《公演中止》 イケメン戦国THE STAGE ~連合軍VS“戦乱の亡者”雑賀孫一編~ レジェンドステージ 総合プロデューサー 黒谷通生

「全世界でのシリーズ累計会員数3500万人」の大人気スマホ恋愛ゲーム「イケメンシリーズ」の『イケメン戦国◆時をかける恋』を原作とした舞台版、この2021年で第7弾となる。初演は2017年、そこから順調にシリーズを重ねてきた。第7弾は舞台オリジナルキャラクターとなる『雑賀孫一』に織田&武田・上杉軍が立ち向かうオリジナルストーリーとなる。また、舞台初登場となる前田慶次と直江兼続も参戦する。
この作品の総合プロデューサーである黒谷通生さんに舞台化のきっかけ、また初演時の思い出、作品自体の面白さなどをお伺いした(インタビュー収録は7月下旬)。なお、この公演はコロナ禍で残念ながら中止となってしまったが、作品やエンタメに対する思いをお伝えすべく、掲載。

――2.5次元では歴史モノは定番とも言えますが、中でも『イケメン戦国』を舞台化しようと思ったポイントは?

黒谷:僕は『THE CONVOY SHOW』のプロデューサーとしてずっと、十何年携わってきまして。更に精進を重ねるためにLEGEND STAGEを立ち上げたんですが、やはり『THE CONVOY SHOW』的なスタイルのエンターテインメントが好きですから、その流れでオリジナルをやろうと思っていました。それで、その中でも自分が時代劇が好きな面がありまして。やっぱり、時代劇って衣装も艶やかですし、立ち振舞いも踊りも美しく見えますし、少しあこがれみたいなものがあったんですよね。その中で、蒼井翔太さんに出ていただいた「かぐや姫が実は男だった」をテーマにした『PRINCE KAGUYA』とか、「吉宗は暴れん坊じゃなかった」をテーマにした『春風外伝』をオリジナルで作ってきました。というときに、たまたまいろいろな人々のめぐり合わせがあり、こんな作品があるよとご紹介していただいたのが『イケメン戦国』でした。これまで自分がやってきた作品とコンセプトも近くて、自分の想像力を掻き立てる作品だと思ったんです。
いわゆる歴史上の人物って、実は生きた世代がずれていて。有名な武将たちが全員重なったことってないんですよ。でも、それが一同に介したらこんな面白い設定ができるんだって。それで、絶対これは面白くなるぞ、という自信があったし、僕がそれをもっと面白くできるという自信もあった。原作のサイバードさんにうちのオリジナル舞台をご覧いただいて「レジェンドステージさんだったら、絶対に面白くしていただけそう」とありがたいお言葉を頂き、それからぜひに、ということで結びついたんです。

――例えば「織田信長が本能寺の変のあとも生きていたら……」というifストーリーがあるのがおもしろいなと感じました。

黒谷:ありがとうございます。僕自身、サイバードさんの『イケメン戦国』を好きなポイントが、「恋愛がある」ところなんです。僕は、お芝居ってやっぱり「色恋」の話がないと物足りないって思うタイプなので。恋愛がドラマをおもしろくしてくれるというか。そこがやっぱり大きいポイントですね。

――2.5次元でヒットしているのは恋愛ゲームのものが多いですしね。

黒谷:そうなんですよね。一方で戦を重厚に描くような作品は、たくさん上演されていますし。それと同じことをしても自分らしくないなと思ったので、うちはうち流の作り方をしていこうと思いました。

毛利元就編

――実際に、上演してみての手応えは?

