明けない夜はない~それは再生の物語~ 「WakeUp,Girls! 青葉の軌跡」開幕

声優ユニットWakeUp,Girls!(以下WUG)主演の舞台「WakeUp,Girls! 青葉の軌跡」が2018年6月6日(水)から10日(日)まで草月ホール(東京都港区)にて、上演中。

本作は2017年1月に上演された舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」の続編にあたり、脚本は「Wake Up, Girls! 七人のアイドル」、TVシリーズ第1期、舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」の脚本を手掛けた待田堂子 。

6日夜の初日に先立ち、通し稽古が関係者に公開された。

開演前に行われた囲み取材には、全出演者が登場。WUGのメンバーたちが今回の舞台への意気込みを語った。

岡本未夕 役:高木美佑さん

「2回目のWake Up,Girls!の舞台、みんなの結束力も前回より高まり、その部分がお芝居に反映できていると思います」

久海菜々美 役:山下七海さん

「菜々美という役とアニメーション作品以来ずっと寄り添ってきているので、舞台ではそんな菜々美の良いところをいっぱい見せられるように頑張りたいと思います」

片山実波 役:田中美海さん

「今回のストーリーは数年前にアニメーションでアフレコをしたんですが、とても大好きなお話だったので、こうして舞台で演じられる機会をいただけて嬉しい」

島田真夢 役:吉岡茉祐さん

「前回の舞台の続編という形で舞台でもストーリーが進んでいくことでキャラクターの成長を描くことができました。前回からの私たちの舞台での成長も見ていただきたいです」

林田藍里 役:永野愛理さん

「Wake Up,Girls!の舞台、もう一度上演することができてうれしく思います。アニメで見ていて好きだという方にも楽しんでいただけると思いますし、アニメを見ていない方にも楽しめる内容になっていると思います。このメンバーでやってこれてよかったという作品になっていますので、楽しんでくださったら嬉しいです」

菊間夏夜 役:奥野香耶さん

「最初のTVシリーズの物語を今回舞台で演じるんですけど、数年前に戻ったような新鮮な気持ちになっています。本番がとっても楽しみです」

七瀬佳乃 役:青山吉能さん

「約1年半前にやらせていただいた舞台の続編になるんですが、私は作品内の佳乃に合わせて髪を切ったり伸ばしたりするのが佳乃という役との近づき方だったので、今回前のシリーズを舞台化するという事で、新章で切った髪をまた伸ばして、より佳乃と身も心もマッチしてるんじゃないかと。そんな姿を見ていただけたら嬉しいです」

最初のTVシリーズは、WUGメンバーのデビュー作品でもあり、声優としての成長と役の成長が重なっているところがあった。今回の舞台化で、再体験するとともに生身で演じるという事で、「成長したこと」「声の演技と生身の演技」のギャップのようなものは感じなかったかという質問を投げたところ、

口々に

「キャラクターと付き合ってきた期間というのは、私たち自身が一番長い。5年目なのでみんなそのキャラクターが染み込んでいる分ギャップっていうものは無いのかなと感じました」「自然と思いだしたよ。昔の感覚で演技ができた」「最初は身長とか見た感じ大丈夫かなというのがあったんですけど、やってみたら全然気にならないし、やっぱりみんなずっと一緒に5年以上も連れ添った仲間なので、そこは全然みんな感じなかったと思います」「香耶とか、特にギャップがなかったキャラクターと」「そうですね、なんかスタッフさんとかにも声が一緒だからOKみたいなこと言われたり、声が一緒だから、私もOK!って思ってやってましたね」「演じてると全然感じませんね、ギャップ」という返事が返ってきた。彼女たちはそれぞれの役について、確かなものを掴んでいるようで心強い。

「Wake Up,Girls!」は仙台を舞台に、ローカルアイドルユニットのメンバーが活動を通じて成長する姿を描いた作品。テレビアニメ「Wake Up,Girls!」が2014年1~3月、新作「Wake Up,Girls! 新章」が17年10月~18年1月に放送された。劇場版も2014年、2015年に計3作品が公開されている。

前回の舞台「青葉の記憶」では、地元仙台でローカルアイドルとしての活動が軌道に乗り始めたWUG。今回の舞台では、彼女たちの成長が、I-1clubとのライバル関係も交えたアイドル群像劇として描かれている。

 

