《インタビュー》おぼんろ第18回本公演「メル・リルルの花火」作・演出:末原拓馬&ホリプロインターナショナル プロデューサー 金成 雄文

独特な世界観と固定概念を打ち破る“大人のための寓話”を紡ぎ出している劇団おぼんろ。普遍性の高い物語に個性的かつ斬新、そして幻想的なセットと演出で人気劇団に成長。廃工場や屋形船、 オリジナルの特設テントなど様々な場所でも公演を行ってきた稀有な劇団。 客席と舞台を分けない360度を取り囲むようにして立体的に紡ぐ独自の上演スタイルをとっている。その劇団おぼんろとホリプロインターナショナルが今回タッグを組んで4月に「メル・リルルの花火」を上演する。タッグを組んだきっかけなどを劇団おぼんろ主宰で作・演出の末原拓馬さんとホリプロインターナショナルのプロデューサー 金成 雄文さんにお話をお伺いした。

「新しい人との出会いは必然性があるんだなと感じました」(末原)
「『ビョードロ』という作品を観て、すごく衝撃を受けました。」(金成)

――お互い、手を組んでやってみようとなったきっかけは?
金成:弊社に、田所あずさという声優がいるんですが、去年田所の勧めで劇団おぼんろを観たのがはじまりです。ちょうど新宿FACEでやっていた『ビョードロ』という作品で。そこで初めておぼんろの作品を観て、すごく衝撃を受けました。それこそ野田秀樹さんの作品を初めてみたときのような興奮がありましたね。それと同時に弊社の役者を出したいな、と思ったんです。そこで営業を兼ねて話をしているうちに“もっと深い関わり方ができそうだな”ということで、今回のプロジェクトへと繋がりました。(「おぼんろ」は)世界観も国籍を選ばないストーリーだし、オリジナリティもあるし、末原さんの頭の中で生み出されたものだということがとても面白くて。ホリプロインターナショナルは2018年に設立されたばかりで、世界に通用するコンテンツを作っていかなくてはならない……と考えた時に、この『おぼんろ』がそれにピッタリはまるのではないかと思ったので、声をかけました。
――(末原さんへ)そのお話を聞いた感想は?
末原:驚いたというのもありましたし、新しい人との出会いは必然性があるんだなと感じました。世界に物語を広めていこうというのは自分も狙いとしていたところだったので。もちろん、独立したコンテンツとして自分なりにやってきた誇りもありますし、それをファンの方も大切にしてくれていたのもわかりますが、今回のお話は自分でも納得のいく内容だったので快く引き受けました。それに、表面だけでなくクリエイティブな部分を理解してくれていたのもうれしかったですし(笑)
――セットの使い方も独自性があって、没入感が大きいですね。
末原:自分で作っている段階でも、物語をやっているという感覚と、現実の感覚とが混ざり合っていくということがどの作品にもあるのが不思議なところですね。座る位置で見え方も感じ方も変わってくるので、人によって感想もバラバラなんです。観客参加型というと客いじりをすることだと思われがちなんですが、たとえば自分でヘンゼルとグレーテルになったように想像して、好きな場所から自分で切り取る。コンセプトアートに近いというか。うちでは“出演者と観客”ではなく“語り部と参加者”という名称に変えています。語り部はあくまでお話を紹介する存在なんです。
金成:末原さんの世界観は観客も一緒に入っていけるというか、気持ちよく浸からせてくれるというか、空気感が素敵だなと思ったんです。

「世界や時代を決めるよりも、漠然としたような雰囲気のほうがふさわしいと思っています」(末原)
「末原さんの作る世界に面白さがあるので、こちらから感想は言えど、要望は入れていません」(金成)

