川井郁子が奏でる新しい舞台 奏劇「月に抱かれた日~ガラシャとマリー・アントワネット~」特別映像試写会レポ

越境音楽家・川井郁子アルバムデビュー20周年記念公演が12月遂に上演することになった。

この作品において川井郁子は総合プロデュース、演出・構成・音楽とマルチに手がけているが、音楽表現の可能性を追求し、音楽そのものの可能性を広げる「越境音楽家」というアイデンティティを見つめ直し、川井郁子が舞台芸術のUnframedな新しいかたちを創造。音楽とダンス、 そして立体ホログラムやCGを駆使した最先端の映像技術と豪華コラボレーション。“Unframed(アンフレームド/枠にとらわれない)”というアイデンティティを見つめ直し、魅力と才能が凝縮した新しいスタイルの音楽舞台、挑戦的な舞台となっている。
公演は12月14、15日、新国立劇場の中劇場にて上演されるが、それに先駆けてこの舞台作品の特別映像試写会が行われた。

この試写会の前に川井郁子のヴァイオリン生演奏、曲は、「愛のあいさつ」エルガー、「カノン」パッヘルベル。カノンでは長女の川井花音と親子で。川井花音はギター、親子ならではの息のあった演奏を聴かせてくれた。

それから、簡単なトーク。この作品に出演の三井高聡が登壇。川井花音と同い年で幼稚園が一緒だったとか(ただし、覚えていない、とのこと)。三井高聡は細川護熙元首相の孫にあたる。自身の先祖である細川忠興役の幼少期を演じる。そして川井花音は幼少期の細川ガラシャを演じる。三井高聡は初舞台「楽しむというより緊張が勝っていた」といい「(それでも)楽しくできたと思います」とやや照れ気味にコメント。川井花音も「演劇ともミュージカルとも違う不思議なジャンル。何をお手本にすればいいか、わからないので、(しかも)台詞もないので難しかった」といいつつも「カメラにどう映っているかを初めて見まして、どんどん改善していきました」と語った。
また、三井高聡は自身の先祖である細川忠興役であるが、「目白に永青文庫という美術館があり、そこでご先祖様のものを拝見させていただきました。また、両親や祖父母からご先祖様については聞いていたので、よく知っています」と語った。細川ガラシャ役の花音は「ガラシャは歴史上に出てくる数少ない日本の女性。自分からクリスチャンになったり…新しくて勇気のある女性だったと思います」とコメントした。
12月に本番を迎えるにあたり、三井高聡は「本番には意外と強いほう。うまく演じられるように頑張ります」と抱負を。川井花音も「12月まで、まだ何ヶ月もある、お母さんだからこそ、どういうふうな舞台にしたいとか、どういうふうにしたいとか話し合えるので、もっといい演技ができたら」と意欲を。

この作品は、激動の時代に散った二人の女性、細川ガラシャ、マリー・アントワネットの不思議な縁を描いている。時代も国も違うのに?と思われるかもしれないが、細川ガラシャの波乱万丈に満ちた人生は海を渡ってヨーロッパのハプスブルク家に伝えられていた。細川ガラシャは天正6年8月、勝龍寺城に輿入れ、しかし、父である明智光秀が織田信長に対して謀反を起こし、本能寺の変で織田信長を討ち、山崎の戦いの後に没したため、ガラシャは「謀叛人の娘」となる。ここでは輿入れから、改宗、そして死。壮絶な最後を遂げた細川ガラシャは、イエズス会の宣教師から殉教の実話として本国に伝えられ、1696年には、細川ガラシャをモデルとした音楽付の戯曲「勇敢なる貴婦人」が、オーストリアのハプスブルク家のために上演されている。細川ガラシャは1600年に死去しているので、実に100年近い時を経て、ヨーロッパに彼女の人生が伝えられたことになる。彼女を描いたこの作品は、ガラシャの死が殉教として描かれている。王妃マリー・アントワネットの子供時代にもこのオペラは上演され、ガラシャの凜とした生きざまに感動したマリー・アントワネット。彼女が残した名言の中にも、このオペラの影響とも思えるものがある。まさに時空と国境を超えた縁、である。

三井高聡の細川忠興と川井花音の細川ガラシャ、幼少期を演じているのだが、その初々しさはリアリティを持ってそこに居る。最先端映像と音楽、ヴァウオリンと日本古来の楽器のハーモニー、日本の音楽、西洋のいわゆるクラシック音楽というジャンルにとらわれない、楽曲・音色。映像演出が幻想的でファンタスティック、異次元の世界に引き込まれていく感覚。21世紀の舞台技術を駆使し、全く新しい舞台を創造。

気高く、運命に翻弄された細川ガラシャ、その影響を受け、最後まで気丈に振る舞ったと言われるマリー・アントワネット。試写会では、その一部が映像で紹介されたわけであるが、12月の公演ではどのように進化するのか、楽しみな公演である。
ちなみに細川ガラシャが詠んだ辞世は「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」。

<物語>
1793年、パリ。 牢獄に囚われたマリー・アントワネットは、少女の頃に観たオペラを回想している。 それは遠い異国の「強き貴婦人 ガラシャ」の物語。 「ガラシャのように、私は誇り高く最期を迎えられるのだろうか」 すると、鳥を抱いた不思議な看守が現れ、ガラシャのところに案内すると言う。 鳥に導かれた先には、夫から幽閉された山奥で、不信に塗れ、絶望するガラシャの姿があった…。

<公演概要>
川井郁子 Unframed Opera
奏劇「月に抱かれた日~ガラシャとマリー・アントワネット~」
日程:12月14日、15日
場所:新国立劇場 中劇場 他 大阪等にて開催予定
出演:川井郁子、藤舎推峰、川井花音、三井高聡 他
制作総監督・企画・演出・音楽:川井郁子
脚本:森下佳子
公式 HP:https://ikukokawai-unframed.com/
※チケット情報は後日.
川井郁子公式HP:http://www.ikukokawai.com