舞台【シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~】熱い思い、志、「僕の魂は消えることはない」

舞台【シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~】が8月4日より築地の築地ブディストホールにて上演される。

幕末に来日し、長崎出島の地より多くの弟子を育て日本に西洋医学を広めたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト、その業績は医学に留まるところなく世界に広がるシーボルトコレクションと共に様々な研究分野で活かされた。また、その研究とコレクションをもとに書き記された大著『日本』はベストセラーになり、 ジャポニズムブームを引き起こした。だが、その研究分野はもちろん、日本を愛する蒼い目のサムライの遺志は 2人の息子、兄アレキサンデル、弟ハインリッヒに引き継がれた。彼らは新時代に漕ぎ出たばかりの日本を世界の一等国にすべく維新志士たちと共に数々の危機を乗り越えていったことはあまり知られていなかった。しかし、本年の大河ドラマ『青天を衝け」の主人公渋沢栄一に大きな影響を与えた存在であるシーボルト兄弟に注目が集まっており、また父シーボルトについては、再来年の2023年に来航200周年を迎えることもあり、シーボルト父子研究も再沸騰、昨年の好評を受け再演となった。
初演時の総合演出、≪99.9~刑事専門弁護士≫シリーズなどヒット作を送り出す木村ひさし監督を総監修に、現代演劇界の巨人唐十郎が育てた唯一の演出家、劇団唐ゼミ☆の中野敦之が演出を担う。また脚本は主演を務める鳳恵弥
キャストによる楽しい前説の後、始まる。子供とその祖母、「あの話を聞かせて」と子供がいい、祖母は「お前のおじいさまの話」という。明治2年、明治維新からいくらも時間が経ってない頃から始まる。会話から日本の開国のことなどがわかる。ハインリッヒ・シーボルトは日本を愛していた。「父さんが愛していた国を守る為」と言う。物語の中心は、このハインリッヒ・シーボルトとなるが、兄のアレキサンデル、彼の妻となった花など多彩な実在の人物が登場する。シーボルト兄弟、日本にやってくる。

オープニングの楽曲、これをパッパラー河合が作曲し、歌詞を鳳恵弥、これがすこぶるノリが良く、楽しい。ハインリッヒ・シーボルト、18歳、青雲の志に溢れた人物。これを鳳恵弥が演じるのだが、颯爽としててかっこいい。対する兄は塩谷瞬が演じているが、こちらも弟に負けず劣らず、志の高い人物。ハインリッヒの幼い頃の思い出、父親に「日本の話を聞きたい」とせがむ。そんなバックボーン、父であるフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト、こちらは歴史の教科書にも登場、日本に西洋医学を広めた重要な人物。また、『シーボルト事件』でも有名だ。シーボルトは安政5年(1858年)の日蘭修好通商条約の締結により追放が解除となり、安政6年(1859年)に長男アレキサンデルを伴って再来日し、幕府の外交顧問となった。そのあたりの流れを抑えておくと物語は俄然、面白く感じるはずだ。明治時代、日本は富国強兵政策など、海外、特にヨーロッパ諸国から遅れまいと考える。隣国の中国、アヘン戦争などがあり、日本国内でも危機感があった。また、日本をアピールするために万博に参加、このあたりの話は現在放送中の大河ドラマ『青天を衝け』でも描かれている。日本のために働くハインリッヒ。彼を支える妻・花の愛。志を共にする兄・アレキサンデル、熱い物語が展開。

しかし、そんな彼らをよく思わない人物たちも当然、いる。ハインリッヒは大森で貝塚を発見する。これは実に大きな出来事だ。しかし、歴史の授業で、大森貝塚の発見はモースと習った人も多いかと思う。実はモースが発見する4年前にハインリッヒ・シーボルトは大森貝塚の存在を知っていた。モースが発見者として記されているのは、早々に「ネイチャー」に報告したことと、勤め先の東京大学を通して東京府に自分が大森貝塚の発見者であることと発掘の独占権を認めさせたことによると言われている。ここの下り、モース演じる宮下雄也がいかにも「やり手」な感じで演じており、ここは物語のアクセントに。

