本多劇場 next 「DISTANCE -TOUR-」が開幕した。前回は無観客で配信というスタイルをとったが、今回は客席に観客を入れて、の上演となる。配信は前回と同様に継続して行う。また、好評につき、8月9日13時に追加公演も決まった。阿澄佳奈×藤原祐規×吉岡茉祐の朗読劇となっている。
初日は松井玲奈と清水宏。劇場の清掃員は前回と同様に2人、川尻恵太と永島敬三。
舞台上には黒板やら脚立やらがおいてある。部分的にツタがからまっている。時間になり、時計の音が響く。スクリーンに映像、下北沢の風景、本多劇場、カメラは進んでいく、お客様目線、検温、消毒は当たり前、そして客席に入る。
舞台は暗転し、登場したのは2人の清掃員、掃除している。これは6月の公演と同じパターン。「どいて!」「何?」「DISTANCE!」、今はなんでもかんでもDISTANCE。「今は仕方ないんじゃない?」「(演劇に出会えるのは)いつになるんだろうね」、全てにおいて距離、DISTANCE。劇場に行こうと思う気持ち、人との距離(物理的にも心理的にも)、などなど。そんな2人の会話はまさに”今”。
そして暗転し、一つ目の物語が始まる、登場したのは白衣を着た女性(松井玲奈)一人、PCを見ている。今、彼女はリモート授業を行なおうとしている。PCに映っている学生(客席からは見えない)に向かって「あなたが石川さんね」「そこ、『えー』じゃない」などと言ってる。PCの画面を想像してみると・・・・・可笑しみがこみ上げてくる。「見えますか?」と画面に向かって叫ぶ女性。去年は考えられなかった光景だ。”趣味は本当に欲しいものを探すこと”と白衣の女性。
そしてそれが”わからない”と言う。時々画面に映っている学生に向かって叫ぶ「空気読んで」(リモートで果たして空気読めるのか?)など、クスリと笑えるセリフが。ぬいぐるみを手にするもすぐに首がもげたり、なかなかにシュールな光景が続く。女性はかつて付き合っていた男性から”誕生日に欲しいものは?”と聞かれた体験を話す。「思いつかなかった」と語る。そして「そこそこ欲しいものはイヤリング」といい、なぜか手にはイカリング(イカの胴体を唐揚げにしたもの)。黒板に文字を書く。「イヤリング」”ヤ”の字を走り書きすると”ヤ”なのか”カ”なのか、確かにわかりづらい!間違えやすい!それから次々と”手書き文字にすると間違えやすいもの”を書いていく。可笑しみがこみ上げてくるのと同時に共感もできる。
「人は完璧じゃなくっていいんです」と白衣を着た女性は言う。そして”本当に欲しいもの”とは・・・・・・。それは何か。哲学的で普遍的。ドキリとした後にちょっとホワッとするエンディング。川尻恵太書き下ろしによる新作、タイトルは「夏間麗のリモート授業」。
そしてまた、清掃員2人。片付けながら会話する2人、そして2つ目の物語が始まる。コロナに関するニュースのアナウンス、テレビで聞いた内容、時系列順に流れる。中国・武漢で発生したこと、船内での集団感染、などなど。生々しく、かつ鮮明だ。
三つ編みの女性(清水宏)、ファッションはダサめでチープ、カバンを斜めにかけている。「2020年に新型コロナウイルスが流行った」と早口に言う。発言内容からして演劇をやっている、しかも小劇場中心に活動していた様子。「役者さんは消毒して〜」「密にならないように」と叫ぶ。ややオーバーアクション気味なところが笑いを誘う。「え〜〜〜緊急事態宣言!?公演中止!?」と大きな声で。この時期、規模の大小にかかわらず、様々な公演が軒並み中止に追い込まれた。「演劇は生きてきた証」と言ってみたりする。そして「演出助手だけじゃなくて女優もやってるのよ」と”小規模演劇あるある”。「こんなんで終われない」「今、やらなかったらないんだよ!」と思っていることをそのまま口にする、しかもマシンガントーク。