黒谷:本当に、最初は手探りだったんです。そのころ2.5次元という言葉が出始めていたんですが、他の作品にはないような原作物の舞台化のスタイルを作ってみたかった。
今でこそ、アニメとか漫画をきちんとそのままなぞって作ったほうがお客様には喜ばれる傾向にありますが。『イケメン戦国』は恋愛ゲームですから、声の演技はあるものの、キャラ絵はスチルのみで動く映像がなかった。それで原作のサイバードさんと「ちょっとオリジナルテイストを入れてみませんか」というお話もしていまして、担当者の方も好意的に受け取ってはくれてくださっていました。そこで、ビジュアルにオリジナリティを入れたら……ものすごく評判が悪かったんですよ。ただし、そのおかげでビジュアルに関しては原作通りがマストなんだ、と気づいた。作り方についてはすごく勉強になりましたね。ビジュアルよりも中身を練り上げることが大事だと。
そして、博品館劇場での公演でしたので、これは自ずと当たるかどうかもわからないし、予算も限られていたし、という状況でしたが、クオリティは絶対に落としたくはなかった。赤字覚悟で、いろいろ僕の知り合いのスタッフさんにも「力を貸してほしい」と頭を下げて。照明とか、音響とか、衣裳には手を抜かずに挑んだんです。その結果、蓋を開けてみれば「おもしろかった」という言葉をいただけたので胸をなで下ろしました。僕の頭の中では、一番目の(真田)幸村、二番目の毛利(元就)、と来て三番目に満を持して織田信長がやってくる、という流れができていました。劇場も博品館で二回、信長が出てくる三回目はシアター1010とだんだんと規模を大きくする事ももうすでに決めていて、攻めの姿勢をとっていました。結果、その三回でお客様に喜んでもらえたことで、『イケメン戦国 THE STAGE』というシリーズが定着していったんだと思います。
この作品ってすでにタイトルに“イケメン”とついていますからね(笑)。それに皆さんものすごく敏感な反応をされるんですよ。どんな劇場でもこのタイトルで借りようとするとちょっと眉をひそめられた事もありました。やはり、アニメやゲームの舞台化をお好みでない人も中にはいますから。でも、僕はむしろそのあからさま感が気に入っていて。そんなタイトルの作品のイメージからこの内容が?と思われると「しめしめ」みたいな。ですからタイトルに自信を持って内容に関しては絶対に手を抜かずに、濃く!濃く!すごく濃くしていったんですね。

――たしかに大半の人はタイトルからは本格的な時代劇が想像できないかもしれませんね。むしろいい意味でギャップが生まれそう。ちなみに、織田信長編では公演によって違うパターンのエンディングも用意されていましたが、作る側としては大変なのでは?

黒谷:作る側もスタッフもそうですが、役者が大変なんです。本来、ゲームでは複数のルートがあるものなので。お客様からすれば「こっちのエンドも見たいし」というものがあったはず、ということで作り始めたんですよね。最後だけ違う、というスタイルではなくて、お話も途中の殺陣とかもすべて変えたりしていたので、スタッフも役者も、本当に大変だったと思います。

織田信長編情熱ルート

――たしかに、役者さんとしては台本を複数覚えるのは大変だったでしょうね。そこはやっぱり、ゲームを知ってから舞台を観る人の要望に答えたと。

黒谷:そうですね。ゲームだとこうだったけど、舞台だとどうなんだろうという…それに、どちらのエンドも知りたい、と観に来てくださる方もいますし。

――また、キャスト陣についてはいかがでしょうか。とくに、織田信長役の小笠原さんはずっと出ていらっしゃいますから、小笠原さんを見ると「信長がいる」と思ってみたり……。

黒谷:そういう風に思っていただけるのがすごいありがたいんです。小笠原さんには「君が変わったら、この作品すべてが変わってしまうんだ」ということをさんざん話していますからね。それに「君が引退するときは、みんな一緒に卒業だから」ということも(笑)。
『イケメン戦国 THE STAGE』も、もう長いことやっていますから。すでに「戦ステ劇団」みたいなファミリーが出来上がっているんです。それが好きで見てくださる人もいるし。キャストたちの関係性を楽しみにしてくれている人もいる。定番のボケやツッコミが飛び出すことを、お客様からは「待ってました」的に思っているみたいで。受け入れられているんだというのを如実に感じますね。
それに、座組自体も稽古が始まった時点ですでに和気あいあいとしていますよ。そういったものがあるからこそ、息のあったお芝居ができていますし。実は、ちょっとコントみたいなところは、役者自身が考えて、演出に提案してもらって生まれている事もあるんです。こっちで作ったものを渡しているわけではない。なので、みんな自由に作っているみたいです。さすがに、原作にあるシーンは壊せないですが、ある程度は役者自身にまかせているところはあります。

