野村萬斎,成河, 河原崎國太郎 ,吉見一豊 .村田雄浩, 若村麻由美etc.出演2021 年 3月 『子午線の祀り』上演決定!

2021 年、『子午線の祀り』がまた新たな幕を開ける。
「平家物語」に材をとり、日本演劇史上に燦然と輝く不朽の名作『子午線の祀り』 世田谷パブリックシアター開場20周年記念として、2017 年に野村萬斎の新演出で上演し、数々の演劇賞を受賞した本作が戯曲の芯をとらえ直し、ダイナミックかつテンポ感を増した2021年版として新たに生まれ変わります。

『子午線の祀り』は、木下順二が「平家物語」を題材に“天”の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経をはじめとする 源平合戦に関わった登場人物たちを躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げた戯曲で す。また日本語の“語り”の美しさと荘厳な響きを引き出す群読という独特な朗誦スタイルを随所に用いて、演劇史に確固たる地位を築いてきた傑作として広く知られてきた。
その戯曲を受けて宇野重吉、観世栄夫、木下順二らの演出による初演が1979年。能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、日本演劇史をひとつの作品で体現する唯一無二の舞台として、高く評価された秀作。
その後、幾たびもの上演を経て、この伝説的な舞台が、野村萬斎の新演出により世田谷パブリックシアターで上演されたのが、3年前の2017年のこと。 世田谷パブリックシアターの芸術監督として長年にわたり、「人間の営みを俯瞰して眺める狂言的なマクロの視点」と「人間の精神性や情感に迫る能的なミクロの視点」で古典と現代が融合した作品を数多く演出してきた野村萬斎の集大成の一つともいえる2017年版の上演は、宇宙的な視座を持つ作品の深い考察、個人と全ての人間の運命を包み込む宇宙の対比、群読による 日本語の美しい響きと身体性を活かしたダイナミックな演出が高く評価され、読売演劇大賞最優秀作品賞をはじめ、数々の演劇賞(※1)を受賞。

2017年度公演 Ⓒ細野晋司

そして 2021 年初頭にこのコロナ禍の中で再び上演するにあたり、あらゆる試行錯誤を繰り返した結果、2017 年版をベースにし ながらも、戯曲の芯を捉え直し、演出の濃度を増し、機動力のある舞台を新たに目指すことになりました。
また今回の 2021年版は2017年には果たせなかった、各地での上演も実施するはこびとなります。

2017年度公演 Ⓒ細野晋司
2017年度公演 Ⓒ細野晋司
2017年度公演 Ⓒ細野晋司
2017年度公演 Ⓒ細野晋司

2月にKAAT神奈川芸術劇場で幕を開け、その後、愛知、久留米、兵庫と各地を回り、(※2)最後に世田谷パブリックシアター の舞台へ戻ってくるという、その間1か月以上に及ぶ公演となる。

※1 第 25 回読売演劇大賞最優秀作品賞、同優秀女優賞(若村麻由美) 第59回毎日芸術賞 第20回千田是也賞(野村萬斎)
※2
<神奈川公演> KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
2021年2月21日(日)~27日(土) 6回公演(全14:00開演)
<名古屋公演> 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2021年3月3日(水)18:30、4 日(木)12:00
<久留米公演> 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2021年3月7日(日)16:00、8日(月)13:00
<兵庫公演> 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2021年3月13日(土)12:00/18:00、14日(日)13:00