彼女の心の叫び、そして本音。「演劇が誰かを助けたことがあるのか」と叫んだそのあとで自分の演劇体験を語る。下北沢で演劇、「なんかキラキラして・・・・・・」たまたま隣に座った知らない人と飲みに行った経験を語る姿は楽しそうだ。「あんなに好きだったのにな〜」とつぶやく。そして「愛の賛歌」を歌う。とにかく切なく、愛おしい。タイトルは「拝啓あこがれの演劇さま」。
最後に再び2人の清掃員、空気中に消毒スプレーをシュシュシュ!最初と同じような光景だが、2つの物語の後のなんとも言えない閉塞感の中に見える一筋の光。完全に閉じられているわけではなく、距離もあるが、近い将来変わる可能性もある。よくなるのか、その反対なのか、誰にもわからない。後歌はどこか心地よいメロディー、DISTANCEは心で感じるもの、と歌う。心の持ち方でDISTANCEは変わる。その心とは・・・・・・きっと後でわかるはず・・・・・かもしれない。はっきりしない結末が温もりに満ちている。
<松井玲奈 コメント>
初めての一人芝居で緊張しましたが、楽しく演じさせていただきました。お客様の前でお芝居ができる日を心待ちにしていたので、このような機会をいただけて嬉しさを感じています。
以前と同じ様にというのは難しいかもしれませんが、配信など新しい形で舞台を楽しんでいただけたらと思います。
<清水宏(俳優·スタンダップコメディアン)コメント>
お客さんにまた劇場に来てもらうことと、オンラインで演劇に何ができるのか。二つの宿題の新しい答えを探すDISTANCE。参加できて嬉しいです。色々な演劇の姿を見て欲しいです。
<永島敬三 コメント>
6月1日に本多劇場で『DISTANCE 』の第一弾に出演させてもらって、その時は劇場の再開を一緒に喜ばせてもらって、希望を強く感じました。あれから2ヶ月経ち毎日のように世の中は変わっていっていますが、あの時の希望がどんなに擦り減らされても、またこうやって第二弾を開催する為に皆さんが慎重に対策をしつつ工夫をしながら集まって、自分もまたこの場に呼んでくださったことを、今回は前回よりも少し控えめに喜びたいと思います。常に安全第一で、その上で来てくださったり見てくださったりするお客様の前では思い切り楽しんで、最後まで臨みたいと思います!
<本多劇場グループ総支配人・本多愼一郎:インタビュー>
https://theatertainment.jp/japanese-play/56043/
<物語・構成及び安全対策について>
■物語
ここには昔、劇場があったー
荒廃した劇場に清掃員がいる。 彼らは「演劇」というものに触れたことはないが、 「演劇を復活させるために、劇場を掃除して欲しい」と依頼を受けてやってきた。 これから復活する演劇とはどういうものなんだろうか? かつて演劇が行われていたという場所で、彼らは演劇に思いを馳せる。 そして、それに呼応するかのように、劇場の記憶が呼び起こされていく。
■オムニバス形式
メインキャストは各回1名のみ、そのステージのみの出演になります。 ※各日の上演時間は35〜65分程度を予定しております。
■安全対策
・キャスト、スタッフともに、ソーシャルディスタンスを確保した状態で上演いたします。 ・キャスト、スタッフともに、制作期間から本番日にかけて毎日検温し、制作者による管理を行っています。 ・キャストは本番時間外、スタッフは常時マスクを着用いたします。 ・開演直前まで、および終演直後から屋外に通じる会場扉・玄関を開放し、大規模な換気を行います。 また、並行して外気導入での空調による場内換気をおこないます。 ・開演前、および終演後には舞台上の消毒作業をおこないます。 ・場内は建築物環境衛生基準により相対湿度を40%~70%に保つようにしています。 ・劇場内や附帯施設等で手を触れやすい箇所、扉、手すり、自動販売機につきましては毎日定期的に、 除菌用アルコール等による拭き掃除を実施いたします。 他、第一弾公演で実践した内容を別途添付いたします。 これらを元に、第二弾をより安全度の高い環境で実施いたします。 尚、これらの情報は劇場・制作関係者に向けて公式サイトからシェアいたします。