織田信長編幸福ルート

――あとは、今回は新キャラもいますね。前田慶次、直江兼続といった。特に直江兼続はゲームでは昨年実装されたばかり。

黒谷:だから、ファンの方も期待してくれているみたいですね。キャスティングもやっぱり手を抜けないですから。それがしっかり当てはまると観てくださるお客様にも「本腰を入れているな」って思ってもらえるようで、手応えを感じます。

――それでは、最後にメッセージを。

黒谷:原作モノの舞台化としては異色な、まったく違った感じの作り方をしていますので、観たことがない方はぜひ、一度観ていただければハマると思います。ビジュアル面でもそうですし、会話のおもしろさ、音楽、役者同士の関係など観れば観るほど引き込まれていくものがあります。熱量が半端ないので! 自分もその場にいるような感覚、ライブ感を楽しんでいただけると思います。キャスト全員で作り出す、体を張ったパフォーマンスとスタッフと魂を込めた演出効果を是非劇場で体感して頂ければ幸いです。ぜひ観に来ていただければ!

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

<過去上演データ>
〇第1弾 イケメン戦国 THE STAGE~真田幸村編~
2017年4月19日~23日
〇第2弾
イケメン戦国 THE STAGE~織田軍 VS “海賊” 毛利元就編~
2017年8月30日~9月3日
〇第3弾
イケメン戦国 THE STAGE~織田信長編~
2018年4月5日~4月9日
〇第4弾
イケメン戦国 THE STAGE ~上杉謙信編~
2019年2月21日~2月24日
〇第5弾
イケメン戦国 THE STAGE 番外編 ~はじまりの物語~
2019年12月26日~12月30日
〇第6弾
イケメン戦国 THE STAGE ~明智光秀編~
2020年9月4日~9月9日
※織田信長編より2 エンディング。

<イケメン戦国THE STAGE ~連合軍VS“戦乱の亡者”雑賀孫一編~>
[キャスト]
織田信長 小笠原健
上杉謙信 橘龍丸
武田信玄 横山真史
伊達政宗 米原幸佑
明智光秀 橋本全一
豊臣秀吉 滝川広大
石田三成 天野眞隆
徳川家康 前嶋曜
森蘭丸 星元裕月
猿飛佐助 早乙女じょうじ
真田幸村 小沼将太
今川義元 竹石悟朗
前田慶次 工藤大夢
直江兼続 健人
帰蝶 秋沢健太朗
足利義昭 竹之内景樹
顕如 中村誠治郎
雑賀孫一 谷口賢志
―剣舞衆―
望月祐治/福島悠介/工藤博樹/園田玲欧奈/田沼ジョージ/林宏樹/木下竜真/篠原孝文
<概要> 全公演中止。
公演名:イケメン戦国THE STAGE ~連合軍VS“戦乱の亡者”雑賀孫一編~
劇場:ヒューリックホール東京
期間:2021年8月19日~8月23日
原作:CYBIRD「イケメン戦国◆時をかける恋」
原作イラスト:山田シロ
脚本・演出:伊藤マサミ
総合プロデューサー:黒谷通生(レジェンドステージ)
企画・制作・製作幹事: レジェンドステージ
主 催:イケメン戦国THE STAGE製作委員会
公演サイト:http://legendstage.jp/ikemen-sengoku/
ツイッター: https://twitter.com/lsikemensengoku @Lsikemensengoku
原作サイト:https://ikemen.cybird.ne.jp/title/sengoku/original/
©CYBIRD/イケメン戦国THE STAGE製作委員会
取材:高 浩美
構成協力:佐藤たかし