ウォーリー木下コメント到着!3月末まで視聴延長!VR演劇「僕はまだ死んでない」、動けない体を体験、魂の浮遊、生と死の間で見える景色と幻想と夢。

コロナ禍で配信の演劇が増加している。Zoom演劇、多数のカメラを駆使した配信演劇、リアルに上演されている作品でも配信が行われている。また、配信の仕方もアングルを変えての幾つかのパターンが楽しめるタイプも出現し始めている。
このVR、仮想現実と訳されているテクノロジーを使った演劇、新型コロナウイルスの出現前から、これを駆使した作品は幾つか上演されていたが、この状況下において加速化している。今回のVR演劇「僕はまだ死んでない」は、先に実施されたSTAGE GATE VRシアターでの手応えを踏まえて、さらに新しい手法に挑戦したものだ。劇場にはもちろん観客はいない。リアルとの違いを鑑賞する、というものではなく、今回はVRのための演劇である。よって舞台のしつらえもリアルに観客が観ることは全く考えず、どうしたらよりVRというテクノロジーの長所を生かせるか、その点に注力している。また映像演出も自由自在になる。外での撮影もあり、映像に映像を重ねることもできる。これを「演劇ではなく、映画ではないか」と捉える人もいると思うが、いわゆる長回し、演劇的な見せ方をしている。

写真はイメージです。実際の見え方とは異なります。

物語は病室ではなく、主人公の幼い頃の記憶から。砂浜で二人の少年がブランコに乗っている。モノローグはすでに体の自由を奪われた主人公。そこから物語の場面は病室に。重篤な状況なので場所は病院の個室。父親、友人、妻、担当医師。主人公は全く動けない状態なので、病室にいる面々は、まさか本人の頭脳は健常者と同じように考え、感じているとは思っていない(しかもベッドには実は誰もいない)。しかもちゃんと聞こえている。このVR演劇のサウンド、イヤホーンで聴いているので臨場感と没入感がすごい。しかもアングル次第で彼らがあたかも自分に話しかけているかのように体感できる。”自分事”、この主人公が自分だったら、そう思うと感情的には切ないを通り越して、もしかしたらこんな状況に置かれることもありうるのか、とさえ思えてしまう。自分がそこにいるにもかかわらず、自分の考えや意思を伝えることはできない。文字で伝えることはできるが、複雑な内容や感情は伝えきれない。そんなこんなの状況で実は妻とは離婚調停中…。このままの状態なのか、容態は好転するのか、それは彼らの会話から察すると、いわゆる”神にのみぞ知る”。


場面は一転して主人公が普通の健常者のように立っている。病室の風景からオープンな風景になり、金魚たちが泳ぎ周り、水の泡、音楽も流れ、一瞬にして幻想的なシーンになる。こんな状況だからこそ、観ることのできる景色なのかは定かではないが、美しく、ただ、儚い。そして360度のシステムを使うと、かなりの没入感が得られる。視聴者と物語の主人公の境界線は曖昧、だからこその”VR”、仮想現実、そして一種のインタラクティブな状況とでもいうのだろうか、単なる”視聴”を超えていく感覚。そこから再び病室のシーンになる。この病室のシーンも360度でアングルを変えて視聴すると、自分の体から意識が抜け出し、この状況を冷静に観察する、みたいな感覚も体験できる。魂が浮遊する、寄ったり引いたり、また360度視点を変える、というシステムを駆使すれば、様々な見方や景色を体感できる。
ちょっとコメディっぽいシーンもあるのでテーマは重いが、深刻すぎず、VRの技術によって視聴する数だけ、見方が変わり、感じ方も変わる。そしてドキュメンタリータッチで真に迫る感覚もある。「配信って映画とどう違うの?VRってよくわからない」と考えているなら、百聞は一見にしかず。目から鱗が落ちてくるはずだ。

