も持っているんです」
――2部はブラームスとのエピソードですが……。
水:不思議な関係なんですよね。クララとブラームスとの手紙のやり取りが残されているようなんですが、俗っぽい愛情の繋がりというよりは、音楽を通じた一歩先の付き合いのような感じらしいんです。実際はどうだったんだろう?とすごく興味があります。ブラームスのほうが若干片想いのようなイメージですけれど。だからと言ってブラームスが頑なに遠くから見守るという構図でもないし、一緒に暮らしていた時期も短いし……凡人には計り知れない魂のようなもので繋がっていたのかしら?ととても思います。
この当時は有名な作曲家が大勢生きていた時代。宝塚でいうと例えば昔の花組のように後にトップスターになるような人ばっかりだったんだ、というようなものですよね。そんな中でシューマンとブラームスという男性2人の関係性も、“才能”という神から与えられたものに対する、バトルのようなものがあったのではないかと思います。
――登場人物だけ見ると、あたかも三角関係のように見えるのですが、シューマンはブラームスを作曲家としての援助をしていたりするので、単純な三角関係とは違ったものがありますね。
水:ブラームスにはシューマンに対する尊敬……のような感情があるので、単なる男女関係ではなく、クララと続いていたということでしょうか。本当に、音楽が紡ぐ関係性というところでは我々が考えもつかないところですね。
――共演の新納さんは、一人二役を演じますね。
水:先日お会いしたときは、第一部のシューマンと、第二部のブラームスの年齢がほぼ同じなので、演じ分けに苦労すると話していましたね。新納さんは年配の役も時々演じられているので、晩年の演技は雰囲気が出ていて素敵でした。この作品はクラシック音楽のファンの方、そして演劇のファンの方、両方いらっしゃると思いますけれど、どちらのファンの方でも楽しめる内容だと思います。この作品はすべてがノンフィクションとは思えないほどドラマに満ちたストーリーと生演奏の音楽によるもので、特に音楽は言葉がない分、国境を超える力も持っているんです。シューマンやブラームスの時代の楽曲を通して、セリフを聴いていただき、その彩り豊かで想像力をかきたてられるストーリーを届けられたらな、と思います。
――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。
<STORY>
1819年9月13日、ピアノ教師フリードリッヒ・ヴィークの次女としてクララは生まれました。クララは幼少の頃より、ピアニストの才能を発揮し、天才少女としてその名は広まりました。やがてヴィーク氏は一人の青年を弟子にとります。青年の名前はロベルト・シューマン。大学で法律家を目指しますが音楽の道を諦めきれず、ピアニストを目指します。しかし、指のケガがもとで断念、作曲家を目指すようになりました。やがてクララとロ ベル トは互いに愛し合いますが、これに気付いた気難しく厳格なヴィークは二人を遠ざけます。ヴィークの二人に対する誹謗中傷はさらにエスカレートし、ロベルトはヴィークを名誉棄損で訴えます。そして2人結婚を許可する判決が下り、晴れて2人は結婚しました。
2人が結婚して13年の歳月が経ちました。そしてクララはピアニスト、ロベルトは作曲家として確固たる名声を手に入れました。2人はお互いに支え合ってきましたが、ロベルトは疲労から神経が衰弱していき、外部との接触を拒むようになりました。さらに病状は悪化し、彼の名声は落ちる一 方で した。そんな中、知人の紹介で訪問してきた若きヨハネス・ブラームスが自作のソナタをピアノで弾き始めると、ロベルトの顔に喜びの光が射しました。ロベルトはヨハネスのために「新しい道」と題した論評を発表しました。ロベルトの厚意に深く感謝したヨハネスは、彼の最も忠実な弟子となり、シューマン一家に明るい日差しを持ち込んだかのようでした。しかしロベルトの心の病は、密かに肥大していったのでした。
1854年2月、ロベルトはライン川に身を投げました。数年来、ロベルトを悩ませていた幻聴がいよいよ耐え難いものとなり、その後 、療養施設に収容されました。知らせを聞いたヨハネスは急いで駆け付け、身重だったクララとシューマン家を助けました。こうした中でヨハネスとクララの距離は縮まり、2人の間には好意以上の感情が芽生えました。入院の2年半の間、ロベルトはあれほど愛していたクララとの面会を頑なに拒みました。
次第に自分を失い、時として獣のようにわめき散らす自分の姿を見せたくなかったのかも知れません。病院から危篤の知らせが届くと、クララは2年半ぶりに愛する夫の元に駆けつけました。そして不自由な体でクララを抱きしめるのでした。クララが到着した日から 翌々日、ロベルトは永遠の眠りにつきました。ヨハネスはその後、ヨーロッパを代表する大作曲家となりました。またクララも演奏家としてその名声を不動のものとしていきました。2人は強い愛情で結ばれ、時には夫婦のように、家族のように、また同志として、ロベルトの死後40年にわたって絆を深めていったのです。そんな2人にもやがて別れの時が訪れるのでした-。
<曲リスト>
第1部 ロベルト
シューマン
「あなたに初めてお会いして以来」
歌曲集 『女の愛と生涯』作品 42-1 詞:シャミッソー (ソプラノ、ピアノ)
幻想小品集 作品 73-1 (チェロ、ピアノ)
交響的練習曲よりviii(ピアノソロ)
「クライスレリアーナ 」 より 第1曲 (ピアノソロ)
「ウィーンの謝肉祭の道化」よりインテルメッツォ(ピアノソロ)
「献呈」 歌曲集『ミルテの花』作品 25 1 詞:リュッケルト (ソプラノ、ピアノ)
「くるみの木」 歌曲集『ミルテの花』作品 25 3 詞:モーゼン (ソプラノ、ピアノ)
ブラームス
ハンガリー舞曲 第5番 (ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)
第2部 ヨハネス
シューマン
「トロイメライ」『子どもの情景』作品 15-7(チェロ、ピアノ)
ブラームス
「エドヴァルト 」 ピアノ曲『 四つのバラード』 作品 10-1 (ピアノソロ)
「永遠の愛について」 歌曲集 『四つの歌』作品 43-1 詞 ヴェンツィヒ (ソプラノ、ピアノ)
ヴァイオリンソナタ第2番イ長調 第1楽章 (ヴァイオリン、 ピアノ)
ピアノ三重奏曲第1番ロ長調 第1楽章 (ヴァイオリン、チェロ 、ピアノ)
※曲目は変更になることがあります。
【公演概要】
作品名:ストーリー・コンサート 『クララ-愛の物語-』
日程・会場:2019年12月12日(木) 14:00開演 / 18:00開演 よみうり大手町ホール
構成・演出:渡部 玄一
<出演>
水夏希 (クララ役)
新納慎也(シューマン/ブラームス役)
<演奏>
岡田愛 (ソプラノ)
鷲見恵理子(ヴァイオリン)
渡部玄一(チェロ)
白石光隆(ピアノ)
東京アンサンブルギルドHP:http://www.tokyo-eg.com/
お問い合わせ:MItt
TEL 03-6265-3201 平日12:00~17:00
主催・製作:東京アンサンブルギルド 、インプレッション
水夏希撮影:金丸雅代
文:Hiromi Koh
構成協力:佐藤たかし