それでも腐ることなく、自分の道を進むハインリッヒ・シーボルト、兄と共に、父の大著「日本」の完成作業を行う。また、シーボルト兄弟の異母姉である楠本イネも姉を慕う兄弟の協力をもって日本人女性として初の産院を営んだ。
ハインリッヒ・シーボルトら、熱く、志を持って生きた人々、ハインリッヒは病をえて1907年にウィーンで手術を受けて一時は回復するも、懸命の治療もむなしく、翌年、病没、享年56歳。ラストシーンは胸熱、「僕の魂は消えることはないんだ」と語る。医学、外交、民俗学、博物学などの多くの分野に精通、日本のために献身的に生きたハインリッヒ・シーボルト。上演時間はおよそ120分。カンパニーの熱量が半端ない舞台であった。

ゲネプロ終了後に簡単な会見が行われた。
演出の中野敦之「関係性が濃くなってます」と解説。登場人物のそれぞれのつながり、関係、思いがわかりやすいので、歴史に多少疎くても大丈夫。パッパラー河合「最後のシーン、泣きのセリフにピアノ必要と言われて…いいよねー。進化している、魂は生き続ける、説得力がある」とコメント(舞台途中でゲスト出演!あの名曲を生で!)。ラストシーンは感涙。若井おさむ「1か月練習して初日を迎えられるのは皆さんの協力のおかげ。歴史に疎くって知らない方(歴史上の)が多くって面白いと思いました」と語る。竹若元博「2回目からの参加です。皆さんがかっこよくって〜。私と宮下さんが嫌らしい役です」とコメントしたが、竹若元博が演じるキャラクターはアーネスト・サトウ。イギリスの外交官で、イギリス公使館の通訳、駐日公使、駐清公使を務め、イギリスにおける日本学の基礎を築いた人物で、小柄で痩せ型、クールで世渡り上手だったらしい。
木村ひさし「熱量が加わって!特に若い役者さんたち、本番が楽しみです」と期待を寄せる。
再び父シーボルトを演じる渡辺裕之「より鮮やかに歴史的な史実、人間関係が分かる芝居になってます。前作と比べて驚くほど進化してて、自分が追いつくのがやっとの熱量です。やってみて初めてわかることもあります」と語る。主演の鳳恵弥は「どんどん挑戦させていただきました。音楽の力でさらに、またみんなが熱を持ってくださったおかげ。外国の人が日本を愛してくださったということを伝えたいと思って作った作品。また、前回では到達できなかった先のところまで役を深堀りできたなと」と語る。渡辺裕之は「皆さん、若くって研究熱心」とコメント。若い俳優陣の熱演は要注目。
鳳恵弥は「出演者の中には『これが一年ぶりの仕事。すごく感謝してます』と言ってくださる方もいて、その言葉にグッとくるものが…仕事が枯渇している役者さんがいっぱいいらっしゃいます…この作品がそういう方たちが救われる現場になれば良いなと思います」とコメント。最近、ようやく様々な舞台の幕が開いているが、コロナ禍は、まだまだ収束する気配が見えない。このシーボルトの生涯と志を描いた作品は9日まで、築地ブディストホールにて。この築地、異母弟にあたる楠本イネがシーボルト兄弟の支援で東京は築地に産院を開業したゆかりの地での上演となる。

<概要>
日程・会場:2021年8月4日 (水) ~2021年8月9日 (月・祝) 築地ブディストホール
総監修: 木村ひさし
演出: 中野敦之
音楽: パッパラー河合
[出演]
鳳恵弥 渡辺裕之 塩谷瞬 竹若元博(バッファロー吾郎) 村川翔一 宮下雄也 若井おさむ 田中なずな(誇) 大串有希(愛) 天音里菜(誇) 岩瀬かえで(愛) ふじわらみほ(誇) 八重幡典子(愛) 紫花菫(誇) 持田千妃来(愛) 陣慶昭(誇) 萱沼愛佳(愛) 信江勇(誇) 川合蓮華(愛) 中川わさ美(誇) 佐々木あかり(愛) 石川和男 亀吉 福地清 大澤良 山田貴斗 吉本裕介 菅原理久十 井手晋之介 高橋康王(誇) 穂永隆介(愛) 小針隆太(誇) 荒牧咲哉(愛) 宇羽野道 葉月あさひ
※Wキャスト [誇]チーム、[愛]チーム

主催:舞台【シーボルト父子伝~蒼い目のサムライ~】製作委員会

公式ツイッター:https://twitter.com/butai_koto