昨年の2020年は新型コロナウイルスの蔓延により、中止となってしまった公演であったが、今年、2021年に待望の新作が上演。この超歌舞伎は2016年の「ニコニコ超会議」で初お目見え、超がつくほどのアナログ、伝統芸能とこちらもまた、超がつくほどの最新技術を駆使したこの全く新しい歌舞伎は大反響、歌舞伎俳優・中村獅童とバーチャルシンガーの初音ミクの共演、アナログ表現と最新テクノロジーの融合で幻想的かつ圧倒的な舞台で、その後順調に回を重ね、その度に技術が進歩。「新しいエンターテインメントイベント」を展開したことが評価され、AMDアワード大賞、ACCブロンズ賞などを受賞。
「ニコニコ超会議2016」で初上演し、歌舞伎俳優とボーカロイドキャラクターの共演という全く新しい歌舞伎の形を実現した「超歌舞伎 Supported by NTT」。第6回目となる今回は、『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』と題し、土蜘伝説(つちぐもでんせつ)を題材に新たに創作された作品。
中村獅童が源頼光(みなもとのよりみつ)と盗賊袴垂保輔(はかま だれやすすけ)の二役を勤め、初音ミクが七綾太夫(ななあやだゆう) 役で初めて悪役に挑戦。また中村蝶紫が山姥茨木婆(やまん ばいばらきばば)役を、澤村國矢が頼光の重臣 平井保昌(ひらいの やすまさ)役を勤める。平将門の忘れ形見である七綾太夫と、源 頼光の戀物語を軸に、山姥茨木婆といった物の怪たちの野望の顛末と、平井保昌と袴垂保輔の活躍を描きながら、物語が展開。
まずは口上、超歌舞伎、堅苦しい口上ではない。リアルに会場ならペンライト、盛大な拍手を、また視聴している観客には”書き込み大向こう”を呼びかける。カメラ目線で「みなさん、準備はいいですか!」 と叫ぶ。超歌舞伎ならではのノリの良い口上。そして初音ミクさんを呼び、ミクさんの口上、慣れた感じで。
オープニングの映像、時は平安中期、平将門、七綾太夫、合戦の風景、これが圧巻。放たれた矢が!!平将門に!!「父上様!!!!」と七綾太夫が絶叫する。全てはここから始まる。とにかく、オープニングがかっこいい。ワクワク感を存分に盛り上げる。七綾太夫は、平将門の娘である滝夜叉姫であり、姫は父将門の恨みを晴らすためには、遊郭の花魁などに身をやつす、浮世絵などの題材にもなっている。色仕掛けで相手に近づく、また将門には7人の影武者がいることに合わせて、七綾太夫という名がついている。また、山姥茨木婆は女郎蜘蛛(じょろうぐも)の精、物の怪である。
とにかく見所が多い!歌舞伎らしいアナログな表現、古典歌舞伎らしい見せ方に最新技術を駆使したステージング、発端の暗闇のなかで宝物を奪い合う〝だんまり〟や、第二場の様式美のある 殺し場。また、2016年の初演から感激しているなら、映像の細部が進化、動きはより滑らかになっている。ミクさんが踊ったり、戦ったりする場面では、着物の裾などの動きが綺麗に、そしてリアルさを増している。〝拍子舞〟のご趣向で、劇中でミクさんが唄いながら踊る場面、戀づくしの長唄を唄いながら踊る場面は可愛く、可憐。スクリーンに映る月や紅葉の葉の揺れ方も美しく、つい見とれてしまうほどで、この映像美が物語をより幻想的にしている。また、蜘蛛といえば、お約束感のある、蜘蛛の糸を飛ばすシーン、歌舞伎でよく使う蜘蛛の糸と映像が見事にコラボし、思わず「おお〜」、また天井からも降ってくるので!!今回、ミクさんは悪役に挑戦、特大の怖いミクさんも必見。
また、この公演では”電話屋”ことNTTの新しい技術が!!!2019年公演では”分身の術”で観客を驚かせたが、今回は…新演出・超越の術!が初披露。超最新のテクノロジー!超歌舞伎らしい!「Kirari!」の最新「スタイル変換技術」を用いた、この“超越の術”。NTTの研究所が開発した超高臨場感通信技術「Kirari!」の 新たな要素技術「スタイル変換技術」を用いて、「本物に命を吹き込み、本物を超える体験を提供する」というテーマ、「スタイル変換技術」、説明が難しいが、任意の画像を参照させ、その描き方などのスタイルをもう一方の画像のスタイルとに反映する、画像処理。クライマックスにて中村獅童演じる源頼光が観客の力(コメント、ペンライトの光など)を纏うことで、新たな力を獲得し自らを超越していく、という場面が誕生。映像を見ると中村獅童の姿にコメントと炎、これを纏ってパワーアップしたかのように見える!!すごすぎて!!一瞬「!!!!!」な感じなので大詰めの場面は、もう瞬き禁止!!
年々、目覚ましい進化を遂げる超歌舞伎、21世紀のテクノロジーの最先端を舞台芸術に生かすことによって、今まで不可能だった表現が可能になる。”演劇はアナログ、ローテクでなきゃ”と思う人もいるかもしれないが、テクノロジーと人力の融合、技術に頼りすぎない、演劇表現の可能性の扉を開く作品。最後は観客と演者が一体になってペンライトを振り、拍手をする、配信で視聴している人は書き込みで盛り上がる。劇中曲は、dorikoの作詞・作曲。ニコニコ動画で約770万回再生を誇り、「歌ってみた」や 「踊ってみた」など6,000件以上の関連動画も投稿されている人気楽曲『ロミオとシンデレラ』、これが驚くほどにマッチ。固定概念にとらわれずになんでもやってみる、「〜やってみる」が大事。そう思える作品であった。
なお、9月の南座公演「九月南座超歌舞伎」では、「御伽草紙戀姿絵」のほか「『都染戯場彩』花の大内 月の吉原 雪の石橋」が披露される。また國矢らが出演する「御伽草紙戀姿絵」リミテッドバージョンも上演。
ゲネプロ終了後、3D空間「DOOR」について説明があった。
ニコニコ超会議のDOORのTOPページにアクセスするとエントランスに入ることができ、そこで南座を”体感”することができる。外観は細部にこだわって再現、内観に入り、近くにいるアバターとチャットできるそう。「DOOR」はNTTが2020年に開設したバーチャル空間。アプリのインストールは不要。
<2019年公演レポ>
https://theatertainment.jp/japanese-play/28673/
<概要>
◆演目名 :『御伽草紙戀姿絵』(読み:『おとぎぞうしこいのすがたえ』 )
◆公演日時:2021年4月24日(土)、25日(日) 各日18:00上演
◆公演場所:幕張メッセ イベントホール
◆出 演 者 :中村獅童、初音ミク
中村蝶紫、澤村國矢、ほか
◆脚本 :松岡亮
◆演出・振付:藤間勘十郎
◆原作・劇中曲:「ロミオとシンデレラ」(作詞・作曲 doriko)
◇主 催 :ニコニコ超会議実行委員会
◇製 作 :松竹株式会社 / 株式会社ドワンゴ
◇製作協力:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
◇超特別協賛/技術協力:NTT
◆公式サイト:http://chokabuki.jp
(C)超歌舞伎 Supported by NTT