舞台「花火の陰」”夢”と”これから”、『ずっとそばにいます』。藤田奈那(元AKB48)色紙コメント、「今を精一杯生きる」

好評につき再演が決まった舞台「花火の陰」が2月5日、三越劇場で始まる。
ピアノの調べ、春子(大鳥れい)が登場、喪服を着ている。「あの人のもとへ」、「二度と帰れない」とゆっくりと歌いながら歩き、静かに腰を下ろす。優しい旋律がこれから語られるストーリーを予感させてくれる。
蝉の声、「春子さん!」「須崎さん(野村宏伸)!」五月雨式に次々と登場する人たち。「春子さんは有名人だから」と言われる春子。春子は売れっ子女優になっていた。春子にとっては懐かしい人たち、そこへ元気よく!若者が!「お待たせいたしました!」といいスマホでパシャパシャと写真を撮り始める。どこでも見かける行動、それから「インスタ、あげていいっすか?」それに対して春子は思わず「やめて!」という。この場所は春子にとって特別なところ。思い出話に花がさく。そこへ、ある女性が・・・・・彼女の名前は星野文子(築田行子)、「私、死んだんですか?」「ずっとここにいますけど」、驚愕する面々、スマホを知らない、みんなで撮影、文子曰く「私、写ってないじゃないですか!」と叫ぶ。
ここからストーリーが動き出す。

場面は現在と過去を行きつ戻りいつの進行。ここで映画の撮影が行われていた。その様子が描かれる。春子は駆け出しのスタッフ、演出助手だ。あれやこれやと皆、忙しそうだが、どこか楽しそうな。もの作り、映画作り、全くのゼロからの創造、皆、生き生きとしており、春子もその中の1人だ。皆、同じ目的に向かっている。

しかし、観客は知っている、この人々がどうなるかを。子供が生まれそうな小松幸子(きよこ)、そんな彼女に淡い想いを寄せる橋本のぶゆき(阿紋太郎)、最高の作品を作りたいと意気込むサクマ俊介(岡田達也)ら、忙しく働いている、生活している。なんということのない光景、会話、そしてそれぞれの人間関係。お互いにお互いを思いやる。映画は「湖底の郷」というタイトル。ダム建設のために村が湖に消えた。日本の河川の歴史は治水と利水の歴史、日本は国土が狭いために他の国と比較すると川の勾配が激しく、水害、水不足、昨年の台風でも水害が話題になったが、そのためにダムを建設する。そのために立ち退きを余儀なくされることもある。そんな背景を押さえておくとストーリーに俄然興味が湧いてくる。このダム建設の物語、これがサクマが長年温めてきた企画、ようやくロケにこぎ着けた、というわけだ。

過去と現在を行きつ戻りつ、『その日』が来るまでを描いているシーンは微笑ましく、そして楽しげだ。春子もまだ20代、”これから”という希望に満ちていた、いや春子だけではなく、サクマ、須崎はじめ、皆、”これから”に胸踊らせていたのだ。儚くも美しく、キラキラとした”これから”に向かって生きる。恋もちょっと慎ましやかで微笑ましく、歌(懐かしい!)で懸命にアピールしたり、もぞもぞしたり、思い切って告白するも花火の音で聞こえなかったり(いや、聞こえないふり????ここはご想像にお任せ)、その想いは時を超えていく。

地球上の人々全て、生まれた時から”これから”に向かって生きていく。その先にあるものは皆、違う。このロケ地に集まった人々とて、それは同じこと、花火のような一瞬のきらめき。観客はだんだん気付いていく。タイトルの「花火の陰」の意味を。単純にハッピーエンドとかバッドエンドとかそういった二元性に基づいた考え方の結末ではない。結末は結末ではない、春子にとっても、観客にとっても。じんわりと心に染み入る物語。主演の大鳥れいをはじめ、丁寧にストーリーを紡ぐ。また、”たまごちゃん”(藤田奈那)というキャラクターが登場するが、ちょっと不思議な存在。

人生は何が起こるかわからない、長いスパンで考えれば、人生は短く儚げ、しかし、単純に儚いものでもない。儚いながらにも永遠に続く想いと愛。それを過去と現在を交錯させて、見せていく。ファンタジックで、淡く、そして花火のようなきらめきと、そこに隠された陰。ラストシーンの景色は美しく、花火が上がる、舞台上の登場人物たちはそれを見ているが、その目線は遠くの何かを見つめているようにも見える。繰り返し上演して欲しい内容の作品だ。冒頭のテーマ曲も綺麗な楽曲であった。

ゲネプロ前に出演者からの挨拶があった。
「毎日、全力で稽古をして来ました!素敵なホンです!(客席に向かって)みなさまの口コミで・・・・(笑)」(大鳥れい)
「ゴーストファンタジーで本当に心温まるものです。現実ではありえませんが、再会を軸にした物語です」(岡田達也)
そばで野村宏伸がニコニコ。「いい人です」と大鳥れい。短い時間であったが、作品のようにじんわりとした温かい会見であった。

<あらすじ>
とある片田舎。映画を撮影するため、俳優、スタッフ、作品に関わる漫画家などがこの地に滞在していた。
しかし、ある事件をきっかけに、映画は完成を見ることなく、表現者たちはバラバラになってしまった。

それから20年、かつて撮影チームの助手として下積み生活をしていた女性が、大物女優として大きく成長し、この地に戻ってきた。
彼女が20年ぶりにかつてのロケ地に足を踏み入れたその瞬間、20年前、共に同じ時を過ごした人たちが次々とある目的のためにやってくる。
過去を回想していく中で、長年自分の中でひた隠しにしてきた想いに巡り合っていく女優。

―『花火みたいな人生を歩めて、羨ましいです』
―『花火が綺麗なのは一瞬だけだから。そのあとの行方を、誰も知らないし、知ろうともしないでしょ』

遠い過去から誰かの声が聞こえた気がした。
田舎の空に花火の音が鳴り響くとき、20年の時を超え、過去と現在が静かに交錯し、そこで暮らしていた人たちの生き様が浮き彫りにされていく。

その時、起きた出来事とは……。

たまごちゃんだから、黄色の衣装でパチリ!

【概要】
タイトル: 舞台『花火の陰』
公演期間: 2020年2月5日(水)~2月10日(月)
公演会場: 三越劇場
チケット情報:
一般席 6,800円(税込)
※一般発売  2020年1月4日(土) ※三越劇場 チケット一般販売 2020年1月6日(月)

脚本: 村松みさき(村松みさきプロデュース)
演出: わかばやしめぐみ(おぼんろ)
出演: 大鳥れい・野村宏伸・笠松はる・石田隼・藤田奈那・ 築田行子・きよこ・森めぐみ/岡田達也 ほか
企画・製作:舞台『花火の陰』2020製作委員会

★公式サイト: https://hanabinokage.com/
★公式Twitter : @hanabinokage
公演に関するお問い合わせ先:東映ビデオカスタマーセンター
TEL: 0120-1081-46 (受付:月曜〜金曜 10:00〜13:00、14:00〜17:00 (土・日・祝祭日を除く))
著作権表記:©舞台『花火の陰』2020製作委員会
取材・文:Hiromi Koh