2020年1月、新年早々の初笑いにふさわしい作品、舞台「罪のない嘘~毎日がエイプリルフール~」が開幕した。1996年に三谷幸喜が「劇団東京ヴォードヴィルショー」のために書き下ろしたシチュエーションコメディで、今回 9年半ぶりの上演。「劇団東京ヴォードヴィルショー」主宰の佐藤B作をはじめ、片岡鶴太郎、鈴木杏樹、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)=1月・2月公演出演/室 龍太(関西ジャニーズJr.)=3月公演出演、小林麻耶、菅原りこ、あめくみちこ、黒田こらん、小林美江、山本ふじこ<Wキャスト>、星野園美<Wキャスト>、中西良太、まいど 豊、佐渡 稔ら の個性豊かな出演者が揃い、さらに、日替わりゲストで、石井愃ー、佐藤銀平、梅垣義明、ぼんちおさむ(大阪公演のみ)も登場。
幕開きは楽しげな音楽、そしてリビングの中央に2人、父と娘、鏑木研四郎(佐藤B作)、娘は鏑木ちよみ(菅原りこ)。「お父さん、ありがとう」「幸せになれよ」・・・・・「連れてこいよ」「呼んでくるね、お父さん、ありがとう」。娘には想い人がおり、相思相愛で結婚したいと思っている、父はそれを嬉しく思う。そして娘はリビングを出る。入れ替わりにある男がやってくる。彼の名は鴨田巌(片岡鶴太郎)、実はこのマンションの住人で、ここは彼の家・・・・・・ということは????鏑木研四郎はとっさに口から出まかせで「電気屋です」、そこへ巌の妻であるまち子(鈴木杏樹)が「あ〜電気屋さん・・・・・夕方じゃなかったの?」、おーーっと、辻褄が・・・・・あっちゃった(笑)。
ここからが、この物語の始まり!
巌は満足げに「ようやく自分の家が持てた」とソファーに座る。念願のマイホーム、最近引っ越してきたのか、まだ未整理のダンボールが積まれている。妻は買い物に。いわくありげな研四郎、巌をなんとかして外に出したい、あーだこーだと言って外に出そうとするがいぶかしく思う巌、「床屋のマッサージ券があります」と彼にわたして、ようやく巌は外に出た。入れ替わって娘が”彼”を連れてくる。彼の名は堤万次郎(辰巳雄大)、見た目はなかなかの好青年、彼女の父に初めて会う、バッチリとスーツで!
ほとんど全ての人が持っているささやかな見栄、自分をかっこよく見せたい、そして庶民的な夢、巌の『マイホーム』
しかり、研四郎は父親らしく娘の幸せを願い、娘は好きな人と一緒になりたい、共感できる『夢』だ。実はこのマンション、ほんの数日前は確かに研四郎の家だった。しかし、借金が膨らんで手放すことになり、しかも買った価格の半分以下で売却、それを不動産屋を通じて巌が購入、ほんの数日前に越してきたのだった。みっともない姿を娘に見せたくないばかりに巌の留守にこっそり入って、ひと芝居打って、娘に心配をかけずに・・・・・そして多少の見栄も手伝ってこのような行動に出たのだった。ところが、物事はそう簡単にはいかない!予期せぬ人々が入れ替わり立ち替り訪れて、そのたびごとに研四郎はその場しのぎの嘘をつきまくり、自分がついた嘘でさらに窮地に陥って、会話もかみ合わず、なんだかわかんなくなっていく登場人物たちが右往左往・・・・・・・・がだいたいの流れだ。
それにしても、訪れる人々が実に個性的で、中にはちょっぴりわけありな人も。マンションの自治会の副会長夫妻、研四郎の元妻・若宮サダ(あめくみちこ)、研四郎の愛人、不動産屋・寺門(中西良太)、巌の娘でJK(JKに見えない(笑))のゆみ(山本ふじこ)、本当の電気屋(石井愃ー)、嘘に嘘、もう、何がなんだかわからなくなってくる主人公、そして周囲の人々。さらに主人公以外にも嘘をついている人物もいて・・・・・まさに『嘘のミルフィーユ』状態だ。もちろん、バッドエンドにはならないので、そこらへんは大丈夫!だた、彼らがついている嘘は、本当にささやかで、ちょっぴり虚勢を張ってる部分もあってなんだか愛おしい。タイトルも『罪のない嘘』、あくどい嘘はなく、気の弱さとか、見栄っ張りとか、ちょっと寂しいから、とかそういった動機の嘘。ラスト、少々脱力した研四郎と巌、おっさんである2人がなんだか可愛らしく見える。2幕もの、新年明けての初笑いには程よい感じの舞台であった。