<ウォーリー木下・コメント>
アルファコードの斉藤さんにいろいろ(VRの)体験などをさせていただいた時に360度カメラのVRに非常に惹かれまして、これで演劇を作ってはどうか、と思ったんですね。お客様が真ん中にいて、役者が外周にいる、円形舞台の反対でドーナツ型の舞台ですが、そんな舞台は今まで見たことがない。もし参加するのであれば役者もお客様も存在する形の脚本にしてしまえばいいのではないかなと、真ん中にお客様がいていい発想ってなんだろうかと考えました。その中ではお客様はインタラクティブではなく一方的に聞くことしかできない、アクションが起こせない形に落ち着きました。最初は銀行強盗とかをテーマにしてみたらとか、さるぐつわとかしてね。でもそれってあんまり楽しそうじゃない。結果、「話すことができない人」を「真ん中に置く」という発想になりました。その時に僕がちょうど興味があった終末医療のことを、そういうメッセージ性を入れられないかなということで、このテーマに決めました。結果として体験した人がどれくらい物語の主人公として考えられるかは課題はいろいろありますが、トライアルとしてはそういうものになりました。
自分で死を選べない状況があり、自分は将来どうするんだろうかと考えていたことなんです。日本の状況としては難しい所ですね。広田くんと喋っているうちに「当事者の話にしたらどうなんだろうか?」と。「死なない人たちが右往左往している」というコメディにしました。最後に本人役が出てきて、彼がいったいどういうことを思っていたのかということが重要なメッセージになるのかな、と思いながら作りました。
去年はたくさんの演劇が公演中止になり、その中でできたのが「無観客で行う舞台」や「今までのアーカイブを掘り起こして映像として皆さんにご覧いただく」が増えていき、僕も普通じゃ観られないような海外作品が家にいるおかげで観られました。いち演劇ファンとしてはよいのですが、あくまでもそれは舞台を記録した映像でしかないし、実際に僕が観客席で体験しているようなことはできない。その中でどうやって無観客の映像配信でもより演劇に近い臨場感みたいなものを与えられるのか。「お客様が好きなところを観られる」というのが演劇の魅力なのではないかと思っています。好きな俳優だけをずっと目で追う、眠たくなったら目を瞑る、劇場っていうのはそういう場所ですから。いろんな矢印を持った人たちが一同に集まって、個人個人でドラマを楽しむ、それに近いことが360度VRでできるかなと思いましたし、自分も観たかったですね。というのが今回のVR演劇の、いちばん演劇に近いところなのかなと思います。ほかにも配信ゆえに「なるべくワンカット」にはできなくて、5つくらいカット割りしていますが、一つのカットにつき10分くらいは長回しをして、より演劇に近い形にしようと思って作りました。ワンカットのものって役者さんの緊張感が全然違うんですよ。ミスったら最初からやり直しですしね。それは演劇の本番に近いのかなと。ミスがある、というのも演劇に近いんですよね。たまにセリフを噛む役者さんもいますから。でもそれゆえ臨場感があるともいえるので、わざとカットをリテイクしていないものもあります。
撮影時は、映画と一緒で、モニターで離れたところで観ていました。でもモニターは360度すべてから見られるわけではない、あとは声を聴きながら。本番は何が起きているのかなど詳しくわからない部分もあります(笑)。
稽古は通常の演劇とほぼ同じで、唯一違うのは演出席が舞台の真ん中にあったことがちょっと恥ずかしかったです(笑)
役者にとっても、たぶん、映像作品に出演したというよりは演劇に参加したという感想の方が強いのではないでしょうか。それも含めて環境……去年本当にみんな仕事がなくなってしまって、これから先も37.5度以上の体温が出た時点で仕事がなくなる。そんな中で一回の本番をどれだけたくさんの人に観てもらうかということで言えばVR演劇は一つの新しいジャンルとして確立していくんじゃないかと思います。あとは面白いコンテンツを作っていくことが重要なので、僕に限らず新しい人たちが参加していってくれればいいですね。
