ラッパ屋 第46回公演『コメンテーターズ』今を生きる、今を考える、今を思う。

ラッパ屋の新作、『コメンテーターズ』が好評上演中だ。この作品はひょんなことで、Youtuberとなったリタイア男性が、あれよあれよという間にワイドショーに出演することになって…という内容。
前説は、なぜか出演していない福本伸一が行うが、ここから、ちょいお可笑しみがあって、”本編”のウオーミングアップにはちょうど良いので、早めに席に着くことを勧めたい。
生ピアノの演奏、お洒落、ストーリーテラーは主人公の横ちゃんの息子・横沢悠太、年齢35歳、子供部屋にいる、子供部屋おじさん(笑)。リタイアした横沢広志(通称:横ちゃん)が暇に任せて、なんとなく始めたYoutuber、儲かるらしいと聞かされてちょっと嬉しそう、様々なPC用語があるが、その用語すら知らない、そんな彼が自撮り棒を購入、軽いノリで!可愛いぬいぐるみのワンコと共に!ソッコーで反応が!楽しくなった横ちゃん、彼に思わぬ白羽の矢が!!!タイトルにもあるように、そう、ワイドショーのコメンテーターに抜擢されてしまった!!


劇中ワイドショー、演劇なので虚構には違いないのだが、描かれている時期は、ついついこのあいだのこと。よって劇中ワイドショーの内容が、リアル!今年5月にテレビで盛んに論じられたネタが出る、出る。そこで観客はちょい過去を思い出す。また、そこで出てくる小ネタがクスリと笑える内容で、客席からは頻繁に笑いが起こる。また、ワイドショーらしい、”見せる”演出、ソーシャルディスタンスの距離を保ちながら、マスクをして、思い切りいい合う。

ヒートしすぎて思わず接近!すると周囲が止めに入る。また、ワイドショーにつきものの”ちょっと息抜き”コーナーっぽいところでは、北村岳子と黒須洋嗣が、ミニショーを!黒須洋嗣のダンスのキレ具合と北村岳子の歌唱に、舞台上のコメンテーターたちと共に拍手したくなる。

そして劇中ワイドショー、内容がだんだん現在に近くなってくるに従って、コロナやオリンピック問題ネタ、観客の記憶が新しいどころか、ついこの間のこと。そしてまた、ありがちな人気司会者のゴシップなどの出来事を挟み込んで舞台は進行する。コメンテーターを全力でやる横ちゃん、平たく言えば、コメンテーターになるまでは、流れに身を任せ、チコちゃんじゃないが「ボーーっと生きていた」ごくごく普通のオヤジ。コメンテーターになってからも、その雰囲気は変わらないが、本人も気がつかないような変化が出てくる。それを観客はストーリーテラーの息子と共に見守る。
昨年から新型コロナウイルス感染症の蔓延で変わってしまった日常、なんとなく納得できないことがちょこちょこと続き、どこか諦めと達観ムードが漂う昨今。この物語に登場する人々は観客と等身大。笑いつつも、自分ごとのようにちょっとシニカルでありながら、そして今の世相を鋭い視点で提示するのは、ラッパ屋の真骨頂であるが、どこか温かい。基本、喜劇、よって横ちゃんたちは落ち着くところに落ち着くのだが、その着地点がなんとも言えず、ほんわかとした気分になる。また、コメンテーターの面々が!政治評論家、弁護士、ジャーナリスト、医師、パン屋(笑)etc.どこかにいそうな感じで!佇まいからして、クスッと笑えるところもラッパ屋らしい。
なお、7月25日の千秋楽はオンラインLIVE配信が予定されている。アーカイブも用意しているので、劇場でリアルに見たけど、もう一度見たい、あるいは、今回は劇場へ行く時間がない、という方は配信を!

【鈴木聡 開幕オフィシャルコメント】
ワイドショーの話なのでコロナやオリンピックの話題も。コメンテーターに抜擢されたオヤジの星・横ちゃんが、混乱する世界で、俺はどう生きるか、を必死で考えます。劇場で皆さんと「いま」を共有したいです。

<ラッパ屋 第46回公演『コメンテーターズ』 公演概要>
日程・会場:7月18日~25日 紀伊國屋ホール
脚本・演出:鈴木聡
音楽・演奏:佐山こうた
出演:
おかやまはじめ 俵木藤汰 木村靖司/弘中麻紀 岩橋道子 ともさと衣 大草理乙子
/谷川清美(演劇集団円) 瓜生和成(小松台東)
/北村岳子
/中野順一朗 浦川拓海 青野竜平(新宿公社)
/黒須洋嗣 佐山こうた/宇納佑 熊川隆一 武藤直樹

公式HP:https://rappaya.jp/
舞台写真撮影:木村洋一