東京藝術大学(学長 澤和樹)は、 3月以降、 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、 お客様を招いた演奏会を中止・延期してきたが、 8月2日、 前日に客員教授に就任したばかりの さだまさしさん をゲストに迎え、『和樹の部屋 特別篇~新しい日常へ~May new days come as soon as possible. 』を開催し、 分野を超えて若手芸術家たちが集結。
このコンサートは、 「新しいカタチの演奏会」のあり方として、 定員1100名の奏楽堂に、 限定で67名の観客。 演奏会の客席空間演出や演奏とアニメーションとのコラボなど、 音楽のみならず、 美術や映像などの分野が集結し、 オール藝大で企画制作された。
例えば、 空いた客席に座ったのは、 自画像。 東京藝大美術学部の前身である東京美術学校の学生が卒業時に制作した自画像をデータ出力しパネルにしたもの。
コロナ禍での活動自粛により、 多くの芸術家が経済的な影響を受け、 特に厳しい状況に追い込まれている若手芸術家達。 その若手芸術家達へのエールを込め、 自画像が客席に。
今の若手芸術家と同じように将来への期待と不安を抱いたであろう巨匠たちが学生時代に書いた自画像。 明治、 大正、 昭和、 平成そして令和と、 大切に保管されてきた一つ一つの自画像が、 「コロナ禍でも、 芸術をとめるな。 芸術は死なない。」と応援します。 前列には青木繁(1882-1911)、 萬鉄五郎(1885-1927)、 佐伯祐三(1898-1928)ら巨匠の自画像が並びました。
(C)東京藝術大学
また、 観客席にはマスク姿の「平成伎楽団」(籔内佐斗司 大学院美術研究科教授プロデュース)が座り、 コンサート中頃には村田朋泰(大学院美術研究科修了生)監督・制作の「天までとどけ(作詞・作曲・うた:さだまさし)」アニメーションが上映され、 奏楽堂ホワイエには本学大学院映像研究科修了生の「マイ・エクササイズ」のゲームを展示しました。
(C)東京藝術大学
それぞれの企画制作には大巻伸嗣(美術学部教授)、 岡本美津子(副学長/大学院映像研究科教授)、 桐山孝司(大学院映像研究科長)、 熊澤弘(大学美術館准教授)らが加わり、 総合プロデューサーは箭内道彦(学長特命/美術学部教授)が務めました。
コンサートの休憩時には、 観客はソーシャルディスタンスを保ちながら、 ゲームや展示を楽しみ、 「今までにないコンサートと感じる」「東京藝大の奥深さを感じた」などといった反応がありました。
■澤和樹氏(東京藝術大学長) トークコメント
「コロナ禍で、 美術館やコンサートホールが閉鎖。 予定していた展覧会、 音楽会は延期又は中止となり、 若手芸術家を中心に経済的にも不安定な状態が続いています。 在学生・卒業生が芸術活動を続けていくために、 若手芸術家と一緒に新しい芸術の在り方を考えていくこと、 新しい作品に希望と金銭的余裕をもてるように後押しをすることを進めていきたい。 」
■さだまさし氏(東京藝術大学客員教授) トークコメント
「困っている若手芸術家を支援していきたい。 また、 コロナ禍や災害などで傷つく人にとって、 音楽は微力であるかもしれない。 しかし、 芸術は人を笑顔にさせたり、 人の涙を誘ったり、 心に染み入る。 そして、 それを待っている人がいる。 」
東京藝術大学は、 2020年6月に「東京藝術大学 若手芸術家支援基金」設置、 2022年3月末まで寄附を受け付け、7月末に終了したクラウドファンディングでは、 延べ894人、 総額36,522,000円の支援が集まった。この支援金を原資として、 若手芸術家の支援を行われる。
新型コロナウイルス感染症緊急対策 東京藝術大学「若手芸術家支援基金」
http://www.fund.geidai.ac.jp/projects/
※さだまさし氏の客員教授について
さだまさしさんの豊かな経験と見識は、 東京藝術大学と社会を繋ぎ、 文化における新たな局面を創造しようとする本学の活動に大きく寄与するものと考え、 8月1日から東京藝術大学客員教授として迎えた。
※本学所蔵の自画像について
近現代の美術史を語る上でも大きな魅力と意義があり、 2020年9月に大学美術館で開催される「藝大コレクション展2020」でも多くの自画像が特集展示される。
https://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2020/collection20/collection20_ja.htm