今回は脚本で広田くんが参加してくれていますが、彼自身もこういう作品に参加したことがあるそうで、重たいテーマですが軽やかに、その時に起こる人間ドラマに昇華してほしいと話してまして、まさにそういう物語になった、ズシンと来るものがある。自分の経験とか体験が反映されてはいくのですが、いい意味で他人事のように感じられて、その距離感がVRに合っていたなと思います。あとは見方みたいなものがうまくコントロールされていない部分もあるので。反省点ももちろんあります。僕は答えを知ってしまっているので。やりながら若干あら捜しをしてしまっている部分もありますけれど(笑)。
天井にスタジオ機材や照明機材が写っているは敢えて残しています。これは演劇の演出の醍醐味。作る側も観る側もこれは演劇であるという点を忍ばせないといけないなと思ったんですね。セットがいろいろ動いたりする仕掛けもありますが、映画だと逆にやりづら
定点カメラにしているのは、そうしない場合は映画と変わらなくなってしまいます。演劇って足かせみたいなものがたくさんあることで面白くなっていく表現なんだな、と気づきましたね。これからやる舞台にも使えそうだと思いました。
上演時間60分くらいがいいかなと思っていたんです。家にいるとどうしても携帯電話が鳴ったりだとか、子供が遊びに来たりとか、劇場では発生しないイレギュラーがあるわけですから、1時間くらいなら集中してもらえるかなと。配信の演劇を観ていて思ったのが「途中で止めることがある」んです。でも演劇は一度始まったら止まらない、だからそれも劇場のよさというんでしょうか、映像との大きな違いなんじゃないかと思います。止めなくてもよい、それが可能な時間はせいぜい1時間ではないかと。
また、ひとつの別のアプローチとして舞台上に上がってみる体験をしてもらえたらなと思い、照明の眩しさや音の雰囲気を追求しようと思いました。そこに物語を乗せるために、SEを小さなスピーカーをたくさん置いて流し、臨場感を作り出しました。現場では音を出してそれも収録し。SEと実際と役者の足音を混ぜ込み、SEと生音が組み合わさった感じにしました。途中で入る幻想的なシーンは後で音をはめて表現したのですが、演劇というよりも映画に近いかな?もう一人の主人公である360度カメラの中の人がいる、ということを役者に意識していただきました。相手はカメラなので、どうやって眼差しを送るかなど訓練しました。
将来的にはひとつは観ている人も参加できる、インタラクティブなもの、観客側からアクションをかけられるようなものを作ってみたいですね。今のVRデバイスならルームランナーと一緒になっているものや、椅子が自由に動いたりする3D、4Dシアターみたいなことができると面白そうですね。実際ゲームの世界だとアバターが参加することは十分ありますし、以前VRグローブみたいなのもありました。握手したら実際に相手の重みや感触がわかる、そういうようなこともやってみたいですね。あとライブ……音楽ですね。今回360度マイクを使ってライブを収録することで「自分が新たなバンドメンバーになれる」ようなものも面白いかなって思っています。斉藤さんぜひやりましょう(笑)。お金があればデバイスの開発に注力したい。観る人は部屋にいるわけだから、部屋の環境をもっとシャットダウンできるように……没入していく状況を作っていくこと。VR空間に一歩入り、劇場の扉が開いて、歩いて客席に座る。本多劇場にいるかのような体験をしたり(笑)。売店でゴハンも食べられたらすごいですよね。歌舞伎座バージョン、本多劇場バージョン、そんなのまで作ってみたい(笑)。コロナ禍だからこそ出来上がったヴァーチャル劇場見たいなものでしょうか。
本当にVR演劇元年が、2020年始まったなと思います。これからもこういうものをどんどん作っていくことが、演劇の発展につながるのではないかと思います。単純にアーティストとしても面白い表現だと思っています。ただ、今回は初号機のようなものなので、これからもっとブラッシュアップさせれば、新しいものもどんどん生まれてくると思います。ぜひどんどんご意見いただければと思います!とりあえず怖がらずに試してくださいね(談)

