「ウェールズの赤竜〜アーサー王伝説〜」が開幕した。
アーサー王の物語は映画や舞台などで知られているが、5世紀末にサクソン人を撃退したとされる英雄アーサーは、ブリトン人(ウェールズ人)の間で古くから伝説として語り継がれており、アーサーの直系の子孫のウェールズ人が残した『マビノギオン』はそれを現代に伝えるほぼ唯一の史料。
アーサーの生涯がはじめてまとまった形になったのは、1136年頃に書かれた『ブリタニア列王史』。歴史書の体裁を取っているが、非現実的な部分が多く、今日の伝説上の人物としてのアーサー王のイメージはここから始まっている。詩人ウァースによる『ブリュ物語』(1155年頃)があるが、それにウェールズ人と共通の文化を有するブルターニュのブルトン人などを経由して、アーサーの伝説は西ヨーロッパ全体に伝播してゆく。
中世後半は騎士道が花開いた時代、アーサー王伝説は、「ブルターニュもの」と呼ばれる騎士道文学の題材となり、フランスを中心に各地でさまざまな異本やロマンスが作られ、その過程で本来関係がなかったエピソードが円卓の騎士の物語として徐々に組み込まれた。ランスロットやトリスタンとイゾルデ、パーシヴァル、聖杯探求、石に刺さった剣、円卓、キャメロットなどは、この時期に導入されたもの。1470年にはウェールズ出身の騎士トマス・マロリーがこれらを使用して書き上げた『アーサー王の死』はその決定版、現在はマロリーの作品がアーサー王物語を代表する作品となり、15世紀末の出版業者ウィリアム・キャクストンの手による印刷本と、1934年に発見された中世写本(ウィンチェスター版)により現在に伝承されている。第二次大戦後は、映画や小説、ドラマ、舞台など様々なメディアで物語が作られており、また、携帯アプリゲーム『Fate / Grand Order』の第6章にはアーサー王の登場人物が多数出てきたりするが、このように様々な物語を紡いでいけるのが、このアーサー王伝説の多様さ。
ここでは王になる宿命を持ったアーサー(一ノ瀬竜)、貧民街で剣の腕前が確かなランスロット(正木郁)ら、気のいい仲間たちと共に運命に翻弄され、思わぬ出会いや危機に遭遇しながらも、まっすぐに生きる物語となっている。円卓、聖剣、騎士、そして魔術も出てきてファンタジー要素もたっぷり。ところどころにオリジナルなお笑いシーンもあり、肩の凝らない娯楽エンタメに仕上がった。ロット王(寿里)の策略、モーガン(高本学)の素性、アーサーの定められた運命、ロット王の息子・ガヴェイン(白又敦)の想い、過去の記憶を失ったとされるマーリン(糠信泰州)、『ブリタニア列王史』では、ウェールズ南西部の小国ダヴェドの王女が、夢魔に誘惑されて生んだ子とされている。よって不思議な力を持っており、予言をするのである。このように元のアーサー王伝説を紐解くと、今回の舞台のキャラクター設定も”なるほど”と頷ける。
見所はラスト、ロット王VSアーサーたちの戦い、暗躍していたモーガン、その正体、マーリンの力、アーサーの成長、そして怒涛のように結末に向かって進んでいく。友情、諦めない心、ちなみにアーサーを温かく見守るエクター神父(山﨑雅志)は原作ではエクター卿、アーサー王の養父という設定になっている。
物語終了後は、エクター神父の”前説”、ここで諸注意事項、応援は”声”ではなく、拍手、ペンライトで。舞台上ではスタッフさんがLIVEのために舞台をセッティング。そしてお待ちかねのLIVEパート。最初は忠誠 Loyalties(ちゅうせいろいやるてぃーず)、二番目はOfficial 愛飢オーガニゼーション(おふぃしゃるあいうえおーがにぜーしょん)、ラストは薫風☆Kumpuuu(くんぷー)。雰囲気はもはやライブハウスのノリ、声は出せないが、大きな拍手と熱い視線で応援したい。
上演時間はLIVEパートを含めて約2時間ちょっと。ライブ配信(詳細は公式HP:http://ana-den.com/)もあり、しかもアーカイブ配信も設けてあるので、劇場に行かれない!という方は是非!劇場で観る方もagain!
<第1部あらすじ>
六世紀初頭、ブリタニア国(今のイギリス)のウェールズ。強い風が吹く岩だらけの草原に、一振りの 剣が突き立っている。その剣を抜いた者はこの国の王となり、強大な力を得るという言い伝えがあった。
青年アーサーと、彼の仲間となる「円卓の騎士」たちの運命的な出会い。やがて彼らの前に姿を見せる、邪悪な意志 を持った恐るべき敵。それぞれの抱える過去と、歩むべき未来が、激しく交錯する。
彼らが古代ケルト人から受け継いだものとは? 虚々実々の駆け引きと、空前絶後のバトルの果てに、彼らは何を失い、何を手にするのか? そして戦いの場は、コーンウォールの海を望む荒野へとーー。
いま、新たな「伝説」が生まれる!
<第2部:LIVE>
ユニット毎に分かれて、LIVE 形式で会場を盛り上げます。
ユニット1 薫風☆Kumpuuu(くんぷー)
一ノ瀬竜 as アーサー /正木郁 as ランスロット /糠信泰州 as マーリン
ユニット2 忠誠 Loyalties(ちゅうせいろいやるてぃーず)
畠山遼 as トリスタン /北乃颯希 as パーシヴァル /前田陸 as ケイ
ユニット3 Official 愛飢オーガニゼーション(おふぃしゃるあいうえおーがにぜーしょん) 高本学 as モーガン /前田隆太朗 as アグラヴェイン /白又敦 as ガウェイン /寿里 as ロット王
《公演概要》
日程・会場:
2020年8月19日(水)~8月24日(月) 新宿シアターサンモール
脚本:鈴木哲也
演出:米山和仁
〈出演者〉
一ノ瀬竜/正木郁/高本学 前田隆太朗/畠山遼/白又敦 北乃颯希/糠信泰州/前田陸 寿里 /山﨑雅志
公式ホームページ:http://ana-den.com/
公式ツイッター:@anadenstage https://twitter.com/anadenstage