《インタビュー》A New Musical『ゆびさきと恋々』演出・脚本 田中麻衣子

A New Musical『ゆびさきと恋々』が6月4日から本多劇場にて開幕する。原作は講談社「デザート」にて2019年9月号より連載。
この作品は、耳の聞こえない女の子 雪(豊原江理佳)と耳の聞こえる男の子 逸臣(前山剛久)が、手話を通じて心と心が繋がりあう中でお互いの知らない世界を知り、互いに惹かれ合うというラブストーリー。 他、主人公雪の幼馴染 桜志(池岡亮介)、雪の親友 りん(林愛夏)、逸臣の親友 心(中山義紘)友人であり ながら逸臣に恋心を寄せるエマ(青野紗穂)、皆が集まるカフェ・バー“ロッキン・ロビン”の店長・京弥(上山竜治)らが 憧れや恋心に翻弄されながらも、青春を謳歌する。稽古も進んできた5月、都内で公開稽古が行われたが、その後、演出を担う田中麻衣子さんのインタビューが実現した。

ーー今回の演出についてですが、コミック原作、さらに手話を使いますね。

田中:コミック原作は初めてです。手話も出てくるんですけれど、ろう者の方の言葉をミュージカルで表現するということは大きな挑戦でした。音楽の荻野さん、プロデューサーの(渡辺)ミキさん、振付の前田清実さんらと話していく中で、「この作品は今までにない作品に仕上がるのでは」ということ、そしてこのチームで組めば目指せるものが創れるのではないかという確信のようなものに変わっていきました。表現方法を含めて探す作業自体が、とても魅力的に思えたのです。

ーー公開稽古では一曲披露していただきましたが、手話の動きがとてもビジュアル的にきれいですよね。

田中:私が手話に関して興味を持ったのは、以前、文化庁の在外研修でロンドンに行かせていた際に、オリヴィエ賞のイベントで下手側に手話通訳の方がずっといらして、出演者と同じように歌って躍っているような手話をされていました。そのときに手話も言語であり、感情表現であり、音楽だな、という印象が残りました。伝わってほしい、届いてほしいという願いを込めながら稽古をしています。セリフも、歌も、手話も。原作は登場人物の表情や仕草もとても綺麗です。もしそれを言葉にするならばこうだろうか、というのが繊細なモノローグで描かれている。それを何とか具現化する、というのも今回の作品の魅力の一つだと思います。美しい音楽だったりピアノだったり、歌声だったり……様々なミュージカルの手法で原作の世界観を形にすることへの挑戦ですね。

ーー曲調も優しい感じなので、漫画のイメージとフィットしていますね。イメージを重ねるところはだいぶ苦労されたと思いますが……。

田中:雪はミュージカルでは歌います。心情を歌にできるのはミュージカルならではですが、全員で繊細に扱いながら心の声を表現する方法を探しているところです。

ーー最後にメッセージを!

田中:本当に素晴らしいクリエイター陣と、ミュージカル界のこれからを担うキャスト陣。その掛け算になっている作品です。キャスト陣は唯一無二の人が揃っていると感じています。日々コミュニケーションを取りながら、作品にも原作にも音楽にも、すべてのことに誠実に向き合えたらと思っています。この状況で公演を行うということの責任と覚悟も含めて、感染対策をしたうえで、劇場で是非観ていただきたいと思います。この機会は逃してほしくないと思っています。

ーーありがとうございました。公演を楽しみにしております。

■原作情報
『ゆびさきと恋々』森下suu
講談社「デザート」にて2019年9月号より連載を開始。第1話からSNSで大反響をよび、累計120万部を突破。繊細な言葉選びや登場人物の表情、手の動き、文字表記に至るまで、圧倒的な表現力に引き込まれる。「全国書店員が選んだおすすめコミック」少女漫画部門第1位、「第11回ananマンガ大賞」大賞、BookLive!「年刊書店員すず木2021」オンナ編第1位、宝島社「このマンガがすごい!2021」オンナ編第9位を獲得。その他の著者代表作に『日々蝶々』、『ショートケーキケーキ』、『わかメン~The Mineral Boys~』など。

◎あらすじ:
女子大生の雪は、ある日困っているところを同じ大学の逸臣に助けてもらう。
聴覚障がいがあって耳が聞こえない雪にも動じることなく、自然に接してくる逸臣。
自分に新しい世界を感じさせてくれる逸臣のことを雪は次第に意識し始めて…!?

◎作品公式サイト:https://go-dessert.jp/kc/renren/

☆コミックス最新4巻
「ゆびさきと恋々」(4)
著:森下suu
出版社:講談社(KC デザート)
発売 2021年3月12日

<公演概要>
A New Musical『ゆびさきと恋々』
日程・会場/2021年6月4日(金)~13日(日) 本多劇場
原作/森下 suu「ゆびさきと恋々」(講談社「デザート」連載)
脚本/飯島早苗 音楽/荻野清子
演出・脚本/田中麻衣子
振付/前田清実
キャスト/豊原江理佳、前山剛久、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、中山義紘、上山竜治 ほか
主催・企画・製作/ワタナベエンターテインメント
公式サイト:http://yubisakimusical.westage.jp
ワタナベ演劇公式ツイッター:@watanabe_engeki
ワタナベ演劇 スタッフ公式インスタグラム @watanabe_engeki_staff
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美