【INTRODUCTION】
新型コロナウィルス感染症は、人生の重大な局面―この世にいられる時間が残りわずかという、極めて貴重な瞬間―であっても容赦はしません。最期の別れであっても、大事な人、親族でさえ、対面で会うことが叶わずに、身を裂かれる思いをしている人が大勢います。
もしも、自分の大事な友人が、親族が、最愛の人が、倒れて生死の境をさ迷う状態になったら…。
そのとき人は、何を想い、何を選択するのか。奇しくもこのコロナ禍は、「言霊信仰」のある日本では目を背けがちで、殊更話題に上りにくい、終末医療の問題にも人々の意識を向かせることになりました。誰もがいつかは人生の終焉を迎える以上、避けては通れない大事な問題。100人いれば100通りの状況と考えと感情があり、何より自分に関わることとして考えることが大事な、終末医療の問題。
エンターテイメントとして、ときにコメディタッチに描かれている本作は、物語に引き込まれるうちに、構えることなくすぅっと「人生の最期」について思いを巡らすことのできる作品です。

【360度自由な視点のVR演劇】
最新テクノロジーのVR(ヴァーチャルリアリティ)技術を活用し、舞台上を360°ぐるりと見渡せる自由な視界。自在なズームイン・アウトはもちろん、劇場上演の演劇では味わえない、舞台上で主人公の視点で物語が楽しめます。物語の間、ずーっと一人の人物にフォーカスするも良し、天井を見上げて主人公の気持ちに寄りそうも良し!何度も、幾通りも楽しめる作品です。

★ヘッドマウントディスプレイ(VRグラス・VRゴーグル)だけでなく、
スマートフォン、タブレット、各種ブラウザでご視聴いただけます。
★VRゴーグル対応機種=Pico G2、G2Pro、G2 4K/Oculus Go/Windows Mixed Reality

動画配信サービス「Binky」
https://blinky.jp/
提供:株式会社アルファコード

写真はイメージです。実際の見え方とは異なります。

<配信概要>
VR演劇「僕はまだ死んでない」
配信期間:
3月31日23:59まで 配信チケット購入可能
4月7日23:59まで視聴可能
なお、視聴可能期間は連続7日間(何度視聴可能)まで。

【あらすじ・作品概要】
僕は病室にいた。
父と、僕の友人が何やら話をしている。が、体がぴくりとも動かない。一体僕に何が起こった?
医師らしき声も聞こえる。「現状、一命を取り留めていることがすでに大きな幸運なんです」
……なるほど。そういうことなのか。
デザイナーとしての会社務めを半年前に辞め、油絵に打ち込んで夢だった画家への道を歩み始めた矢先だった。脳卒中で倒れ、自分の意志で動かせるのは眼球と瞼だけ。「やってられるか、バカ野郎!」とたった一言伝えるのに5分以上かかる。
そして病室には、
飄々と振る舞い軽口も叩く父、慎一郎。
兄貴分の幼馴染で、親身になって回復を願っている碧。
離婚の話し合いが進み、新たな生活に踏み出し始めていた妻、朱音。
そして、担当医である青山。
「良く死ぬことも含めての良く生きること」
直人と、直人を取り巻く人々それぞれに、胸に去来する想いがあり…。

【原案・演出】ウォーリー木下
【脚本】広田淳一
【音楽】吉田能
【出演】
白井直人:内海啓貴 白井慎一郎:斉藤直樹 児玉碧:加藤良輔
青山樹里:輝有子 白井朱音:渋谷飛鳥 白井直人(幼少期):瀧本弦音 児玉碧(幼少期):木原悠翔
【スタッフ】
音楽:吉田 能 美術:石原 敬 照明:島田美希 音響:けんのき敦 衣裳:ゴウダアツコ ヘアメイク:鎌田直樹 演出助手:相原雪月花 舞台監督:清水浩志 撮影・技術協力:アルファコード/水野拓宏、齋藤浩太郎、岡田将典、中岡正博、韮澤貴翔、野村 譲誉、三村信貴、平野巧二郎、與古田信也、橋本百恵、島田淳平、大塚剛司、高坂茂樹、野沢勇人 演出部:櫻井健太郎、馬渕早希 照明:クリエイティブ・アート・スィンク/折登谷早希、伊藤安佑
音響:オフィス新音/立石智史 衣裳:上野沙織 ヘアメイク:杉山えみ、岩田知世 大道具:株式会社俳優座劇場/井戸元洋 小道具:高津装飾美術株式会社/西村大志 運搬:クリエイティブ・アート・スィンク/浅野 猛 舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク/加賀谷吉之輔 宣伝・舞台写真 岡 千里 医療監修協力:帝京大学医学部整形外科学講座 塚田圭輔 先生、帝京大学医学部附属病院 脳神経外科 中里一郎 先生 宣伝:ディップス・プラネット
宣伝美術:ycoment/菅原麻衣子 Webデザイン:メテオデザイン 制作:山本涼子、平林和子
プロデューサー:江口剛史
企画・製作:シーエイティプロデュース

【公式サイト】https://stagegate-vr.jp/