[物語]
歴史上名高い源平の合戦。次第に平家の旗色は悪くなるばかり。兄・平宗盛(河原崎國太郎)に代わり平家軍を指揮する平知盛(野村萬斎)は、一の谷の合戦で、源義経(成河)の奇襲を受け、海へ追い落とされる。以来、武将となって初めて自分に疑いをもちつつ、知盛は舞姫・影身の内侍(若村麻由美)を和平のため京へ遣わそうとする。
平家を支える四国の豪族・阿波民部重能(村田雄浩)は、三種の神器を楯に主戦論を唱え、知盛を立てて新しい日本国の存立を画策しようとする。知盛は平家滅亡を予感しながらも、後白河法皇の過酷な要求を拒絶し、徹底抗戦の道を選ぶのだった。
一方、源義経は、兄頼朝から目付役として遣わされた梶原景時(吉見一豊)と対立しながらも、源氏方の先頭に立って慣れぬ海 戦も乗り越えますます勢いづいていく。
そしてついに両軍は壇の浦の決戦の日を迎える――。

<演出家・出演者コメント>
<子午線の祀り 2021withコロナバージョン に向けて>
1979 年の初演より半世紀を過ぎて尚輝く名作。2017 年の新演出では、数々の賞を頂きました。何故この 作品がこれまで息長く、また時代に合わせたアップデートに耐えて輝き続けるのか。
それは木下順二が、日本の普遍の名作「平家物語」に、世界の普遍の名作「ギリシャ悲劇」「シェイクスピ ア」を掛け合わせ、宇宙の目線から見つめるというハイブリッドな戯曲(レクイエム)を書き上げたからに他 ならない。数百年、数千年の普遍を掛け合わせれば、それは絶対普遍とも言えるのではないか。後は、現在に生きる我々が、いかにアップデートするかにかかっている。
この 1 年間、世界はコロナウイルスという大きな波に揺れている。しかし我々は、足を波に掬われようとも 自分の座標軸をもち、すっくと現在この時に立っていなければならない。この「子午線の祀り」も、早くも大きなアップデートを迫られている。
戯曲を圧縮し、言霊を磨き、舞台美術を変え、役者の身体性をより強固にアグレッシブにして、演出の濃度を上げる。それは再 演という括りでは収まらない、新たな旅立ちである。
コロナ禍だからこそ我々は、現在、何処に、何故に、どのように生きているのか?あなたの目前に漂う「生と死」と、歴史の波に漂 う源平壇ノ浦合戦の「生と死」が合致してオーバーラップする時、あなたは自分の存在を宇宙の目線から知り、 自らをアップデートするのである。そして「満々とひろがりひろがる現在という時空の海面に、あなたはすっくと立っている。」ことを自覚するのである。
戯曲の主人公の一人である平知盛を演じるのは4度目である。「見るべき程のことは見つ」とまさに世の中を俯瞰して千尋の海 に沈む知盛の目線は、時空の闇を超えて今を生きるあなたの目線に、影身として寄り添うのである。
世田谷パブリックシアター芸術監督 野村萬斎(子午線の祀り演出 新中納言知盛役)

