オトメイトより発売された恋愛アドベンチャーゲーム「Code:Realize ~創世の姫君~」、これが待望のミュージカル化を果たす。演出はミュージカル「ヘタリア」シリーズ、ミュージカル「王室教師ハイネ」等人気舞台を数多く手掛けている吉谷光太郎、そして主演のアルセーヌ・ルパン役には様々なミュージカル、ストレートプレイで活躍する良知真次。超歌劇「幕末Rock」以来、再び吉谷光太郎とタッグを組む。稽古真っ盛りの5月某日、良知真次さんに作品のこと、近年話題の2.5次元舞台について、語ってもらった。
「僕は2.5次元をやるときはお客様に届けるために『.5』の部分を一番大切に創るようにしています」
ーー初めての2.5次元舞台出演が超歌劇「幕末Rock」、この作品で初めて吉谷光太郎さんと組みましたが、いわゆる2.5次元舞台、特にアニメやゲームになると絵が動いている、キャラクターボイスのイメージも結構強い。厳然とイメージがあるこういった2.5次元舞台の難しさと演出の吉谷さんについてお願いいたします。
良知:2.5次元って凄く難しいジャンルのうちのひとつだと思うんです。ブロードウェイミュージカルやウィーン・ミュージカル、韓国ミュージカル、色々出演させて頂きましたが、世界中の人が日本オリジナル、メイド・イン・ジャパンとして見れるものは、もしかしたら2.5次元舞台だけじゃないかな?って思うんです。しかも2.5次元って演じる側にとっては答えがある……答えがある分、何が難しいかっていうと、例えば原作の「幕末Rock」、アニメの中で声優さんは歌うし、芝居はするし、それを舞台では俳優が同じ楽曲を歌って、同じ台詞を言います。普通に考えるとお客様は声優さんが舞台の上に立つことを望むんだろうな……僕だったらそう思います。でも、そうではなく、僕を、この作品のキャラクターを演じる役者として選んでくれた、役者として選んでもらったのは、つまり、アニメそのままではないものを見せないといけない。ところが、そうではないものを見せると原作から離れてしまう。それでは“そうではないもの”って何だろうと。原作の良さも残さないといけないし、そうでないテイスト入れるとなると、何なんだろうと……で、アニメ観たり、マンガ読んだりして気がついたことは『呼吸』、これはアニメやマンガにはないんです。マンガを読んでいる方やアニメ観ている方、その方達が役の気持ちになって『呼吸』をするんです。つまり、怖いシーンがあれば息を止める、哀しいシーンがあれば、一緒に泣く。役者は、キャラクターを通して表現するのが2次元ではなくて、2.5次元……つまり、原作は2次元で、僕たちは3次元に生きている。作品によっても違いますが、3次元の人が2次元に寄っていって、2.5次元になるのか、あるいは2次元の役を僕達、3次元の人がひっぱってきて2.5次元になるのか、この作り方の違いで大きく変わると思うんです。超歌劇「幕末Rock」に関しては吉谷さんの演出によって、シーンによって、この両方が出来た。今回のミュージカル「Code:Realize ~創世の姫君~」も同じ感じになるんですが、これの場合は原作を圧縮したバージョンで作られていますので、アニメにはないオリジナルなシーンも入ってきています。もちろん、ミュージカル仕立てである以上は歌いますから、そこに気持ちを持っていかないといけない。台詞にのっている感情とか……表現も、また変わってきます。僕は2.5次元をやるときはお客様に届けるために『.5』の部分を一番大切に創るようにしています。『.5』の部分をどう表現するか、どう気持ちをのせるかっていうところがキーになってくる、これが2.5次元の魅力であり、落とし穴でもあるのかな?と。ほんとに、2.5次元ってパワーとエネルギーが必要と思う、若さで出来ることもあるけど、僕は今や、若い方には入らないんですが(笑)……この作品はちょっと大人の部分がありますね。ルパンはカルディアと出会うことによって成長していくし、彼女もまた、然り、ルパンと一緒に成長出来たらいいんじゃないかな?それはお客様も観たいだろうし。それによってルパンやカルディアがどういう風に変わっていくのかが、今回の注目ポイントなのかな?と思います。
「初めて見るお客様にミュージカルを好きになってもらいたい」
ーー稽古もだいぶ進んでいると思いますが、今、どんな感じでしょうか?
