森山未來によるリーディングパフォーマンス『「見えない/見える」ことについての考察』初のソロパフォーマンス全国ツアーが行われるが、それに先駆けて会見が行われた。
まず、主催者より、講演の概要が説明された。この公演は全国7か所にて上演される。公演は10月14日より横浜から始まる。
森山未來から挨拶、「こういう状況ではございますが、7か所、ツアーをさせていただきます。いろんなリスクがございますが、それは承知ですし、ちゃんと対策をさせていただきつつ、舞台芸術、舞台に関わらず、こうした表現に触れたいという欲求は変わらないと思います。これは、ここ数ヶ月感じてきたことでもあります。無事にツアーを成功させたいです」と語った。今、多くのライブエンターテイメントが少しずつではあるが、動き始めている。感染リスクはもちろん変わりはないが、対策を怠りなく行いながら、ゆっくりと歩み始めている。2017年に初演したが、この作品の創作のきっかけについて森山未來は
「東京美術館のキュレイターでもある長谷川さんと芸大の教授でもいらっしゃいますが、協力をしまして。どこでやるか、ということで東京芸大の中でやる、球形ホールというところでやりまして、本当に半円状の、球体になっていて。朗読する内容を話し合いながら、ジョセフ・サラマーゴの『白の闇』を。あとは、フランス人作家のモーリス・ブランショ作の『白日の狂気』、2つの作品…『白の闇』に関しては、まさしくパンデミックっていうんでしょうか、突然世界が闇になってしまった、そこから、人と人がどう関わっていくのか、というフィクションになっています。『白日の狂気』は散文詩的な、抽象的なものですが、僕が受け取った印象では、日々生きていく中で、内的な盲目性、すごく考察されていて考えている、という…いわゆる外的な要素として物理的な要素と盲目になりきる話と内面的に盲目であるという2つの話を交錯させたら面白いんじゃないかと。その球体を、まあ、言ってしまえば、目の中にいる、そういう印象をすごく感じていたので…それで立ち上がりました」と創作から2017年の上演までの経緯を語ってくれた。
それからツアーを行うことについては「2017年初演で、2019年やらせてもらい、こうして作品が継続してできることはありがたいことで、素晴らしいことです。今、2017年の時点で2020年にこうなるとは想像しなかったですね。パンデミックという言葉を使う必要はないかもしれませんが、今、世界中が置かれている状況、ある種の価値観が変動していますが、改めて、どういう風に生きていくべきか、この状況下でこの作品をやる意味、皮肉にも強く出てしまいますが」と語る。観客へのメッセージとしては「舞台芸術は興行的な部分ではやりづらいですが、映像作品とは異なり、その場所で、出会った人たちで、世界を共有するその強さが舞台芸術にはあるので、やるしかない、やらないことには。映像に変換しても、それはそれで楽しめますが、その場所、生、身近で触れ合うことしかできないものが存在することは、現在はこれがより強く感じること、共有、生で出会えさえすれば、それだけで大丈夫ではないかと(笑)、もちろんそれだけではなく、こういったコンセプト、パフォーマンス、体験できて。楽しみにしてください」と力強く。
コロナ自粛期間について、またコロナ禍においての過ごし方についての質問「3月11日前後から、リモートワークだったり、配信のパフォーマンス、実験的なこと。外に出れない、劇場も使えない、クリエイションは成立するのか、みたいなことは自分なりに考えていました。表現したいという欲求…強く感じました。劇場に赴いて観客がいて作品を完結させるということは、コロナでできなくなったという理由、人と人が出会う、それをどう構築していくのか、場所に赴くこと、その想い、どうやってその場を作ればいいのか、話し合ったり」と語る。感染防止のためには集まらないのがいいのはわかっているものの、やはり舞台パフォーマンスは、その一期一会が重要だ。
「本当に外に出れない、家で淡々と生活していました。リモート始まってから、家にいるのに仕事してる、もともとはそういうことはしないので、もどかしい(笑)」と自粛生活についてコメント。また2017年公演について「球体ホールという特殊な場所、だからこそという部分はありますが。言語というものでコミュニケーションをとる、作品を作ることだけではなく、身体というものを使って、どういったパフォーマンスができるのか、言語だけで情報をやりとりする作品作りだけじゃなくって、身体を用いることによって情報を、あるいは嗅覚や聴覚からの情報を、そういうどこかもう一個の感覚をコミュニケーション・ツールとして用いると言葉を超えたパフォーマンスができるのではないかと」と語る、森山未來らしい挑戦。「コンセプトがあって、それに対してどういう風に作ろうかと。コンセプトと作品の世界観に対する存在になるなと。言葉を多用しないパフォーマンス、あえて抽象的なものだったりしますが、作品を受け止める”媒介”として、できるかなと。ただ、それを考えながらやってるかどうかはわかりませんが。でも、そういう考えを持ちながらクリエーションを続けていき、パフォーマンスとして観客の前に出るとき、対話、いつも自分の位置を自分なりに捉えながら、コミュニケーションしてる感覚、そういう認識、今だから余計に強く感じるのですが、そういう時間は神聖」と語る。また作品についての創作過程についての質問が出た。
