講談社「デザート」にて2019年9月号より連載されている『ゆびさきと恋々』、初のミュージカル化となるが、その初日に向けて絶賛稽古中。
『ゆびさきと恋々』は、耳の聞こえない女の子 雪(豊原江理佳)と耳の聞こえる男の子 逸臣(前山剛久)が、手話を通じて心と心が繋がりあう中でお互いの知らない世界を知り、互いに惹かれ合うというラブストーリー。 他、主人公雪の幼馴染 桜志(池岡亮介)、雪の親友 りん(林愛夏)、逸臣の親友 心(宮城紘大)友人であり ながら逸臣に恋心を寄せるエマ(青野沙穂)、皆が集まるカフェ・バー“ロッキン・ロビン”の店長・京弥(上山竜治)らが 憧れや恋心に翻弄されながらも、青春を謳歌する様も本作品の魅力。
稽古も進んできた5月、都内で公開稽古が行われた。
公開稽古の前にヒロイン役の豊原江理佳から挨拶があった。
「この作品は耳の聞こえない女の子と聞こえる男の子のラブストーリーです」とコメント。感染予防で、皆、マスクをしなければいけない状況、口元が見えない状況で、聴覚障がいを持つ方々はコミュニケーションに苦労している。マスクが口の動きや顔の表情を見ながら相手の意図を読み取ることの妨げになっている。豊原江理佳は続けて「声を出さないコミュニケーションは不自由なのではと思っていたのですが、(手話を知って)実はコミュニケーションをとる方法は無限にある、人に伝えたいという気持ちが大切ということを学ばせていただきました。こういう時期だからこそ作品を届けたい」とコメント。
それから楽曲が披露。この作品の基調とも言えるナンバー「わたしの手・あなたの手」。
ピアノの調べが優しい。キャストが次々と登場し、手話を使いながら歌う。この手話が流れるように美しく、それを全員で行うことによって、歌っている歌詞が無限に広がっていくような、そんな印象。手話は言葉、声で発する言葉・歌と指先から繰り出される言葉がひとつになり、観客の心へと漣のように響いていく、短い時間であったが、作品の根幹が垣間見えた数分であった。
<稽古の様子>
それから囲み取材があったが、時節柄、程よく距離をとって行われた。
「言葉の壁だけでなく、あらゆる、すべての壁を取っ払った人間愛が伝わればいいなと思います」(豊原江理佳)
「いろんな状況がある中で、芸能は必要なのか?と言われていますが、医者は病気を治すけど、エンターテインメントは、芸能は心を治す仕事だと常々思います。楽しいことがなかったら生きていけないと思います。豊原さんも言ってましたが、言葉の壁はないんだよっていうことを伝えたい、みんな平等なんだよと舞台を通して伝えたい、エンタメは必要と伝えたいです。見どころは…僕の銀髪です(笑)」(前山剛久)
「もう、登場人物がみんなかわいい!!(一同大笑)」(池岡亮介)
「このミュージカルをきっかけに作品を知りました。雪が勇気を出して自分自身の力で世界を広げていくこと、希望、勇気…見どころは個性豊かな俳優さんが演じるキャラクターになってキラキラ輝くところですので、一人一人のキャラクターに注目していただきたいです」(林愛夏)
「最近の役はバリケード作ってそこから落ちて亡くなるとか(笑)…今回はちょっと恋仲になるかもしれない、キュンキュンする、こういう役は初めてです(笑)」(上山竜治)
「コロナで生活の仕方も変わっていく中で、新しい世界を見せてくれる舞台だなと。片思いする乙女の役ができて嬉しいです」(青野紗穂)
また、キャスト全員、原作を読んでから稽古に入っているが、原作はピュアなラブストーリー。それについて豊原江理佳は「原作を読んだ時は本当にきゅんきゅんして…稽古始まったら恥ずかしくって(笑)」とコメント。
原作は柔らかいタッチの作画でそれこそ胸キュン。「漫画と現実は違うんだ…でも稽古が進んでくると自分の役や他の方の役のパーソナリティがわかり、(作品が)3次元になって歩き始め、立体的になってきた。、世界観を大切にしながら、よりミュージカルならではの素敵な作品になると思います」と語る。
前山剛久は「漫画読んでみて、作画が綺麗で、恋が始まったことを言葉で言わなくても伝わってくるような、繊細な魅力があります。映像だと顔を抜いて表情で表現すると思いますが、あえてミュージカルにするところに魅力を感じます。ミュージカルにするのは難しいですが…雪は言葉はしゃべらないけど、心の中を歌で表現するところがいい」とコメント。
