令和2年2月新橋演舞場『八つ墓村』以来、実に1年8 ヶ月ぶりとなる待ちに待った新派の本公演、10月新橋演舞場で開催。新派の名優花柳章太郎追悼と銘打ち、章太郎にゆかりある名作の二本立て。創始130年を越える劇団新派、名優花柳章太郎ゆかりの名作二本立て。
明治21年の新派誕生以来、幾多の名優を輩出していますが、花柳章太郎は、大正から昭和にかけて活躍した名女方の一人。新派の伝統的な女方芸を踏襲しながらも、それを基に昭和という現代感覚を取り入れ、更に立役も含め独自の芸風を完成させ、新派のみならず日本演劇の近代化を確立する上で大きな功績を残した。昭和24年に結成された現在の劇団新派は、花柳章太郎始め、初代喜多村緑郎、初代水谷八重子の芸風を継承している。
<演目について>
『小梅と一重』
大正8年に河合武雄と初代喜多村緑郎で初演され、花柳章太郎も昭和28年に小梅を演じた真山青果脚色『假名屋小梅』の中の一幕。
近年では二代目水谷八重子と波乃久里子の上演でお馴染みて、昭和51年の初代水谷八重子、十七世中村勘三郎の顔合わせに倣い、今回は一重に二代目水谷八重子、小梅に河合雪之丞の女優と女方の競演に、銀之助に喜多村緑郎という配役で、新派の華を。
[あらすじ]
今売り出し中の役者・澤村銀之助(喜多村緑郎)は、新橋でも一枚看板で意地が売りものの芸者・假名屋小梅(河合雪之丞)と誰知らぬ者もない良い仲でした。ところが銀之助は近頃、小梅 のおかげで家柄の無い自分がここまで漕ぎつけられた恩義を感じていながら、その仕方があま りにも小梅自身の見栄のためと嫌気が差し始め、新富町の芸者・蝶次(瀬戸摩純)の内気さ、地 味さに深く心を惹かれる様になっていました。
やぐらした 明治の頃の花柳界では、新橋は一流、新富町は櫓下と呼ばれ格下と見られており、その新富
町の芸者に男を横取りされた小梅は顔に泥を塗られたと大酒を飲み、半狂乱で銀之助と蝶次を剃刀で追い回します。
うじひとえ その場に居合わせた一中節の師匠の宇治一重(水谷八重子)は、「お前さんは銀之助さんに会っ
て、どうする気なんだ。泣くのかい。謝るのかい。それとも未練で頼むのかい?」と、銀之助
の芸に向かう姿の尊さを説くために小梅を諭すのですが・・・。
『太夫さん』
昭和30年に花柳章太郎主演で初演されて以来、上演され続けてきた北條秀司の代表作。平成9年から波乃久里子のおえいと藤山直美のきみ子という配役で5回上演、今回は善助に田村亮を迎える。身売りの娘・きみ子と、きみ子を立派な太夫に育てるために奮闘するおえいとのユーモラスな交流を描く名品。
[あらすじ]
京都島原遊廓で宝永年間から約三百年続く老舗妓楼・宝永楼の女将・おえい(波乃久里子)は、 商売柄に似合わぬ無類のお人好しで、御職の深雪太夫始め、全盛から落ちぶれた美吉野太夫、 中年増の九重太夫、一番年若の小車太夫たちと共に、島原の伝統を厳守しながら暮らしていま した。
昭和二十三年秋、裏のガス会社でストライキがはじまった朝、気の強い玉袖太夫(春本由香) は登楼客にそそのかされ、太夫たちを扇動して待遇改善の要求書をおえいにつきつけました。 そこへひょっくりと現れたおえいの初恋の相手でもあった輪違屋の善助(田村亮)はその要求書 を読んで「おやまのストライキは東雲楼だけかと思ったが、京都の宝永楼もストライキや。島 原の太夫さんも莫迦にならんな」と、笑っていましたが、女たちに愛情を持って接して来たと自負していたおえいの怒りは収まりません。
その騒ぎの中、安吉と名乗る男が妹のきみ子(藤山直美)を連れてやって来ました。同じ奉公 に出すのなら日本の国宝とも言うべき島原で太夫にしたいという考えに感じ入ったおえいは、 仲居頭のお初(大津嶺子)の奨めもあり自分に背いた女たちへの面当てにもきみ子を引き取るのですが・・・。
<概要>
日程・会場:2021年10月2日初日~25日 千穐楽 新橋演舞場
出演:水谷八重子、波乃久里子、喜多村緑郎、河合雪之丞、藤山直美、田村亮、大津嶺子
松竹HP:https://www.shochiku.co.jp/