「美術館にあるような作品が作れないかな?というのがあって、最初は。30〜35分のパフォーマンス、朗読も含めてですが。10分か15分の休憩を挟んで、パフォーマンスを入れてもらって。作り方としては、朗読する2つの戯曲・・・・情報として聞く、表現する、見えないということから連想する、説明してもすごく抽象的ですが(笑)、『白の闇』は、フィクションとして、話としても完結しているので、そちらはストーリーとして把握しやすいかと。モーリス・ブランショ作の『白日の狂気』は、とても詩的な表現なので、行間がすごく多い。その隙間をどう埋めていくのか・・・・」と創作について言及。「見えない/見える」、現代は情報過多、難しい時代、森山自身も「判断するのが難しいですね」とコメントしたが、現代に生きる人間が誰しも抱えているのではないだろうか。また身体トレーニングに関する質問が出た。「普段はヨガをベースに自分でやってます。家でもやっています。トレーニングを意識的にやる部分もありますが、トレーニングしないとパフォーマンスができない、とメンタルで生きないようにしています。今、あるこの身体でやれることが発見できる、すごく可能性を信じてやっています。トレーニングしなきゃっていう恐怖観念にとらわれないようにしています」と語った。また、「ソーシャル・ディスタンス、そこに関する変更はもちろん出てくるかとおもいます。それを踏まえて、もっとこのコンセプトをより明確に。それは技術的なことなのか、表現的なことなのか、そこは今、”揉んで”います…あとは踊りを観るのは苦手という人でもお話が十分聞けるテキストは用意しています」と語った。最後に「ソロのパフォーマンスですが、一人で作り上げたという気はないです。スタッフ、みなさん、彼らとともに作った、舞台芸術の世界において、ここに美しさを感じます。プロセスもそうですが、観客と呼ばれる人々がいらっしゃる、その瞬間もそうですし、人との関わり合い、その中で生まれる芸術、だから、どのタイミングでできたかっていうのは…そういった人たちが『楽しい』って思う、劇場から出たときに風景が少し変わっていたり、そういう体験になればいいなと」と語った。森山未來のあくなき挑戦、どんなパフォーマンスを披露してくれるのか待ち遠しい。
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https://theatertainment.jp/japanese-play/62275/
【公演名】 「見えない/見える」ことについての考察
【日 程】 2020年10月14日(水)〜11月6日(金)
【会 場】 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール(神奈川県)
サントミューゼ上田 大スタジオ(⻑野県) 愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県) あましんアルカイックホール・オクト(兵庫県) フェニーチェ堺 大スタジオ(大阪府) スカラエスパシオ(福岡県) ⻑崎市チトセピアホール(⻑崎県)
【キュレーション】 ⻑谷川祐子
【テキスト】 ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」(翻訳:雨沢泰、河出書房新社刊)
モーリス・ブランショ「白日の狂気」(翻訳:田中淳一 ほか、朝日出版
【共同振付】 大宮大奨 【照明】 藤本隆行(Kinsei R&D)
【音 響】 中原楽(ルフトツーク)
【映 像】 粟津一郎 【舞台監督】 尾崎聡 【協力】 藤井さゆり、三宅敦大 【制作協力】 伊藤事務所
【企画・制作・主催】 サンライズプロモーション東京
【お問い合わせ先】 サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日 12:00〜15:00)
【公式サイト】 https://mienai-mieru.srptokyo.com/
取材・文:高 浩美