染谷将太・二階堂ふみで映画化された、古谷実の問題作『ヒミズ』、劇団時間制作がこの9月に舞台化、初日目前の9月某日、通し稽古が行われた。この日は初めての通し稽古ではない。
主人公住田祐一役は西山潤、ヒロインの茶沢景子役は松田るか、舞台だけのオリジナルキャラクターに三津谷亮、またモロ師岡などベテラン俳優もキャスティング。バラエティ豊かで実力のある俳優陣が集まった。通し稽古なので、場内アナウンスから始まる。準備万端、時間になり、始まった。ストーリーは原作通り、映画を観たことがある、あるいはコミックを読んだことがあれば、物語については説明する必要はない。ただ、舞台なので、映画とは違って制約がある。映画のようなカット割りなどは無論、ない。演劇はそこが面白い。観客の想像力とクリエイター陣の創意工夫。また、住田、茶沢、ソレ以外のキャストは複数役を演じるので、そこは見所となる。
少々、ひねくれ者の住田、校長の話、スピーチ、しかし、住田には響かない、「はあ〜?!」。勢いよく、テンポよく物語が進行する。稽古場は換気扇全開、PCR検査は定期的に行われ、マスク着用必須、感染症対策はやれるだけのことはやっている。住田たちは中学三年、元気だけは有り余っている。
稽古といえども、全力で演じる、走り回る。住田に対してまっすぐな茶沢、松田るかがストレートに住田演じる西山潤と対峙する、対する西山、住田の日常が崩れていく、その中で彼なりに必死、悩み、苦しむ様を熱演、汗だくで途中でシャツを着替えるくらい。
ギャグ要素がないのが、原作の大きな特徴、ささやかで平穏な日常が崩れていく。コンクリートブロックを振り上げる、包丁を紙袋に入れる、稽古であるが、キリキリとしてくる。悪が蔓延る、ある意味、住田は逞しい。日常が非日常となる、不幸が襲い掛かる、そんな救いのない展開、稽古場は独特の緊張感に包まれる。
本番と同じく休憩時間が入るが、これは”休憩”ではなく、2幕の準備。そして怒涛の、そしてシリアスな複雑な展開になっていく。盗み、殺人、普通ではなくなっていく住田、そして衝撃のラストへと連なっていくのだが、入念な稽古の成果、よどみなく進行。初日のクオリティの高さを予感させる仕上がり。劇場は池袋の「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」の「Theater Mixa」、小振りの劇場、臨場感が得られる空間。濃密な人間描写、それでも人は生きていく、『ヒミズ』、初日までカウントダウン!9月18日開幕!
<概要>
タイトル:舞台『ヒミズ』
日程・会場:2021年9月18日~26日 Mixalive TOKYO 「Theater Mixa」
原作:古谷実(講談社刊)
脚本・演出:谷碧仁
出演:
西山潤
松田るか
三津谷亮
木ノ本嶺浩
久獅
柴田時江
田名瀬偉年
佐々木道成
モロ師岡 ほか
主催 舞台『ヒミズ』製作委員会
劇団時間制作公式HP http://zikanseisaku.com/
劇団時間制作公式Twitter @zikanseisaku
(C)古谷実・講談社/舞台『ヒミズ』製作委員会
取材:高 浩美