良知:実は、シーンを創りながら楽曲をちょっと増やしてもらっています。テーマソングは2種類用意されていて、簡単に言うと、マイナーコードとメジャーコード。マイナーコードはちょっと暗い感じのテーマソング、メジャーコードの方は明るくて希望を持てるテーマソング。『どっちがテーマソングなんだろう』って思われるかもしれませんが、お客様によって捉え方が違っていてもいいと思うんです。それによってイメージは全然違っててもいい。さらにリプライズ、どちらの曲も何回も出てくるように吉谷さんに作ってもらっているんですよ。リプライズする、そうすることによって気持ちがさらにクレッシェンドしていくので、そこを上手く繋げられるように、整理整頓しながら作っています。その気持ちをのせた瞬間にメロディが出てくるようにするのが、ミュージカルの難しいところでもあり、いいところ。曲とお芝居が分離してしまうと、ミュージカルではなく、音楽劇になってしまう。今回は、ミュージカルなので、上手く、本当に、感情を上手くのせて曲を歌わないと。ルパンもカルディアも、歌って、踊って、アクションもします。そういった要素も大切にして武器にしていかないと、ミュージカルとしては失敗になってしまうので、吉谷さんとそこは丁寧に作っています。
ーー「幕末〜」は元々、ミュージカル、超歌劇でしたが、このミュージカル「Code:Realize ~創世の姫君~」は元々はミュージカルではないのを、そこをあえてミュージカルにしたっていうところが今回の舞台のポイントになってきますね。
良知:ミュージカルって苦手な人も多いし、初めて舞台観に来る人もたくさんいると思うんです。『なんで、ルパン、歌っちゃうの?』って思われたらもったいないですね。『なるほど、ルパン、歌うとこうなるんだ』っていう夢や希望を持っていただく可能性がないと!ルパン、もっとかっこよくないと!そのために踊る……ルパンは台詞ではこう言ってたけど、歌う場面では、こういう風な気持ち、持ってるんだっていう彼の心情をのせていかないといけない。ミュージカルの場合は、歌ったときにこそ、大きな感動がないと歌う意味がないので、その大きな感動を与えられないと、ミュージカルが嫌いになってしまうと思うんです。初めて見るお客様にミュージカルを好きになってもらいたいしそれによって原作ファンの人達が見た事により、さらに!ゲームをもう一回、やりたい、アニメをもう一回観たいと思えるような舞台にしないと。せっかく、ゲーム、アニメと続いてきて、それから舞台があるので、作品、コンテンツもクレッシェンドしていってるんで、この作品が再演あるいは続編と続くようにしていかないといけない、大事な一発目なので、大切にしなきゃいけないなと。
「(ルパンは)自然にやっているのがかっこいいと思うキャラクターに出来ている」
ーーお初で、しかもミュージカル仕立て、アニメは観ましたが、ルパンのキャラクター、ルパンそのものがとても有名なキャラクターで、原作のルパンと、この作品のルパンとはもちろん、違いますが、やはり基本的にはかっこいいキャラクター、原作もかっこいい、この作品のルパンもかっこいい、ルパンじゃないけど、ルパン三世もかっこいいし。皆さん、ルパンに対してかっこいいイメージを持っていると思うんです。その超かっこいい役を演じることの難しさ。
良知:そうですよね(笑)。去年、宝塚歌劇団の振付をしたんです。そこで男役さんのかっこ良さを観て!お芝居の!踊りも観て!その時に凄い勉強になったんですよ!男が持ってないかっこ良さを!なるほど、こうするんだ〜っていう(笑)。椅子の座り方とか、何かに触れたりする仕草も『こうなんだな』っていうかっこ良さ。今回、ちょっと取り入れられるかな?あとはカルディア役の長谷川さんが、男装をするお仕事もしているので〜彼女からもかっこ良さを学びたいなと。でも、かっこいいだけを追求しすぎるとなんか、クサいだけになっちゃう(笑)。それは求められてないなと思ったんですよ、アニメ観たときは……くさくはないんです。自然にやっているのがかっこいいと思うキャラクターに出来ていると思ったので、じゃあ、それってなんなんだろうって思ったら、その中にヒントがあった。