<演劇再開に向けて 観劇スタイルの模索をする「DISTANCE lab.」>
全国公立文化施設協会から「新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」が発表され、 劇場での演劇再開に向けて、より実践的な動きが各所で始まっています。
ただ、ソーシャルディスタンスを確保した状態での興行は、その確保できる客席数から 収支が成り立たないという命題を抱えています。
この問題を段階的に解決していくべく、観劇スタイルの模索をおこなうのが 「DISTANCE」の別働企画、「DISTANCE lab.」になります。 具体的には無観客配信からスタートし、客席稼働が30%、50%、70%、そして100%になる過程を 社会情勢とコロナウイルスの科学的根拠を元に、テクニカルスタッフと共に丁寧に進めて参ります。
現時点で、正解がわかっている人は誰もいません。
そして、100%安全という事実もありません。
だからこそ、慎重に手探りの中、答えに近づく作業を行ってまいります。
<公演概要>
本多劇場グループ next 「DISTANCE -TOUR-」
■日程&公演会場
東京公演 2020年8月5日(水)〜11日(火) @下北沢 本多劇場
北九州公演 2020年8月15日(土) @北九州芸術劇場 小劇場
豊橋公演 2020年8月20日(木) @穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
札幌公演 2020年8月26日(水) @演劇専用小劇場 BLOCH
■企画・総合監修 川尻恵太・御笠ノ忠次
■出演者(五十音順)
【東京公演】
池田純矢 井上小百合 入江雅人 伊礼彼方 エレキコミック 小沢道成 小林顕作 清水宏 春風亭一之輔 豊永利行 街裏ぴんく 松井玲奈 峯村リエ 宮崎吐夢 矢野奨吾 山谷花純/ 川尻恵太 永島敬三
【北九州公演】
小沢道成 寺田剛史/ 川尻恵太 御笠ノ忠次
※北九州・豊橋・札幌公演の詳細は近日発表予定
■上演時間
35〜65分を予定 ※公演日&演目により、多少前後いたします
■料金 ※東京公演は、ステージの演目数によって異なります (東京)
1演目 公演回(8月7日、8日夜、9日夜、10日)
劇場公演 ¥4,500- 配信公演 ¥2,500-
2演目 公演回(8月5日、6日、8日昼、11日) 劇場公演 ¥5,500- 配信公演 ¥3,000-
(北九州・豊橋・札幌)
劇場公演…前売当日 3,500円(全席指定) / 配信公演…前売当日 2,500円
■チケット発売
(東京公演)
キャスト&オフィシャル先行販売(e+ / Streaming+)
7月22日(水)12:00〜7月26日(日)18:00 ※劇場公演のみ、抽選式。
8月1日(土) 12:00〜 一般発売開始
※劇場&配信公演、先着式。
チケット販売終了時間:開演後20分まで
<配信に関するお知らせ>
・上演時間は35〜65分を予定しております(演目により多少前後いたします)
・オンタイムのライブ配信のみになります、アーカイブ・ディレイ配信はございません。
・途中入場、退出ともに可能です。
・事前に視聴環境&画面のテストが可能です。詳しい方法は公式サイトをご覧ください。
※北九州・豊橋・札幌公演は8月上旬発売開始予定
■特設サイト
http://distance.mystrikingly.com
■スタッフ
技術監督:寅川英司 照明:大波多秀起(デイライト) 音響:大木裕介(SoundBusters) 舞台監督:櫻井健太郎 松澤紀昭 制作:高橋戦車、半田桃子、矢崎進 演出助手:相田剛志 衣裳:ヨシダミホ
共催:ニッポン放送
映像:ワタナベカズキヘアメイク:武部千里 宣伝美術:魚住和伸
主催:本多劇場グループ/DISTANCE製作委員会
舞台写真撮影:和田咲子