扉座研究所Special夏期講座レポ。 体を使ったレッスン 横内謙介×三木眞一郎スペシャル対談も実施!

8月8日から10日まで扉座研究所では、スペシャル夏期講座が開催された。
扉座の講師陣によるレッスンと横内謙介三木眞一郎によるレッスンが開催された。この二人からレッスンを受けること自体が稀有な体験。横内謙介のレッスンは「活き活きと演じるために、『五感を生かす』『台詞を聞く』こと、『アクションとリアクション』を重点に置き、実際に演じてもらいながら、解説・指導する」。三木眞一郎のレッスンは「実際に演じてもらいながら、演じるために、台本から読み取れること、動画から読み取れることを解説・指導する」、どちらも実践にうつすための重要な内容で濃密なレッスンとなることがうかがえる。講座参加者は10代~30代の10数名。

1日目  8月8日(土)
10:10~12:00  鈴木里沙によるレッスン
・ストレッチ(怪我の防止、ウォーミングアップ)
・円になって、色々な歩き(キャラクター等による変化)→前の人の歩き方の真似
観察力と想像力の訓練になる。
・リズムとステップ及びステップを使ったダンス
リズム感や体の使い方の訓練。

13:00~15:00  横内謙介による演技レッスン
・全体を3グループに分け、台本を使用した演技実技レッスン

15:30~17:30  三木眞一郎による声優レッスン
・アニメ動画と台本を使用しての実技レッスン→アフレコ録音
実技中はすぐに講師からの示唆や指導が入る。

2日目  8月9日(日)
10:00~12:00  串間保彦によるレッスン
<インプロ(即興演劇)>
・2人一組 椅子を用いた即興劇
・4人一組 即興の中で自分に与えられた台詞を言うシアターゲーム
シアターゲームは演劇のワークショップでは、ほぼ必ずと言っていいほど取り入れられている。身体能力、共感性やコミュニケーション能力などの改善・向上に効果があり、演劇のみならず様々な場所で行われている。ゲーム前提なので、リラックスして楽しむものであり、それによって高いパフォーマンスを引き出すことができる。また様々なアイディアが求められるので創造力を養うことも出来、人の立場を思いやる共感性が磨かれ、また等身大の自分に気づくこともできる。また総合的にものを見る力や自分の考えや思いを伝えるために言語・非言語能力のアップにもつながる。

13:00~15:00  横内謙介による演技レッスン
・昨日の続き。より細かく指導

15:30~17:30 三木眞一郎による声優レッスン
・昨日録音したものを聞き、講師によるコメントと解説。
・昨日の動画と台本を用いて、違う役を演じる→コメントと解説→アフレコ録音
要所要所で三木眞一郎が助言、示唆
19:00~21:00  premium対談 @すみだパークシアター倉

3日目  8月10日(月・祝)
10:00~12:00  田中信也によるレッスン
・2日間やってきたテキスト(演劇・声優)を用いての補講

13:00~15:00  横内謙介による演技レッスン
・4チームに増やし、「演出家」からのリクエストを受けての演技実技レッスン
・質問コーナー

15:30~17:30  三木眞一郎による声優レッスン
・昨日録音したものを聞き、講師より感情の入れかた芝居の仕方のアドバイス。
・マイク前に立たず、改めて読み合わせ
・改めてマイク前に立って実技→解説、アドバイス
・質問コーナー

この夏期講座の目玉は、2日目に行われた横内謙介と三木眞一郎のスペシャル対談。講座の一環として受講生はその場で話を聞くスタイルをとったが、堅苦しいものではなく、二人ともラフな服装で臨んだ。

横内謙介は「友人で声優の三木眞一郎さんです」と紹介し、和やかな雰囲気で始まった。扉座の本公演がなかなかできない状況であるからこその夏期講座。そして特別講師として三木眞一郎を招いた、という次第。三木眞一郎は「断れないし」と笑う。こんなやり取りも親しい間柄だからこそ。そしてベテラン声優らしい話、出来上がったアニメは効果音や音楽があったりするが、アフレコの現場はセリフしか聞こえない状況。難しい仕事だ。最近ツイッター(https://twitter.com/miki_shin318)を始めたことなど、ざっくばらんにトーク。

そして昨年から始めた「みきくらのかい」(https://twitter.com/mikikura_no_kai)、今年は劇場で行うのではなく、悩んだ末に配信というスタイルを取った。戯曲は扉座の傑作「曲がり角の悲劇」、前回と同じく三木眞一郎と江口拓也、同じ声優事務所81プロデュースの先輩、後輩コンビ。「言葉に愛情を注いでくれるのは嬉しい」と横内謙介がいえば「リーディングは難しい」と三木眞一郎、さらにリーディングについては「役者として立っている」とコメント、あくまでも演劇、そして「想像してもらう余地がある」と語る。このリーディングを間近で観た横内謙介は「新鮮だった」と感想を。

途中で「みきくらのかい」の”くら”の方、倉本朋幸が参加。三木眞一郎が共演者であり、後輩の江口拓也に最初に出会った話などを披露した。そして、三木眞一郎が”声優の歴史”を少し語った。海外ドラマや洋画等のいわゆる外画の日本語吹替版が数多く放送された1960年代、オールドファンには懐かしい熊倉一雄さんの名前も挙がった。
横内謙介から声優の演技について「絵を見る、そこからキャラを演じるにあたって、考える?」と素朴な質問。それに対しての三木眞一郎は「あんまり考えてない」と即答。まず、原作を読んで自分が任される役、書かれているセリフ、読んでいるうちに「音が聞こえてくる」そうで「これだ!」と三木眞一郎。率直に感じたものを反映させる、想像する力が問われそうだ。そして画面に演じるキャラクターが写ってない時の、そのキャラクターの人生を考えるそう。「中に入っちゃうんです」と三木眞一郎。

また、ちょっとした日常の中にも演じるヒントがある、ということで横内謙介がなんと電車の雑誌の中吊り広告を出してきた。電車に乗ればいやでも目に入る広告、真っ先に伝えたいことは赤い大きな字で書かれており、見出しは絶妙な配置になっており、思わず、じっと見入ってしまうのはよくあること。それを黙読するのではなく「脳内で音にする」と三木眞一郎。日々、そして演じることの基礎トレーニングはいつでもどこでもできる、ということ。それから受講生から質問、「緊張のコントロールは?」の質問に「(コントロール)しない」と回答。ありのまま、ということであろう。
最後に三木眞一郎から若者へのメッセージ「声優であろうと俳優であろうと日々、起きていること、記憶していること、五感で感じたことを!辛いことも無駄じゃない」と締めくくり、2時間(途中換気)に及ぶ対談は終了した。

扉座HP:https://tobiraza.co.jp
取材・文:高 浩美