2020年3月、 明治座が3年ぶりに花形歌舞伎を上演することになった。中村勘九郎、中村七之助をはじめ、桜の季節に相応しい華やかな顔ぶれが揃いぶみ。 昼の部は歌舞伎の様式美溢れる古典の名作『車引』に続き、「しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす」の名
台詞でお馴染みの長谷川伸の傑作『一本刀土俵入』、加えて『芝翫奴』『近江のお兼』の舞踊二曲というバラエティに富んだ作品を。
夜の部は200年以上にわたって受け継がれる四世鶴屋南北の不朽の名作『桜姫東文章』を通し狂言で。歌舞伎通にはたまらないラインアップ。
1月20日、制作発表会が行われた。登壇したのは中村勘九郎、中村七之助。そして明治座の三田代表取締役社長と松竹の我孫子代表取締役副社長演劇本部長。
まず、明治座の三田社長より挨拶「明治座では3年ぶりの花形歌舞伎です。再来年は創業150年を迎えます。明治6年に開場し、歌舞伎中心でした。戦後、公演も多様化しました。平成5年に劇場も新しくなりまして、その時のこけら落とし公演も歌舞伎でした。そして平成16年より花形歌舞伎を上演してきました。3月の花形歌舞伎を皆様、楽しみにしていらっしゃいます、よろしくお願いいたします」と挨拶。それから松竹の我孫子副社長より「今回の公演を嬉しく思います。明治座は東京で最古の歴史を持つ劇場、それからいろんなお芝居をやってきました。3年ぶりの花形歌舞伎、今回はたくさんの若い方が挑戦します。ありがたい機会です。今、歌舞伎はいろんなところで上演されています。これは本当に嬉しいことです。若い方々に古典歌舞伎を上演していただく、古典があるからこそ、新しいものに挑戦できる。よろしくお願いいたします」と挨拶した。
それから中村勘九郎が挨拶「明治座は4年ぶりで4回目です。楽しい舞台をここで見させていただきました。花形歌舞伎ということで、若いパワーを結集して、力強い、パワフルな作品をお届けしたい」と語った。それから中村七之助は「出演者一同、力強くふさわしい舞台を作り上げていきたいと思います」と挨拶した。
それから質疑応答、『一本刀土俵入』について、長谷川伸の傑作戯曲で、主人公の駒形茂兵衛は多くの名優が演じてきた。歌舞伎では十七世中村勘三郎、十八世中村勘三郎、九代目松本幸四郎(現在の二代目松本白鸚)が演じており、前進座では中村梅之助、新国劇では島田正吾、と名だたる俳優の名前が浮かぶ。中村勘九郎は「父も大事にしていた大役です。心温まる話、大好きなお話で、私も今回で3回目になります。七之助とよく話し合って、新鮮な気持ちで」とコメント。そして「二人でやるとは思っていませんでした・・・・・ぶっ飛んでる話なんです。この作品は歌舞伎だけではなく、いろんな舞台がありますし、観させていただいていろんな発見がある。まだまだ、出尽くしていない要素があるお芝居です。この世界観が伝えていければ」と語る。そして「舞台は神聖な場所」と語る。中村七之助は『桜姫東文章』はすでに演じたことがあるそう。「年月をかけて歌舞伎と向き合ってきました。前のコクーンの時は串田和美さんの演出でした・・・・・また一から教わっていくので楽しみです」とコメント。
また今回の花形歌舞伎について中村勘九郎は「大切な役に出させていただくのは大事なこと、ありがたいです。歌舞伎の魅力、パワーを少しでも届けられたら。父始め、先輩たちの舞台に憧れてきた。そうやって下の世代に憧れてもらえるようにしたい」とコメント。また中村七之助も「花形歌舞伎、大切にしたいですね。こういう機会、修行というのは常に持っています。こんな通し狂言もなかなか出る機会もないので・・・・」と語る。
