《インタビュー》 『おあきと春団治~お姉ちゃんにまかしとき~』 サーベル役 金子昇

大阪松竹座 薫風喜劇公演『おあきと春団治~お姉ちゃんにまかしとき~』が7月3日より東京・新橋演舞場で上演される。この物語は明治・大正の大阪を背景に、上方落語の爆笑王として知られている桂春団治とその姉・おあきの運命を描いた作品。脚本は寺田夢酔、演出は筒井庸助。姉のおあきに藤山直美、その弟・桂春団治を西川忠志が演じる。姉弟の父親役に、西川忠志の実父である西川きよし。この中で金子昇は、おあきに一目惚れする巡査・通称サーベル役を演じる。会見後の金子昇さんに役柄について、また作品について語っていただいた。

――出演が決まった時のお話を聞かせてください。

金子:まずは、自分は誰の役をやるんだろう、と。そして春団治さんのお話をやるというよりは、藤山直美さんとお芝居ができるということのほうが僕にとっては嬉しい出来事でした。この世の中ですので、どうなるかわかりませんがお客様を入れて舞台に立ちたいという思いが強かったですね。一日でも稽古できる日を…稽古場にいる事自体が僕にとって楽しみなことですので、今では一日一日を楽しみながら演じていきたいと思っています。

――演じられる「サーベル」という役は藤山直美さん演じる「おあき」に一目惚れをする……という役どころですが、その役の印象は?

金子:最高な役柄が来た!と思いました。僕がいかに、おあきに一目惚れした状況を表現するのか、その瞬間をどうお客様に届けられるか。瞳に描く大きなハートを、観ているお客様に見せられるかを目一杯考えているところです。プラスして射抜かれた瞬間や他にもたくさんいいシーンがあります。おあきと春団治を大好きなサーベルがそこにいたりしますから…今からどうしていこうかと…楽しみで仕方がありません。

――一目惚れする瞬間を演じるのは難しいですよね。

金子:本当に、新喜劇ではないですがズキュン!と撃ち抜かれてひっくり返りたい気持ちでいっぱいなんです(笑)。もう、アニメのように表現するにはどうしたらいいのかと。

――この時代設定ではなかなか見られない表現ですよね。

金子:そこは、演出の方といろいろご相談しながら、企んでいきたいなと(笑)。あとは、観ている方が大好きになるキャラクターだと思いますので、それを大事にして僕が育てていきたいという気持ちはあります。

――共演の方々も、親子で出演される西川さんをはじめ、キャラクターの濃い方が揃っています。

金子:今回、共演するのがほとんど初めてな方ばかり。僕は今46歳なんですが、ここでは年少にあたるんです。久しぶりに新人の気持ちになれるのか、とわくわくしています。(西川)きよし師匠はバラエティ番組では何度か共演させていただいたことがありますが、お芝居は初めてですし。大先輩ばかりなので緊張するかなと思っていましたが、同じ控室で談笑していたらすぐに馴染めました(笑)。

――西川忠志さんは「おちょやん」に出ていましたし、フレンドリーな感じがしますね。

金子:製作発表の日に初めてお会いしたのにも関わらず、僕に気を遣わせない語り口調で、すごいなと思いました。

――今回のお芝居を観たいという方にメッセージを!

金子:座長・藤山直美がそこにいて、“THE”がつく噺家さんの一人である桂春団治さんの演目。この2つがブッキングされたという段階で、すでに間違いのないものに仕上がる確信を持っています。直美さんをはじめ、きよし師匠も出演しますから、笑いの部分は当然のこと人情噺も入ってくる。本当に、コロナ禍で重たい雰囲気のご時世ですが、「何か泣けるし、笑えるし、いいお芝居だよね」と演じている僕らも思いますので、その思いを共感できたらなと。観てよかったなと思ってもらえる舞台ですので、来たほうがいい、と確実に言えると思います!
大阪ではおなじみの人物で、舞台も大阪のお話ではありますが、桂春団治さんのお話は関東でもよさが伝わると思います。成功して、でも全然売れなくて、お姉ちゃんたちのサポートがあった末のようやく売れる。今度は売れたところで盛大に遊んじゃう……アップダウンの激しいこの人生を歩んできた方がいて、そこに、春団治さんのお姉さん、我らが“直美さん”がいらっしゃるので、十分楽しめるお話になっています。東京では今のところオリンピックが重なるスケジュールですが、それに負けない熱さがある作品になりますので、ぜひご観劇いただければ!と思います。

――劇場も、大阪松竹座と新橋演舞場ですね。

金子:僕も楽しみなんです。大阪松竹座さんは何度か立たせていただきましたが、新橋演舞場さんは初めてです。初めての劇場の板の上に立てるというワクワク感がたまらないんです。両劇場によく来られている方も、僕と同じように初めてという方も、ぜひ観に来ていただければと思います。

――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。

※インタビューは2021年4月12日収録。

<物語>
明治中期。おあきと藤吉の姉弟は大阪・高津で父と親子3人で暮らしていた。
父親の友七(西川きよし)は腕は良いが売れない職人、いつも2人にきつく当たっていた。
藤吉も奉公先をクビになったりと手のかかる弟で連日問題を起こし、おあきは振り回される日々を送っていた。
藤吉はある日出会った売れっ子落語家の桂文枝(田村亮)に憧れを抱き、芸人を目指す。
おあき(藤山直美)も藤吉を日本一の落語家にするために生きていく決意をし、二人は手を取り合って支えあっていくことに。
「どんなことがあっても、この手を離したらあかん…」そんな二人を亡くなった友七もあの世から見守っていく。
桂春団治(西川忠志)を名乗り、落語家として歩み始めてからも、藤吉は生来の無茶な性格から時々、揉め事を起こす。
そんな時にいつも手を差し伸べてくれたのは南署の巡査・通称サーベル(金子昇)だった。
おあきに思いを寄せるサーベルはその後もずっと姉弟を支える存在に。
おあきは春団治の無茶な振る舞いすら「軍師」として売り込みの道具にし、その手腕で春団治は売れっ子落語家の道を歩み始める。
おあきはなぜ、ここまで春団治のために生きるのか。姉弟の真の絆とは。

<公演概要>
大阪松竹座 薫風喜劇公演 『おあきと春団治 〜お姉ちゃんにまかしとき〜』
[大阪公演]
日程・会場:2021年5月21日〜6月6日 大阪松竹座  
新型コロナウイルスの蔓延、緊急事態宣言により中止。
[東京公演]
日程・会場:2021年7月3日〜7月26日 新橋演舞場
[出演]
藤山直美

西川忠志
いま寛大
金子昇

大津嶺子
田村亮

西川きよし(特別出演)

松竹公式HP:https://www.shochiku.co.jp/play/
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美