原作は、2018年公開の映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」。異能力者が次々に自らの異能を使い自殺する という不可解な「ヨコハマ連続自殺事件」を発端に、武装探偵社、ポートマフィアはそれぞれ、事件の犯人と目される男・澁澤龍彦 を追い始め――。そして時を同じくして、澁澤と相見える太宰 治と魔人・フョードル。遡ること6年前に勃発した《龍頭抗争》での因縁を経て、骸砦に集う三超人の思惑が、ヨコハマを深い霧闇に覆う。
深遠な物語を舞台化するにあたり、原作の朝霧カフカが自ら筆を執り、自身初となる舞台脚本の書き下ろしを行いました。 原作映画の公開から3年が経つ今、舞台版では、公開当時にはまだ明かされていなかったエピソードや新たな側面をふんだんに盛り込みながら物語が展開。登場人物である「武装探偵社」の中島 敦・太宰 治・泉 鏡花、ヨコハマの裏社会に巣食う「ポートマフィア」の芥川龍之介・中原中也、地下組織の盗賊団「死の家の鼠」の頭目であるフョードル・D、そして今作の鍵を握る美しくもおぞましい異能力を持つ男・澁澤龍彦の7名に焦点を当てている。
〈オフィシャルレポート〉
物語はヨコハマ、街の雑踏から始まる。武装探偵社の会議をさぼった太宰 治を探して走りまわる中島 敦。敦はその後、一人の老婆があわや交通事故という場面に出くわすが、奇妙な長髪の男の出現で事故は回避。敦にはどこか見覚えのあるその男こそ、6年前に起こった龍頭抗争の首謀者・澁澤龍彦だった。時を同じくして武装探偵社では、「異能力者連続自殺事件」の調査に乗り出しており、澁澤はその容疑者として名前が浮上していた。そして、そんな二人を取り巻くように、ヨコハマが深い霧に覆われる。
一方、ポートマフィアでもこの事件を追い、芥川龍之介が指令を受けていた。発生した霧は、異能力者から異能を奪う力があるというのだ。芥川へ中原中也から下された指令は、澁澤の打倒でなく、澁澤をヨコハマに招き入れた罪人・太宰 治の殺害だった。浅からぬ想いが太宰にある芥川はその指令に驚愕するも、自らの異能を取り戻すべく、太宰らのいる”骸砦”へと向かう。
それぞれの目的を果たすため、探偵社、ポートマフィアが動き出す中、”骸砦”で澁澤と相見える太宰。そしてそこへ現れる魔人・フョードル。白い衣裳を纏った三人は舞台上でも特出して異彩を放つ。高い思考を持つ三人の腹を探り合うような会話のテンポが見ている観客を舞台へと引き込む。
今作では、敦、鏡花、芥川が乖離した異能を通じてそれぞれの「壁」と対峙し、それを乗り越えるさまが描かれている。2017年の初演以来、エバーグリーンな輝きを放ち続ける中島 敦役の鳥越。今回は敦の内面奥深くに芽生える苦悩に寄り添う姿を、見事に体現している。その過程で、乖離した異能力”月下獣”に立ち向かい、自らの過去を受け入れていく敦。ラストに鳥越が魅せる”生命の輝き”は、まさしく舞台ならではの熱量だといえる。
元ポートマフィアの暗殺者、泉 鏡花役・桑江が小柄な体躯を生かしながら舞台を縦横無尽に駆ける様子は”文ステ”シリーズではおなじみ。霧の中、鏡花は”両親の仇”である異能”夜叉白雪”と相対する。「鏡花の両親と”夜叉白雪”の真相」に触れ、本当の意味で自らの異能を取り戻す鏡花。鏡花の深い内面を表出させる桑江の熱演は、”文ステ”の新たな魅力となった。
今作において、映画と大きく異なって描かれるのがポートマフィアの2人だ。
橋本祥平演じる芥川は、異能を喪うという窮地にあっても、ブレることのない意志を以て任務にあたる。橋本の持つクールかつソリッドな魅力はこれまで同様、今作では、一層ストイックな芥川を好演している。また、植田圭輔演じる中也との絡みでは、これまであまり出すことのなかった‟後輩顔“もちらりと覗かせる。この点もファンがこれまで見たことのなかった”芥川像”となるのではなかろうか。
その中也は作中で八面六臂の大活躍を見せる。演じる植田圭輔の運動神経の高さはもちろん、特筆すべきは”文ステ”初となる「フライング演出」への挑戦だ。舞台表現が難しい「龍」との対決、異能力”汚濁”の発動を、プロジェクションマッピングとの合わせ技で見事に表現している。劇中歌に合わせた一連のステージングは、原作を見たファンであれば、その再現度に感嘆するに違いない。併せて今作では、原作にはなかったアクションシーンや、幹部然とした中也の一面が追加されている。アンサンブルとともに魅せる大立ち回りにもぜひ注目いただきたい。
その中也の元・相棒、太宰を演じるのは”文ステ”初登場の田淵累生。陰謀が渦巻く”骸砦”では冷静さが際立つ役回りだが、今作最後に見せた人間味あふれる表情が筆舌しがたいほど素晴らしかった。中也役・植田とも息の合ったコンビネーションを魅せ、これまでのシリーズで積み上げられてきた太宰の魅力をそのままに、さらなる奥深さをキャラクターに与えている。今作ではフョードル役・岸本、澁澤役・村田との”超人同士の騙し合い”を見事に演じきっている。