WUGの前に突如現れた天才音楽プロデューサー早坂。

彼はI-1clubをスターダムに押し上げた立役者の1人であり、現在もその活動に関わりながら、WUGをプロデュースしたいと申し入れてくる。その条件としてWUGに関する全権が早坂に委ねられ、真夢たちにこれまでになく厳しいレッスンが課せられる。そして早坂の指導の下、アイドルとして前に進もうとする彼女たちの葛藤と成長。

アイドルとして前に進もうとすればするほど、思いの差や実力の差でメンバーの間にズレが生まれてくるWUG。ダンスも合わないし、グループ全体が何となくしっくりいかない。最初は小さかったそれは、見ないようにしているうちに、やがて大きく広がっていき、みんなの心はバラバラに。

そんなとき、みんなとのレッスンについてこれない林田藍里が、早坂にクビを申し渡される。

早坂は他のメンバーに対しても藍里を辞めさせると宣言し、それを承諾できなければ全員をクビにすると、選択を迫る。その場で早急な結論を求められ、焦る心から言い争いとなってしまうメンバー。仲間を切り捨ててまでWUGの活動を続けるべきなのか、それとも……アイドルとしての厳しさを突きつけられ、メンバーたちはそれぞれ、自分とWUGとの関係を再度考えることになる。

藍里を迎えに行く決心をし、飛び出していく真夢と佳乃。

その時、残された実波、菜々美、夏夜、未夕は何を考え、どうしたのか。このあたりのTVシリーズでは描き切れなかった「見えない」部分を、今回の舞台は丁寧に描いている。

アニメはフレームの中の人物の表情以外の情報が伝わりにくいが、舞台では場の空気感やそこにいるメンバーそれぞれの気持ちまで観客に届けることができる。その特性を生かした脚本であり演出だ。

また、WUGの物語は、その物語成立の初期から、再生の物語である。東日本大震災後の2012年に活性化を願って東北が舞台の企画を発表したこと。アイドルをあきらめた島田真夢が、仲間との出会いで再度アイドルを目指すこと。そして、彼女たちの持ち歌「タチアガレ!」という曲に象徴されるように。

今回は、バラバラになった仲間との絆を繋ぎ直し、再生する物語だったのだと観終わって胸に落ちた。

今回の重くなりがちな題材を、プロジェクションマッピングと回転舞台を利用したスピーディな舞台転換と田中美海演じる片山実波や高木美佑演じる岡本未夕が持つ明るさが和らげていた。マネージャー・松田耕平役の一内侑と事務所社長・丹下順子役の田中良子の掛け合いや、早坂相役の福山聖二の存在感も舞台を引き締めていた。

カーテンコール後は、スペシャルステージと題し、WUGが「7 Girls War」I-1clubが「ジェラ」、そして2グループが合同で「極上スマイル」を披露。ステージいっぱいに踊り、歌う姿に魅了された。

<キャスト>

Wake Up,Girls!

島田真夢:吉岡茉祐、林田藍里:永野愛理、片山実波:田中美海、七瀬佳乃:青山吉能、久海菜々美:山下七海、菊間夏夜:奥野香耶、岡本未夕:高木美佑

I-1club

岩崎志保:大坪由佳、近藤麻衣:松村芽久未、吉川愛:持田千妃来、相沢菜野花:堀越せな、鈴木萌歌:山下夏生、鈴木玲奈:立花玲奈、小早川ティナ:日下部美愛、高科里佳:松田彩希

Twinkle

アンナ:栗生みな、カリーナ:舞川みやこ

松田耕平:一内侑

丹下順子:田中良子

早坂相:福山聖二

<スタッフ>

原作: Green Leaves

脚本:待田堂子

総合演出:松多壱岱
演出:萩原成哉
美術:照井旅詩
照明:村山寛和(マーキュリー)
音響:鳥羽正生(ヤマハMEH)
映像:曾根久光(co:jin projects)
衣裳:西田さゆり
ヘアメイク:青山亜耶
振付:SATOMI
演出助手:寺本晃輔
舞台監督:田中聡

【概要】

「WakeUp,Girls! 青葉の軌跡」

公演日程:2018年6月6日(水)~10日(日)

会場:財団法人草月会 草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21)

公式サイト:http://www.odd-inc.co.jp/stage/wug/

写真・文:菖蒲剛智