アニメの中に。可愛かったり、キュートにみえるんですよ、ルパンが。でも、かっこよく、カルディアの前にいるときはちょっとあまくなるっていうか(笑)。今回も可愛い、面白いっていうのを注目して、吉谷さんと作っています。それは、あまりにもルパンとかけ離れないように、今、微調整中。振り幅としてはやりきるぐらい、やってみようという感じで、面白いシーンを作っています。それを本番までに、どんどんルパンに寄せていく作業もしていこうと。それによってルパンのかっこ良さだったり、弱さだったり、カルディア、ヒロインがいなくなってしまったことによっての弱さだったり、原作よりもデフォルメしている部分で、そういうことによってお客様がキャッチ出来るようにしていく作業をしています。
ーーみんながよく知っているキャラクターなだけに。アニメ観た時に軽妙洒脱な印象もありますね。
良知:うん。本当に仕草ひとつから演出でいろんな、マジックとまでは言いませんが、そういう要素をね、入れようとしているので、仕草ひとつひとつがかっこいいのはもちろんですが、それを簡単に出来るようにしないと。もっと色々と出来るんじゃないかな?と思います。実際に衣裳を着たりしてもっとコレ出来る、あれ出来るっていうのがあると思いますね。
ーーシルクハットもね、紳士っていう感じ。
良知:ジャケットもね。『どう見せるか』っていうことですね。うん。そこを考えていかないと。セットはシンプルに作られているんですよ。映像は使わない.役者は板についてないといけないし、それを武器にしたいですね。吉谷さんがそうしたいということで『じゃあ、どうするか』っていうのを考えています。ブロードウェイもシンプルなものが流行っていますね。
ーー話題の「ハミルトン」とか。
良知:「スパイダーマン」は映像使ったりフライング使ったりしてましたが、「アナと雪の女王」とかはシンプル、映像は使わない、「なるほどな」と。今回の作品も映像を使わない分、きっちり、くっきりやろうかと思っています。
ーーそこは本番までに。さて、お決まりの公演PRを。
良知:ゲームから始まり、アニメにもなって、舞台化……こういう形で続いているのは、凄く愛されている作品だからだと思うんです。愛されている作品だからこそ、大切に演じてつくりあげないといけないなと思うんです。楽しみにしているお客様のためにも丁寧に丁寧に!責任を持って創り上げたいと思います!本番までにどんどんつきつめたものをステージの上で、見せられるように頑張りますので。1人でも多くのお客様に観てもらいたいです。今回、東京と大阪公演もあります。お客様に観て頂いて感動して頂けたら再演なり、続編なりでルパンが帰ってこられるように!やっていきたいです!ご期待ください!
【公演概要】
ミュージカル「Code:Realize ~創世の姫君~」
[東京公演]
期間:2018年5月17日(木)~20日(日)
会場:シアター1010
[大阪公演]
期間:2018年5月26日(土)~27日(日)
会場: 森ノ宮ピロティホール
[キャスト]
アルセーヌ・ルパン役:良知真次
カルディア役:長谷川愛
エイブラハム・ヴァン・ヘルシング役:秋沢健太朗
ヴィクター・フランケンシュタイン役:仲田博喜
インピー・バービケーン役:鷲尾修斗
サン・ジェルマン役:滝澤諒
フィーニス役:星元裕月
エルロック・ショルメ役:君沢ユウキ 他
演出:吉谷光太郎
脚本:浅井さやか
音楽:tak
振付:MAMORU
原作:オトメイト(アイディアファクトリー/デザインファクトリー)
原作協力:Code:Realize PROJECT
企画・プロデュース:4cu
制作:ポリゴンマジック
主催: MUSICAL Code:Realize PROJECT
©IF/DF ・ MUSICAL Code:Realize PROJECT
公式サイト;http://musical-coderealize.com/
公式Twitter: https://twitter.com/codereamu
文:Hiromi Koh