新国立劇場の2021/2022シーズンのラインアップ説明会が執り行われた。登壇したのは芸術監督の小川絵梨子。
2020年の初頭から新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの舞台やライブが中止に追い込まれた。もちろん、新国立劇場も例外ではない。配信などの試みも行われた。ラインアップについて小川絵梨子から説明があった。
まずは、フランスの国立劇場であるオデオン劇場制作『ガラスの動物園』の招聘公演。昨年、フランスで開幕した直後に中止となり、日本では9月に上演予定であったが、あえなく中止に。しかし、21年4月よりヨーロッパでツアーが決定し、9月にようやく来日公演が決定、実に1年!!ただ、今後情勢がどうなるのか未知数であるので、小川は「目指している」と表現した。そしてオデオン劇場としても「ぜひ、やりたい」と意欲的。演出は世界的に人気のあるイヴォ・ヴァン・ホーヴェ。「なんとかして日本に」「なんとかしてきていただきたい」という相思相愛、コロナ禍であるが、2021年9月には少しは落ち着いて欲しい、といったところだろうか。
それから、すでにキャストは既出であるが、11月には、フルオーディション企画の第四弾『イロアセル』。演出に本作の作家でもある倉持裕を迎え、フルオーディションとしては初の現代の作品。小川より「今の社会に合っている」ということ。
2021年12月は2018/2019シーズンから続けておりました、「こつこつプロジェクト」(公演の有無に関わらず、一年間かけて作品を作っていく作業)を経て、『あーぶくたった、にいたった』を上演。現代は公演サイクルが目まぐるしい状況であるが、これは”こつこつ”という通り、じっくり時間をかけて作品を作ってみること、そして、「つくる場所」としての劇場のあり方を模索しているプロジェクト。演出は西沢栄治、また「こつこつプロジェクト第二期」として、新しく3人の演出家をお迎えし、三つの作品を一年間かけてこつこつと稽古する、とのこと。
2022年にはシリーズ「正論≒極論≒批判≠議論」として三つの作品を上演。「コロナ禍でずっと考えていたこと」と語るが、現代はSNSが発達し、誰もが様々な意見や感想を発信できる時代だ。その個人の発言「どういうものなのか?感想か?議論なのか?文句なのか?」と小川は語るが、そういったものを目にした誰もが持ちうる疑問。そこに切り込んでいく。「正論や極論や相手を無視した批判や、ましてや誹謗中傷は、議論には繋がっていきません。多様な意見交換は、お互いを最低限には尊重し、自分の正義ではなく、相手に届くような言葉を使うことで生まれます」と小川。極めて現代的なシリーズと言えるだろう。なお、作品選びについてはたまたま外国作品になったそう。
公演以外では、「ギャラリープロジェクト」、2020年はネットを用いてのオンライン配信でワークショップを行ったそう、「少しでも思いを届けたい」という気持ち、集まれない状況でのオンライン。コロナ禍が今後、どうなるのかは未知数であるが、トークセッション、ワークショップ、公演ガイドツアーなど予定されている。
昨年はコロナ禍一色の年であったが、様々なニュースなどに接続して見たそう。多様な発言、意見があるが「いい意味で心打たれるもの、考えさせられるものもあった」いい、「心がえぐられる気持ちになるものもあって『なぜそんな言い方になるんだろうか?』と感情を揺さぶられることが多かった」と語る。それは我々とて同じ気持ち。「“答え”があるわけではない。みんなで考えていけたらいいと思います」と語った。また、18年に芸術監督に小川であるが、仕事は「時間をかけて積み重ねていく」という考え方。すでに次の年を見据えてコツコツと準備中。「新たな世代に演劇の楽しさを伝え、残していきたい」とコメント。また、KATT神奈川芸術劇場の芸術監督には長塚圭史が、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督には近藤良平が新たに就任。同世代、年齢も近いので「オープンに話し合える関係でありたい。つながりを残していきたい」とコメント。
2021年、未だ緊急事態宣言は解除されていないが、次を見据えての企画、連動。意欲的な新国立劇場のラインアップ、大いに注目したい。
<2021/2022ラインアップ>
2021年9月
■ガラスの動物園
作:テネシー・ウィリアムズ
演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
制作:国立オデオン劇場
出演:イザベル・ユペール、ジャスティーン・バチェレ、シリル・グエイ、アントワン・レナーツ
2021年11月
■イロアセル
作・演出:倉持裕
※フルオーディション作品
2021年12月
■あーぶくたった、にいたった
作:別役実
演出:西沢栄治
2022年4月
「正論≒極論≒批判≠議論」 vol.1
■アンチポデス(仮題)
作:アニー・ベイカー
翻訳:小田島創志
演出:小川絵梨子
2022年5月
「正論≒極論≒批判≠議論」 vol.2
■ロビー・ヒーロー
作:ケネス・ロナーガン
翻訳:浦辺千鶴
演出:桑原裕子
2022年6月
「正論≒極論≒批判≠議論」 vol.3
■来訪(仮題)
作:フリードリヒ・テュレンマット
翻訳:小山ゆうな
演出:五戸真理枝
■こつこつプロジェクト -ディベロップメント-
第二期
[参加演出家]
福山桜子
船岩祐太
柳沼昭徳
新国立劇場公式HP:https://www.nntt.jac.go.jp