――今回の作品「メル・リルルの花火」も異世界のような雰囲気になりそうですね。
末原:もはや地球上のできごとではないようなイメージで作っています。昔々、はたまた現在か、あるいは未来か……。はっきりと世界や時代を決めるよりも、漠然としたような雰囲気のほうがふさわしいと思っています。
――ホリプロインターナショナルとしては、今回の作品について何かご意見を入れたでしょうか?
金成:いわば『究極の放し飼い』のようなもので(笑)。末原さんの作る世界に面白さがあるので、こちらから感想は言えど、要望は入れていません。作品というよりは制作体制を整えることや宣伝に集中しています。むしろそこが『おぼんろ』にはなかった部分なので、そこを補えることができれば、と。
――たしかに演劇のPRは難しさがありますよね。初日が来るまで完成されたものがある訳ではありませんし……。
末原:たいへんですよね。役者も制作も初日まで稽古しているので、わかりやすく説明し紹介するというのは難しいです。
金成:PRを担当する側としてはいつごろからプロモーションを始めるのか、という俯瞰のような視点でのブランディングをやりたい、ということもありましたし、とにかくどうしたら『おぼんろ』をいろいろな人に知ってもらえるのか。コツコツと人と人との口コミから積み重ねていくのも大事だなと思っています」
末原:そう考えると、プロモーションって作品を“信じてもらう”ためにありますよね」
――今回の公演にあたってメッセージを!
金成:僕のように『おぼんろ』を知らなかった人が、誰かに連れられていっておぼんろの作品に触れてハマる、という感動は伝わると思うので、同じ体験をしていただければなと思います。ぜひ劇場に足を運んでいただきたいですね。
末原:物語が世界をどのくらいまで変えられるかを試し続けたいと思っているし、世界を変えてしまうほどの物語ってどういうものなのか、ということを毎日考え続けているんです。4月の公演もその場所のひとつ。物語が拡がるという意味では今までよりも一歩前進できていると思うから。世界というのは観に来ている人のことだろうし、世界と出会いたいな、という気持ちでいます。今から楽しみにしています。
――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

<物語イントロダクション>
ねえちゃんの体から花が芽吹く日を、 ちいさい頃から楽しみにしてた
とうちゃん と かあちゃんは、
キツネみたいな顔をしたひとたちに殺されちまった
その日から、 ねえちゃんは、 人が変わった
ぼくはお気に入りのおまじないを歌い続けて、
どこまででも旅に出るわけです
ねえちゃんといっしょに、 いつまでも
ゆるされる限りは、 いつまでも

<劇団について>
2006年、 早稲田大学在学中、 末原拓馬を中心に結成。 大人のための寓話を紡ぎ出すことを特徴とし、 その普遍性の高い物語と独特な舞台演出技法によって注目を集めてきた。 末原の路上独り芝居に端を発し、 現在は4000人近くの動員力を持つ劇団に成長。 抽象舞台を巧みに用いるおぼんろは廃工場や屋形船、 オリジナルの特設テントなど様々な場所でも公演を行い、 どんな場所でもまるで絵本の中に潜り込んだようなエンターテインメントを紡ぎ出してきた。 特筆すべきは客席と舞台を分けない360度を取り囲むようにして立体的に紡ぐ独自の上演スタイルで、 語り部(演者)たちは時に観客の真横に腰掛け、 時に真上から見下ろし、 前後左右、 上下を迫力満点に動き回る。 語り部の息遣いが聞こえ、 温度さえも伝わる迫力に参加者(観客)は胸を高鳴らせ、 日常を忘れて物語の世界に浸る。 2019年にはサーカスパフォーマンスとの融合にも挑戦し、 老若男女、 国内外の観客から絶大なる人気を誇る。
<ホリプロインターナショナルについて>
公式HP:http://www.horipro-international.com/
「世界に通用するスペシャリストの創出」( Creation of world-class specialists )という企業理念のもと、 世界規格で展開する、 タレント、 アーティストの発掘・育成や、 コンテンツを創出します。 所属タレント:May’n、 田所あずさ、 大橋彩香、 Liyuu、 木戸衣吹、 Machico、 Teresa、 大久保麻梨子、 茅原実里、 ほか。

 

【公演概要】
「メル・リルルの花火」2020年

出演:
劇団員: 末原拓馬 さひがしジュンペイ わかばやしめぐみ 高橋倫平/ゲスト:黒沢ともよ 田所あずさ
渡辺翔史 山城秀彬 堀田聖奈 坂井絢香 miotchery 権田菜々子

製作:劇団おぼんろ / 株式会社ホリプロインターナショナル
公式HP:https://www.obonro-web.com
公式ツイッター:https://twitter.com/obonro?lang=ja
構成協力:佐藤たかし
取材:Hiromi Koh