初登場はまだまだ続く。謎多き男、フョードル・D役に挑んだのは岸本勇太。フョードルは今作で超越的な策謀を企てる”魔人”。岸本が舞台に登場するたびに凍てつくような緊張感が漂い、空気がぐっと引き締まる。初登場とは思えぬほど場を支配しており、狡猾なフョードルをすっかり自分のものにした岸本。また、クライマックスに向け盛り上がる中、アンサンブルと魅せるダンスシーンにも注目だ。
そして圧倒的な存在感を示したのが、澁澤役の村田 充だ。今作ではこの世の全てに退屈を覚え、異常なまでに命の輝きに執着し、歓喜する澁澤。その気味の悪さを表情や立ち姿で表現しながらも、刹那的な美しさや寂しさも同時に醸し出す。澁澤という得体のしれない人物を見事に怪演し、人目を奪った。その澁澤と鳥越演じる敦のバトルは今作のクライマックス。澁澤の、まさしく”人間を超えた”超然たる振る舞いと、真っ向から対立する敦の「あがき、まよい、さけぶ」姿は、ぜひその目でご覧いただきたい。
文ステの特筆すべき点のひとつが、シンプルながらも高さと奥行きを生かした舞台美術や、驚きに満ちたアイデアの数々、森羅万象、何にでもなる変幻自在のアンサンブルの活躍と、不可能とも思われる場面を舞台上に出現させる中屋敷の演出力だ。本公演ではそれらがさらにパワーアップ、プロジェクションマッピングを効果的に用いた照明や迫力ある音響を駆使し、歌舞伎のようなケレン味も加わったスペクタクルな一大抗争劇を繰り広げた。そして高い身体能力と豊かな表現力を持つアンサンブルたちの人力による‟舞台装置”からも目が離せない。 8名とは思えない、変幻自在な様子はまさしく”文ステ”の華と言えるだろう。
本公演は原作映画を知らなくても十分楽しめるが、リンクする場面も織り込まれているので、ぜひ映画も観てほしい。また、舞台ならではの新たな視点が盛り込まれた今作は、映画を視聴したファンにこそ、見ていただきたいものでもある。その両方を知ることで作品世界により深く入り込めることだろう。
舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』大阪公演は4月18日まで上演。4月23日より東京・日本青年館で開幕、5月5日まで上演。東京公演は全16公演をライブ配信。詳細はHPを。
<ストーリー>
武装探偵社の中島敦は、ヨコハマの路上で奇妙な長髪の男に遭遇する。
過去にどこかで出会った気もするが……?
その頃、武装探偵社では、異能力者が次々に自らの異能を使い自殺するという、
不可解な「ヨコハマ連続自殺事件」の調査に乗り出していた。犯人と目される男の名は、澁澤龍彦。
同時刻、ポートマフィアの芥川龍之介は、澁澤龍彦を追う任務に就いていた。
澁澤は6年前の《龍頭抗争》でポートマフィアと激突し、多数の死傷者を出した凶悪な犯罪者。憎むべき仇敵だ。
だがその任務中、芥川は不可解な霧に襲われる。
霧の中、芥川はポートマフィア幹部である中原中也に新たな任務を与えられる。
このヨコハマに澁澤を招き入れた大罪人――太宰治を殺害せよ、と。
敦たちのもとから姿を消した太宰。
幾多の事件の影に跋扈する魔人・フョードル。
そして、美しくもおぞましい異能力を持つ男、澁澤。
骸砦に集う三超人の思惑が、ヨコハマを深い霧闇に覆う。
「さあ、君の生命力の輝きを見せてくれ」
絡み合う因縁より生まれ出る、さらなる物語。
今、もう一つの「DEAD APPLE」が、壇上で赤き実をなす――。
<概要>
タイトル:舞台「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」
原作:映画「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)」
脚本:朝霧カフカ
脚本協力:内田裕基
演出:中屋敷法仁
協力:春河35
[出演]
中島 敦役:鳥越裕貴
泉 鏡花役:桑江咲菜
芥川龍之介役:橋本祥平
中原中也役:植田圭輔
太宰 治役:田淵累生
フョードル・D役:岸本勇太
澁澤龍彦役:村田 充
大石 樹 岡村 樹 山中啓伍 有光麻緒 浦島優奈 小野塚茉央 小林らら 美守 桃
[大阪公演]2021年4月16日(金)~18日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
[東京公演]2021年4月23日(金)~5月5日(水・祝) 日本青年館ホール
企画:舞台「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」製作委員会
制作:バンダイナムコライブクリエイティブ/ゴーチ・ブラザーズ
公式サイト http://bungo-stage.com/
公式Twitter:@bungo_stage
(C)舞台「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」製作委員会