<作・木下順二/「平家物語」と『子午線の祀り』>
「見るべき程のことは見つ。今は自害せん」
これは「平家物語」で勇猛果敢な武将の典型として描かれている新中納言知盛、最期の言葉です。
壇の浦の決戦で敗色濃厚になり、安徳帝をはじめとした平家の一門の入水を見届けた後、自らも水底深く沈む知盛。木下順二の『子午線の祀り』の知盛は、この言葉の後に、さらに一言の絶叫が続きます。その台 詞が「影身よ!」です。この言葉を最期に知盛は入水します。
『子午線の祀り』が誕生する前、木下順二の作には『平家物語による群読―知盛』があり、「山本安英の会」で1968 年よりたびたび試演会を重ねてきました。そしてその10年後の1978年に雑誌「文藝」に発表されたのが本作『子午線の祀り』です。
木下順二は自ら、平知盛への興味を次のように語っています。「私が『平家物語』からどういう“問い”を発見 し、そのみずからの“問い”にどういう“答え”を出したかは、『子午線の祀り』を観て下さいというよりないが、私が強い関心を持っ たことの一つは、三十四年を生きた知盛の最後のほぼ三年である。(中略) その苛烈刻薄な最後の三年間の中で知盛は、初 めて剛毅清冽な本領を凄絶なまでに豊かに発揮する」と。
木下順二はまさに独自の視点から「平家物語」を現代劇に転化させていくのですが、その際に用いた台詞術が「山本安英の会」 でも試されていた「群読」と言う手法です。その観点から評論家の加藤周一が書いた文章が 1990 年の公演時のパンフレットに 下記のように掲載されています。
「『子午線の祀り』は、古典劇であり、同時に現代劇である。ここには、『平家物語』と木下順二の世界とのみごとな複合が成立し ている。 (中略) 『平家物語』における語りの要素と、木下戯曲におけるせりふ劇の構築との組合わせ、さらにせりふの現代語 と群読の原文との調和、という点に見られる。『平家物語』の文章のもつ格調が劇全体に強く作用し、またこの戯曲における人間 群像、(中略)群読を背後に置いた対話の構築が、古典の世界を現代に生かしている」と。
こうして、『子午線の祀り』は、「平家物語」を基にしながら、1979 年の初演以来、昭和戯曲の金字塔として確固たる地位を築いてきました。
この傑作戯曲を上演可能としてきた要因の一つが、古典芸能と現代劇のスタッフ、俳優の交流にありました。初演から 38 年を経た2017年版の『子午線の祀り』でも、狂言、歌舞伎、現代劇など各ジャンルから選りすぐりの俳優が結集し、「古典劇であり、 同時に現代劇」である『子午線の祀り』を後世に伝えるべく、野村萬斎の新演出で新たなステージへ踏み出しました。そして4年後となる2021年の公演は、この再演を企画した時は予想だにしなかった、コロナ禍での公演となりました。しかし各時代の演劇人が次世代へ継承してきた本作が持つ生命力の強さが、「with コロナ」の時代であっても確実に普遍的な力を発揮してくれるに違いありません。

<配役>
野村萬斎 ・・・新中納言知盛 (しんちゅうなごんとももり) 平家の武将
成河 ・・・九郎判官義経 (くろうほうがんよしつね) 源氏の武将
河原崎國太郎 ・・・大臣殿宗盛 (おおいとのむねもり) 知盛の兄
吉見一豊 ・・・梶原平三景時 (かじわらへいぞうかげとき) 源氏の武将・義経とは敵対関係
村田雄浩 ・・・阿波民部重能 (あわのみんぶしげよし) 平家方の地方豪族
若村麻由美 ・・・影身の内侍 (かげみのないし) 知盛を慕う舞姫
2017年版の出演者31名から今回は17名に再編成を行い群読チームの若手の中から伊勢三郎役への抜擢や、また新た に梶原平三景時に吉見一豊さんを迎え、さらに機動力を増した布陣で挑戦。

<公演概要>
『子午線の祀り』
【作】木下順二
【演出】野村萬斎
【音楽】武満徹
【出演】野村萬斎 成河 河原崎國太郎 吉見一豊 村田雄浩 若村麻由美 星智也 月崎晴夫 金子あい 時田光洋 松浦海之介
岩崎正寛 浦野真介 神保良介 武田桂 遠山悠介 森永友基
【日程・会場】2021年3月19日(金)~3月30日(火) 世田谷パブリックシアター
【チケット料金】一般S席(1 階席・2 階席) 8,500円 A席(3 階) 5,000円 ほか高校生以下、U24など各種割引あり ※託児サービスあり
※車椅子スペース取扱あり
【チケット取扱い】世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 (10~19 時)
世田谷パブリックシアターオンラインチケット https://setagaya-pt.jp/
【チケット一般発売】 2021年2月14日(日)
【お問合せ】 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 https://setagaya-pt.jp/
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】 世田谷パブリックシアター
【共同制作】 KAAT神奈川芸術劇場
【後援】 世田谷区
【協賛】 東邦ホールディングス株式会社/トヨタ自動車株式会社/Bloomberg
【協力】 東急電鉄株式会社