東京文化会館が、 落語芸術協会とともに主催するシリーズ企画「創遊・楽落らいぶ」が9月9日実施された。 毎回多様な音楽家と落語家のコラボレーション、 音楽と落語の新たな魅力を発信し続けており、 本公演は、すでにVol.54。今回出演する落語家は雷門小助六。2013年、真打へ昇進し三代目「雷門小助六」を襲名。 30代にして、今年芸歴21年となるベテラン。
そして音楽家は、 ヴァイオリンの武田和代とピアノの中田亮子。 桐朋学園大学音楽学部からベルギーのブリュッセル王立音楽院へ留学。 ヨーロッパでの活躍を経て、 日本で演奏活動を続けている。
第一部は武田和代と中田亮子のミニコンサート。コンサート、”ミニ”なので、シンプルかつ馴染みのある楽曲、まずは『愛の挨拶』、エルガー作曲、初期の作品で特に女流演奏家に好まれる小品、よく知られた優美な旋律が心地よい。トークを挟んで『愛の喜び』、クライスラー作曲、ピアノとヴァイオリンのための作品。親しみやすい音階、そしてウインナー・ワルツを取り入れた晴れやかな作品、続いて日本の曲のメドレー(懐かしめの曲)と続き、最後はいずみたくの『見上げてごらん夜の星を』。1963年に坂本九が歌ってヒットしレコード大賞を受賞したが、もともとは1960年の同名ミュージカルの主題歌で、作詞は永六輔。多くのアーティストがカバーしている。
それから第2部、音楽と落語のコラボ、落語は『抜け雀』。小田原宿、夫婦で営業している貧乏な宿、そこに貧乏を絵に描いたような旅人が…案の定、金など持っているはずもなく、旅籠賃代わりに描いた雀が、なんと…。名工をたたえた名人噺である。音楽と落語のコラボレーション、常に演奏されているのではなく、ここぞという場面で音楽が入る、時には”劇伴”のごとくに、時には存在感を際立たせて、という趣向。そのさじ加減、奏でられるメロディライン、ピアノ、ヴァイオリンの音色で古典落語もポップな印象になる瞬間がある。雷門小助六の小粋な語り口で客席からは時節柄、控えめな笑い声が響く。音楽で作品世界を彩り、際立たせる。常連の観客が多い印象だが、落語に馴染みが薄い観客には音楽の力で落語がすんなり入ってくる。チケット代も1100円と手頃価格。次回は11月5日(6月19日の振替公演)、落語は『反対俥(はんたいぐるま)』、こちらは人力車が登場する明治・大正時代のお話、オチは落語家によって違うらしいので、こちらも期待。
【公演概要】
「創遊・楽落らいぶVol.54―音楽家と落語家のコラボレーション―」
(公演詳細情報: https://www.t-bunka.jp/stage/5736/ )
日時:2020年9月9日(水)11:00~12:00(10:30開場)
会場:東京文化会館 小ホール
落語:雷門小助六
ヴァイオリン:武田和代
ピアノ:中田亮子
第1部:ミニコンサート
エルガー:愛の挨拶
クライスラー:愛の喜び
日本の郷愁メドレー
他
第2部:落語と音楽のコラボレーション「抜け雀」
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化会館/公益社団法人落語芸術協会
共催:日本音楽家ユニオン/公益社団法人日本芸能実演家団体協議会[芸団協]
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
東京文化会館オフィシャル・プラチナパートナー:上野精養軒
公式HP:https://www.t-bunka.jp