中村勘九郎は「(『一本刀土俵入』について)人の暖かさに触れて、恩返しって言うか、暖かさ、感謝の気持ち、人との出会い、ほんわかとした感じ、そういう気持ちを忘れずに。温かい作品です」とコメント。「堕落していく役も楽しんで」また中村七之助は「お蔦は人間味溢れた・・・・助けたことを覚えているのか覚えていないのか、いろんな解釈ができます。人生に向き合う、捨ててない、生きていこうというパワーがある。芯がしっかりしている。後々、助けになっていく、今でもありそうな・・・・長谷川伸さんの素晴らしい作品です。初めての時はかたくなってました、いい見せ方ができれば」と語った。それから『桜姫東文章』について「前半は謎が謎を呼ぶ面白い、素晴らしい作品、最後の・・・・・変わっていく、酔っ払ってなかなかそこまで・・・・・(笑)、難しいところ、苦労しました。掘り下げると辻褄が合わない・・・・・最後は一人芝居のように」とコメント。四世鶴屋南北作、なかなかにぶっ飛んだ作品として知られているので、この演目も注目。
改めて囲み会見も行われた。「明治座で花形歌舞伎、刺激的ですので若手のみんなと力を合わせて」と中村勘九郎、中村七之助も「お話をいただいて嬉しい、大役を2つも!」とあらたに決意を口にした。現在、1月の歌舞伎座に出演中の中村勘九郎は「歌舞伎座というのはやはり大切な、神聖な場所。そこに正月から出られるというのはうれしいですね」と語る。また10年前にコクーン歌舞伎で桜姫、大抜擢された中村七之助は「もう、ほとんど記憶がないくらいに大変でした!360度の演出・・・・・とても大変でした」とコメント。また兄弟で恋人役、夫婦役をやることについ中村勘九郎は「この桜姫のように因果応報で密な夫婦、そんなに演じていない、美しく、色っぽく、艶かしい感じで」といい中村七之助も「エロティックな部分がある、お姫様とのギャップがある作品です」とコメント。また中村勘九郎は「BLの要素もありますし、この作品は現代でも受ける作品だと思います」とさらに。
また中村勘九郎は2019年の大河ドラマで主演をしていましたが、「マラソンランナーだったので体は絞りあげましたね。それで終わってからは食べまして・・・・人生で一番重い(笑)、ちょっとふっくらしたほうが歌舞伎は・・・・・絞るのは大変ですが、戻るのは簡単です」と笑いを誘った。
今年は、オリンピックイヤー、中村勘九郎は「海外からお客様がたくさんこられるので、日本が誇る歌舞伎を発信できたらいいな・・・そういう年ですし、楽しみです。明治座の前がマラソンコースじゃないのが残念(笑)」と語り、会見は終了した。
<昼の部>
『車引』に登場する三つ子の兄弟、松王丸は左大臣藤原時平に、梅王丸と桜丸は時平に陥れられた菅丞相(菅原道真)と斎世親王に仕えています。梅王丸、桜丸は無念を晴らそうと時平が乗る牛車の前にたちはだかり…。横見得や石投げの見得、元禄見得など様式美溢れる古典の名作です。『一本刀土俵入』は長谷川伸の傑作で、相撲の親方に見放され一文無しの駒形茂兵衛は親切な酌婦お蔦から金を恵んでもらい「必ず横綱になる」と誓います。「しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす」の名台詞でお馴染みです。続いて主人の供をして廓へ通う奴がユーモラスに踊る『芝翫奴』と、男勝りの美しい娘が長い布晒を使って華やかに踊る『近江のお兼』の舞踊二曲。バラエティに富んだ演目を是非お楽しみください。
<夜の部>
長谷寺の修行僧清玄と稚児白菊丸は相愛の仲。未来で夫婦になろうと心中をするものの、清玄だけ生き残ってしまいます。十七年後、高僧となった清玄は吉田家の息女・桜姫が白菊丸の生まれ変わりだと知ります。桜姫は屋敷に押し入った盗賊の釣鐘権助の子を生み、出家を望んでいますが…。『桜姫東文章』は文化十四(一八一七)年に初演され、大南北と称された四世鶴屋南北ならでは人気演目の一つです。息女の桜姫が遊女にまで転落するという物語性としたたかな存在感。因果の糸に絡まれる清玄。対する権助の無法ぶりなど因果因縁と奇想天外な展開に溢れた人気演目です。
【公演概要】
明治座 三月花形歌舞伎
2020年3月2日(月)~26日(木)
明治座チケットセンター電話先行予約:1月25、26日 10:00〜17:00(2日限り、電話のみ)
一般販売:1月30日 10:00より
明治座公式HP:https://www.meijiza.co.jp