2020年8月21日(金)~23日(日)まで公演が予定されているVR能『攻殻機動隊』、3月26日(木)にプレ上演舞台挨拶が開催された。
VR能とは様々な最先端技術を駆使して仮想現実空間を再現し上演される能舞台で、日本が世界に誇るSF漫画の最高傑作、「攻殻機動隊」を能で表現!
演出は舞台「ペルソナ」シリーズや舞台版「攻殻機動隊 ARISE」、AKB 版「仁義なき戦い」など数々の実現不可能と思われる企画を成功させ てきた映画監督、奥秀太郎。脚本は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」や「BLOOD」シリーズなどの脚本で知られる藤咲淳一。映像技術は 舞台版「攻殻機動隊 ARISE」、3D 能シリーズなどで日本初の舞台での 3D 映像を開発してきた福地健太郎(明治大学教授)。VR 技術は国内の VR研究での第一人者 稲見昌彦(東京大学教授)。いずれも各分野での最先端を駆け抜ける第一人者が担当。さらに、出演は坂口貴信、川口晃平、谷本健吾等、実力・知名度ともに現在の能のシーンを牽引する観世流能楽師。世界初・本邦初の様々な技術と日本の伝統芸能の先鋒 とが高次元なレベルで融合し、攻殻機動隊の世界を再現した舞台芸術の未来を創造する。そんな最先端の世界を一足先にお披露目!
現代的な音楽、能らしい幽幻さをたたえながら、ゆっくりと浮かび上がる演者。能面は作品に合わせた特別なもの。アニメとは違ったテイストであるが、能面の和の品のいいテイストに素子らしいクールさが一つになった、全く新しい想像力溢れる能面となっている。ヒロイン素子、ゆっくりと、ゆっくりと舞う。脳と脊髄の一部を除く全身を義体化したサイボーグの女性・素子のクールさをそこはかとなく感じさせてくれる。SF的なテイストと能独特の幻想的かつファンタジックさが舞台上に融合する。そして一瞬、消える。光学迷彩がリアル舞台上で観られる、しかも肉眼で!
実はこの実験的な能は2016年に遡る。能×3D映像公演「幽玄 HIDDEN BEAUTY OF JAPAN」、3Dメガネをかけての鑑賞だったが、目の前に現れるという感動と驚き。しかも立体的で手を伸ばせばそこに”いる”という感覚。それから2017年には平家物語「熊野」「船弁慶」、特に弁慶のエフェクトは斬新であった。そして2018年の3D能エクストリーム、スペクタクル3D能「平家物語」と繰り返しチャレンジをし続け、今回、さらなる”進化形”とも言える”VR能”、しかもVRともなれば特殊なゴーグルを観客が装着して観るわけなのだが、これが肉眼で!映像技術の高さを見せつけられた。舞台芸術のさらなる発展、演者のアナログな演技に最先端の技術を組み合わせて、全く新しいものを構築する。それを能の古典演目ではなく、SFの世界を描いている「攻殻機動隊」、お披露目なので、ほんの5分ほどのパフォーマンスであったが、21世紀らしい、新しい舞台であった。
それから福地健太郎(明治大学教授)、稲見昌彦(東京大学教授) 、演出の奥秀太郎、そして観世流能楽師の坂口貴信、川口晃平、谷本健吾、大島輝久が登壇した。実は3Dの時もそうだが、演者側からはもちろん、自分のパフォーマンスが観客にどう見えているかはわからない。能は型が決まっており、当然制約は多い。それは長年の歴史の中で積み重ねられ、余分なものを排除し、そのスタイルが確立された。観客の想像力に委ねられている部分も大きいが、そのシンプルかつ優雅な動きは世界でも日本の伝統芸能として認められている。一方、映像技術は進歩し続けており、全てが自由、いや技術の革新が進めば進むほど自由度が高くなる。4人からは「挑戦」「全てが新しい」「未知の体験」という言葉が出た。VR技術の稲見昌彦は「実は『攻殻機動隊』の大ファンなんです。こういう日がきたことは非常に嬉しい。現実と電脳、我々の現実世界とあの世の世界・・・・複数の世界をつなげていく糸としてのテクノロジー。」と語る。大ファンだからこそ、舞台上で光学迷彩など原作で登場するテクノロジーを舞台上でリアルで出したい気持ちが実現の原動力。3D技術の福地健太郎は「(観客に)メガネをかけさせたくなかった」と語る。VRのゴーグルをつけての体験は実は一部のネットカフェでできること、昨今珍しくない。しかし、特殊なゴーグルをつけずにVR、ここが注目ポイントだ。「30年前に原作が登場しましたが、『攻殻機動隊』は自分にとってのバイブル。この作品で描かれていること、そして現在のテクノロジー、それと日本の伝統芸能である能、『攻殻機動隊』の世界観を表現するのに、この能を組み合わせる、そして実現させること。今回は何かを説明する以上に想像力を使ってイメージを膨らませていただく、見た方それぞれのイメージが膨らんでいく・・・・・・・いろんなことをイメージできるものを」と語る。福地健太郎は「毎回、奥監督と一緒にやってますが・・・・・『今回VRやるたいと、お客様にメガネをかけさせたくないと・・・・さあ、困ったぞと。現実にあることを重ねるだけじゃなくて何かを引いていく、引き算の演出が注目されてしかるべきだ』とということをずっとおっしゃってて・・・・・・・そして『攻殻機動隊』という作品が現実と電脳空間の出来事があやふやになっていてどちらなのか区別できなくなっている、そういう作品です。そこで現実仮想空間、つまり現実と仮想が渾然一体となっている世界観、これが受け入れられやすい、面白いものができるかもしれないと」とコメント。
また700年続いた能がこれからも脈々と続いていくためには新作、しかも全く新しい作品を創造することは大事なこと。映像と舞いの融合、化学反応からさらに新しいものが生まれる。8月の公演ではさらなる舞台を観客に提示してくれるに違いない。
【概要】
日程・場所:2020年8月21日(金)~23日(日) 世田谷パブリックシアター
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KC デラックス刊)
出演:坂口貴信 川口晃平 谷本健吾他 観世流能楽師
演出:奥秀太郎 / 脚本:藤咲淳一
3D 技術:福地健太郎(明治大学教授) / VR 技術:稲見昌彦(東京大学教授)
プロデューサー:神保由香 盛裕花 / 製作:VR 能攻殻機動隊製作委員会
公式サイト:http://ghostintheshellvrnoh.com/
(c)士郎正宗・Production I.G/講談社・VR能攻殻機動隊製作委員会