《インタビュー》舞台「信長の野望・大志 〜最終章〜 群雄割拠 関ヶ原」 脚本・演出:久保田唱(企画演劇集団ボクラ団義)

舞台「信長の野望・大志」がシリーズ第五弾にしてついに最終章を迎える。2018年に初舞台化、第一弾公演「信長の野望・大志 -春の陣- 天下布武 ~金泥の首編~」、第二弾公演「-冬の陣- 王道執行 ~騎虎の白塩編~」、第三弾「夢幻 ~本能寺の変~」、第四弾公演「-零- 桶狭間前夜 ~兄弟相克編~」を上演。今回の第五弾は、本来は昨年、2020年に上演されるはずだった公演だが、今年、満を持しての上演。しかも織田信長も明智光秀もいる「関ヶ原の戦い」が描かれる。
原作はコーエーテクモゲームスの「信長の野望」シリーズ。1983年に発売されたゲームで、ここから歴史シュミレーションというジャンルが確立された。この舞台の第一弾から脚本・演出を手がけている久保田唱さんのインタビューが実現、このゲームへの熱い思いや今回の舞台の見どころなどについて語っていただいた。

――初舞台化が決まったときの感想を。

久保田:『信長の野望』は小学生の頃から好きなゲームでして。僕は1984年生まれなんですけれど、ほぼ同じ年に誕生しているんです。さらに言えば戦国時代を好きになったきっかけでもありますから、その作品の舞台化に携わることができたのはうれしかったです。

――何度か舞台化を重ねてきて、今回は最終章。しかも本来は織田信長も明智光秀も生きていないはずの関ケ原の戦い。

久保田:そうなんです。今回も登場する武将の数はとても多いですよ。いわゆる「ifもの」ではあるんですが、どういうものが「信長の野望」にふさわしいか。何がすごくロマンがあるかな、と考えて「本物の歴史をなぞらえながらも、ほんの少し史実とずらす」という結果に至ったんです。織田信長が死なない本能寺の変であったり、信長が立つことがなかった関ヶ原の戦いであったり。そんなことがあったらロマンがあるなと一番最初に舞台化したときから思っていたことなんです。もともと僕が「戦国の三大事件」だと思っていたのが桶狭間の戦い、本能寺の変、関ヶ原の戦いの3つでしたから、これは描かないと!『信長の野望』の舞台においては、浅井長政との戦いから始まったので、桶狭間~は終わってしまっているわけです。その中であっても、前述の3つに必ず触れていきたいと思っていました。一回目は浅井長政との戦い、二回目は武田家、三回目は本能寺の変、四回目はさかのぼって桶狭間をやって、最後は関ヶ原を描こうというのは当初から考えていたことでした。

――舞台『信長の野望』はゲームに沿いつつもやはり時代劇。そこも踏まえての見どころを聞かせてください。

久保田:そこなんですが、まず、明智光秀は勢力が不明。三回目の本能寺の変で死んだと思われていた人物です。しかもそのときに信長の敵のような立場でしたが、「織田信長をやはり好きで、最後は助けたい」という心があった。その明智光秀がなぜまた出てくるのかというのがそもそも謎なわけです。そこが一番の見どころなのではないかと思います。ただこの舞台は全てのシリーズでダブルサイドストーリーにしています。一つの舞台なんですけれど、見る回によって視点が変わるようになっていて、紅血(SIDE織田)と紫炎(SIDE明智)の2つがあります。サイド明智が用意されているくらいですから、明智光秀に何が起こったのか、どっちにつくのかというところを含めて注目していただきたいです

――やはり、明智光秀はキーマンなんですね。

久保田:そうですね。ただ、今回は今まで登場してきた武将たちがみんなキーマンといっても過言ではないかと。そこも見ていただければいいなと思っています。

――そうなると、歴史好きな人にとっては、関ヶ原の戦いはもはや定番なので、それぞれいろいろな見方があると思います。

久保田:関ヶ原の戦いは、本来なら徳川家康と石田三成、徳川と豊臣の戦いなんですが、今作では、そこにもともとの大将である織田信長がいる。さらに、織田信長の弟で、桶狭間より前に死んだはずの織田信行の軍も生きている。すなわち四つ巴の戦いが繰り広げられるわけです。なので!誰も見たことがない関ヶ原ですし、歴史好きの方からしたら受け入れてもらえないんじゃないかというドキドキ感があります(笑)。とはいえ、何で四つ巴になるのかということも描いているので。こんなことがあったらおもしろいなと、考えてもらえる関ヶ原になっているのではないかと思います。