ゲネプロ前に囲み会見があった。佐藤B作は「笑いが賑やかで〜稽古は大事で、やれたので!本番はめでたく!お芝居楽しく観てくだされば」と満面の笑み。片岡鶴太郎は「(キャストが)濃いですね〜コテコテ(笑)、中華料理みたい!稽古場が笑いが絶えなくって」といえば、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)は「思いっきり飛び込んで!」とコメント。そこで佐藤B作が「稽古はちょろちょろきてたね」とツッコミ。それに対して「10回はこれたかな?でもバッチリです!三谷さんのホンなので!(カメラに向かって)大河に呼ばれるように!三谷さん!よろしくお願いします!」とここで大河アピール。小林麻耶は「初舞台です、お母さんです!稽古が楽しくって、自分の番がくるまでずっと笑っていました(笑)」といい、小林麻耶の夫役の佐渡稔は「おじいさんって言わないで!70です、今年で71です(笑)」とコメントしたが、いやいや若く見えて元気はつらつな!そこで片岡鶴太郎が佐渡に「セリフ入ったの昨日ぐらい(笑)、アドリブで埋めないと(笑)」とツッコミ。鈴木杏樹は「楽しいメンバーで、アドリブが間違ってるのか合ってるのかわからない(笑)」と稽古の様子をコメント。芸達者が揃っての芝居、もちろんゲネから快調に!それを受けて片岡鶴太郎が「同じ日はないです、(しかも)無意識で(笑)」、そこで佐藤B作が「ホンの通りです!」と”訂正”(ここで佐藤B作、片岡鶴太郎を叩く)。片岡鶴太郎は「初笑いです」とコメントしたが、これが2020年初観劇という観客も。佐藤B作は「面白いものを面白く伝えるのが大変です。三谷さんは初日にくるかもしれませんね。稽古にはいらしてはいないです」と語る。辰巳雄大は「稽古中のみなさんのお芝居からいろんなことを学びました。三谷さんのホンは財産になります」としみじみ。菅原りこは「お芝居、新鮮な気持ちで!みなさんに観ていただきたい」と語りつつ「稽古は、結構きつかったです」といい、そばにいた母親役のあめくみちこは「ありえない可愛さでしょ」と娘PR。それを受けて「やりきりました!っていう気持ちで!」と語ったが、B作相手に丁々発止のやり取りが印象的。最後に辰巳雄大が「『罪のない嘘』、初笑いを!」そして全員で「よろしくお願いします!」と唱和、会見は笑いのうちに終了した。
<出演>
佐藤B作
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~) <Wキャスト=1月、2月公演出演>
室 龍太(関西ジャニーズ Jr.)
小林麻耶
菅原りこ
あめくみちこ
黒田こらん
小林美江
山本ふじこ
星野園美
中西良太
まいど 豊
佐渡 稔
石井愃ー<日替わりゲスト>
佐藤銀平<日替わりゲスト>
梅垣義明<日替わりゲスト>
鈴木杏樹 ・
片岡鶴太郎 ほか
【概要】
公演名: 三谷幸喜作「アパッチ砦の攻防」より
「罪のない嘘」~毎日がエイプリルフール~
日程・場所:
<東京>
2020年1月9日(木)~1月19日(日)全13公演 ヒューリックホール東京
<大阪>
2020年1月23日(木)~1月25日(土)全4公演 クールジャパンパーク大阪WWホール
<広島>
2020年2月18日(火)開場 18時30分 開演19時 JMSアステールプラザ 大ホール
<福岡>
2020年2月20日(木)開場 18時30分 開演19時 福岡市民会館
<北九州>
2020年2月22日(土)開場 13時 開演13時30分 北九州芸術劇場 大ホール
<愛知>
2020年3月28日(土)~3 月 29 日(日) 全3公演 ウインクあいち
原作・脚本: 三谷幸喜
演出: モトイキシゲキ
音楽: 鎌田雅人
照明: 柏倉淳一
美術: 齋藤浩樹
音響: 戸田雄樹
公式HP:https://www.tsuminonaiuso.com/
公式ツイッター:@tsuminonai_uso
主催:「罪のない嘘」製作委員会
製作:エイベックス・エンタテインメント/プロデュース NOTE
文:Hiromi Koh