池岡亮介は「本当にみんな可愛くって!舞台になると人間の奥行き、溢れ出る感情、そういうのが伝えられる、精細な原作があるからだと思います」と語るが、登場人物は皆チャーミングで愛おしい。
青野紗穂は「漫画はピュアな自分に戻れる、もどかしいあの気持ち。エマはちょっと大人っぽい役ですが、大学に、学科にこういう子は一人はいたなという女の子です」と語る。
演出の田中麻衣子は「音楽の荻野さん、脚本の飯島さんと丁寧に、作品が目指すものを読み取ろうと、いろんな手段を使いながら模索しています。難しいですが、作品の大事なところ、根幹になると思いますのでコミュニケーションをとりながら精進しています」と語る。手話指導の三浦剛は「妻は聾者でこの芝居の手話指導を一緒にやってます。現実のリアル、お芝居のリアル、夫婦で考えながらやってます。この作品はお涙頂戴は一切ない。元気になって帰っていただける作品を目指しています」と力を込めて語った。
最後に各キャストから改めてPR。
「人に大切なことを伝える、それを行動に移してもらう、行動を起こすきっかけになれば」(豊原江理佳)
「芝居見てよかったな、とか生きれるなとか思っていただくこと、これが一番望むことです。キャスト全員が手話や聾者のコミュニケーションも勉強し、SNSで手話の動画も上げています。言葉がなくてもつながっている、本番で伝えていけたら」(前山剛久)
「素直になれない人たちが懸命に乗り越えようとする姿を是非見て!温かくなれる、癒されると思います」(池岡亮介)
「ミュージカルっていいなということを届けられたら」(林愛夏)
「ミュージカルは魔法を使える芸術。心の声を歌にすることができる、この魔法を!豊原さんの声はピュアでまっすぐで心にくる、ミュージカルにした意味を感じられる。是非、配信もあるので楽しんでいただけたら」(上山竜治)
「伝える力はいろんなものを乗り越えるエネルギーになる。このご時世でなかなか触れ合えないですが、それを乗り越えて人の温かみを届けたいです。劇場に足を御運び下さい」(青野紗穂)
作品の奥底に流れる、人を愛すること、人と人とのつながりの大切さを伝えるミュージカル作品であることがよくわかる時間であった。公演は6月4日より、会場は本多劇場。
■原作情報
『ゆびさきと恋々』森下suu
講談社「デザート」にて2019年9月号より連載を開始。第1話からSNSで大反響。1巻発売後たちまち25万部突破。繊細な言葉選びや登場人物の表情、手の動き、文字表記に至るまで、圧倒的な表現力に引き込まれる。「第11回ananマンガ大賞」、BookLive!「年刊書店員すず木2021」オンナ編第1位、宝島社「このマンガがすごい!2021」オンナ編第9位、「次にくるマンガ大賞2020」第17位を獲得。その他の著者代表作に『日々蝶々』、『ショートケーキケーキ』、『わかメン~The Mineral Boys~』など。
◎あらすじ:
女子大生の雪は、ある日困っているところを同じ大学の逸臣に助けてもらう。
聴覚障がいがあって耳が聞こえない雪にも動じることなく、自然に接してくる逸臣。
自分に新しい世界を感じさせてくれる逸臣のことを雪は次第に意識し始めて…!?
◎作品公式サイト:https://go-dessert.jp/kc/renren/
☆コミックス最新4巻
「ゆびさきと恋々」(4)
著:森下suu
出版社:講談社(KC デザート)
発売 2021年3月12日
<公演概要>
A New Musical『ゆびさきと恋々』
日程・会場/2021年6月4日(金)~13日(日) 本多劇場
原作/森下 suu「ゆびさきと恋々」(講談社「デザート」連載)
脚本/飯島早苗 音楽/荻野清子
演出・脚本/田中麻衣子
振付/前田清実
キャスト/豊原江理佳、前山剛久、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、宮城紘大、上山竜治 ほか
主催・企画・製作/ワタナベエンターテインメント
公式サイト:http://yubisakimusical.westage.jp
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