――キャストの方々についてはいかがでしょうか。

久保田:今回延期公演ということで、スケジュールの都合上何人か出られなくなってしまったのは残念ですね。でも、最初からずっとやらせていただいている人もいらっしゃるので、そこは楽しみです。『信長の野望』という座組自体が一回目からまとまった印象なんです。人数が多いにも関わらず、こんなにまとまった座組は珍しいのではないかと思いました。二回目三回目と会うたびに同窓会のようでしたし、新しいキャストに対しても、クラスの転校生みたいな雰囲気があったりします(笑)。毎回、結束感のある座組がまた集まれるというだけで、かなり楽しみですね

――最後にメッセージを。

久保田:まず、歴史や時代劇が苦手な方もいらっしゃると思うんです。なんとなく日本史の授業というか、勉強が嫌だった学生時代を思い出してしまう人もいるかもしれない。ただ、僕にとっては戦国時代イコール『信長の野望』、すなわち遊びの一貫だった。難しい歴史というよりかは、昼ドラのような(笑)。憎悪が渦巻く場面があったり、描かれていること自体は現代でも通じるものですし、ゆえに実は敷居がそれほど高くないんです。とはいえ『信長の野望』舞台化は5回目なんですよね。これまで観たことがないから入っていけそうにないと思う人であっても、今作から見たとしても内容はわかりやすいものになっていますし、それまでのストーリーに興味がわく作りにもなっています。それについては過去の映像もありますから(笑)。さらに言えば、今回もダブルサイドストーリーであり、片方観ただけでは物語の全容が明らかにならないので、こういうご時世だから厳しいかもしれませんが、ぜひ両サイド観て、物語を完結していただきたいと思っています。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

[イントロダクション]
現代の記憶を持ちながら戦国を生きる織田信⻑。そして信⻑と同じく本来の歴史を知りながら自らの天下を狙う武将達。
VS武田&上杉、さらには本能寺の「乱」をも生き残った織田信⻑を待ち受けたのは、 本来の戦場では”敵”として顔を合わせることのなかったはずの英雄たちが集結する関ヶ原の大地。 そこには、本能寺の「乱」で爆発の炎に包まれたはずの明智光秀の姿もあった…。
織田信⻑の視点で、関ヶ原の紅い大地を駆ける<SIDE 織田 紅血>と、
明智光秀の視点で、私怨と葛藤に生きた男の紫色の想いを語る<SIDE 明智 紫炎>。
シリーズおなじみのWサイドストーリーで描かれる新戦国時代。
戦国を彩る武将と姫の物語。

<概要>
日程・会場:202年7月23日(金)〜7月29日(木) かめありリリオホール
原作:コーエーテクモゲームス
脚本・演出:久保田唱(企画演劇集団ボクラ団義)
出演:
(織田信⻑家)
織田信⻑ 鶏冠井孝介 お市 田中れいな 茶々 早乙女わかば 上杉謙信 根本正勝 前田慶次郎 友常勇気 浅井⻑政/重政 釣本南 柴田勝家 鵜飼主水 丹羽⻑秀 中村ヒロユキ
(織田信行家)
織田信行 沖野晃司 池田恒興 松本慎也 林通具 黑木文貴 松永久秀 南翔太
霞 坂本遥奈 真田幸村 松島勇之介 伊達政宗 横尾瑠尉 愛姫 内木志
(豊臣家)
豊臣秀吉 後藤健流 ねね ⻫藤レイ 石田三成 尾崎尉二 黑田官兵衛 幸村吉也 島津義弘 杉江優篤
(徳川家)
徳川家康 輝山立
井伊直⻁ 緒月遠麻
石川数正 坂垣怜次
本多忠勝 白柏寿大
井伊直政 松村優
望月祐治 佐竹義重
笠原織人 高田紋吉
(その他の勢力)
今井宗久 彦摩呂 お橋 内藤好美 お焦々 荒澤守 本願寺顕如 吉田宗洋 足利義昭 加藤凛太郎
(勢力不明)
明智光秀 谷佳樹
(アンサンブル)
太田達也 橋本直也 内海一弥 りゅう 溝口雄大 矢澤梨央 盛一季美

公式 HP:https://nobunaga-stage.com/
公式Twitter:@nobunagastage

©コーエーテクモゲームス All rights reserved.

構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美
舞台写真:2019年 舞台「信長の野望・大志 夢幻 ~本能寺の変~」 公演より

※「信長の野望•大志」の「・」は正しくは半角です。