『新・幕末純情伝』 FAKE NEWS 「あほらしい時代が終わる」そしてクライマックスは・・・・・・。

つかこうへいの傑作「幕末純情伝」、これを『新・幕末純情伝』とし、サブタイトルはFAKE NEWSとつけて開幕した。主演の沖田総司に北原里英、坂本龍馬に味方良介。今年はつかこうへい生誕70年、彗星のごとく現れて大きな足跡を残した劇作家、そして演出家、沖田総司は女だったという大胆な設定で、繰り返し上演されてきた不朽の名作だ。

舞台中央には刀が刺さっている。その刀にスポットライト、幕が開き、舞台にはセットらしいものはない。つかこうへいの芝居はいつも素舞台だ。桂小五郎役の田中涼星が登場し、早々に殺陣のシーンだ。時は風雲告げる幕末、しかし、誰も着物など着ていない。衣装がどうのこうのということは問題ではない。岡田以蔵(松村龍之介)らが女の赤子を救い出す。そして沖田総司(北原里英)が登場し、オープニングの殺陣、舞台後方のスクリーンにタイトルが映し出される。

畳み掛けるようにストーリーは進行する。つかこうへいの芝居の面白さは、あの独特のセリフだ。長い、長いセリフ、その言葉は、役者の口から飛び出し、【魂】となって、観客の心に飛び込んでくる。高い志を感じさせる言葉が出たかと思えば、なんとも下品な下世話な言葉もマシンガンのように繰り出される。そのジェットコースターのような疾走感のある言葉、そして瞬時に物事が変化していく。それがつかこうへいのマジックだ。演出の河毛俊作は、つか作品は数え切れないほど観ているそう。つかこうへい作品のエッセンスを汲み取り、現代の観客にわかりやすく見せる。「あほらしい時代が終わる」という坂本龍馬。実際にそんなことを言ったかどうか、などは関係ない。いつでも人々はどこかで「あほらしい時代は終わって欲しい」と願い、そして「新しい時代になったら」と思う。沖田総司、坂本龍馬、桂小五郎、土方歳三、二宮、岡田以蔵に勝海舟、その他、新撰組の隊士たち、皆、時代に翻弄され、時代を切り開いていった歴史上の人物だ。そんな彼らが確かに舞台の上で息づいている。誰もが沖田総司に心を奪われている。沖田総司は懸命にその瞬間を生きる。そんな姿を北原里英が、全身を振り絞って表現する。対する坂本龍馬、味方良介はつか作品には何度か出ている、いわば“常連”俳優だ。本人はもちろん、つかこうへいに会ったことはないが、もし存命なら、つかこうへいにきっと見出されていたであろうと推測できるほどの堂々とした坂本龍馬ぶり。

大政奉還、価値観も何もかもが大きく覆った時代だ。江戸幕府は終わる。時代はドラスティックに変わっていく。そして沖田総司は桂小五郎にあることを言われ、クライマックスへと突入していく。

エネルギッシュでフレッシュ、かつ逞しい座組、紀伊国屋ホールは1964年に開場し、つかこうへいを始め、野田秀樹や鴻上尚史などを世に送り出してきた、「新劇の甲子園」とも呼ばれている劇場。そこで、この節目の年につか作品をここで上演することの意味。ロビーにはモノクロ写真の在りし日のつかこうへいのスナップ写真が飾られている。これから先もきっと上演され続けていくであろうつかこうへい作品。一期一会の瞬間、永遠に語り継がれていくことであろう。

なお、ゲネプロ終了後に囲み会見が会った。登壇したのは沖田総司役の北原里英、坂本龍馬役の味方良介、土方歳三役の小松準弥、桂小五郎役の田中涼星、新撰組隊士二宮役の増子敦貴、岡田以蔵役の松村龍之介、勝海舟役の細貝 圭、そして演出の河毛俊作。先ほどの激しい芝居とはうって変わって、和やかなフォトセッション。それから始まった。

北原里英は「汗だくになりながら稽古してきました。想いをぶつけられたら」とコメント。味方良介は「濃密な時間を過ごしました」と言い、田中涼星は「稽古でやってきたことを信じて」と語る。松村龍之介は「稽古もあっという間で・・・・・」と語っていたが、それは密度の高い内容だった証拠。小松準弥は「キッレッキレで!」と元気よく。なんといっても土方歳三役、テンションの高い演技で見せ場を作った。増子敦貴は「二宮らしく突っ走りたい」と抱負を。細貝圭は「この作品は4回目なんですが、分かりやすい作品になっていると思います」とコメント。ちなみに前回の2016年は土方歳三役であった。

味方良介は「つか作品に初めて出たのは2年前、つかさんには会えないけどつかさんの思いとか伝えていきたい。10年、20年と続いていけたらいいですね」とコメント。この「幕末純情伝」だけでなく、他にも名作と呼ばれている作品多数。北原里英は演じるにあたって映像は見たそう。「見よう見まねは嫌なので」とコメントしたが、北原里英らしい、パワーと清々しさを感じせる沖田総司、「驚いてくれたら嬉しい。違った姿を見せれたらいいな」とコメント。また味方良介は「言葉で畳み掛ける芝居が好き」と根っからの芝居好きな様子。また七夕にちなんで北原里英は「沖田総司と坂本龍馬のように素敵な恋愛が出来ますように」と、ロマンチックなお願い。
最後に味方良介は「演劇の素晴らしさと温かさと愛を感じてください、絶対に損はさせません!是非、足を運んでください」と言い、北原里英は「みんなで自信を持ってお届けします。平成最後の夏は『幕末純情伝』で!」と締めて会見は終了した。

《インタビュー》『新・幕末純情伝』 FAKE NEWS 演出 河毛俊作

【概要】
『新・幕末純情伝』 FAKE NEWS
期間:2018年7月7日(土)〜7月30日(月)
会場:紀伊國屋ホール

作:つかこうへい
演出:河毛俊作
出演:
沖田総司役:北原里英、坂本龍馬役:味方良介、土方歳三役:小松準弥、桂小五郎役:田中涼星、新撰組隊士二宮役:増子敦貴、岡田以蔵役:松村龍之介、勝海舟役:細貝 圭
久保田創 大石敦士 須藤公一 山田良明 榛葉恵太 大西けんけん 岡元次郎 佐藤賢一

公式サイト: http://shin-bakumatsu2018.com

提携:紀伊國屋書店
協力:つかこうへい事務所
制作:アール・ユー・ピー プラグマックス&エンタテインメント

主催:エイベックス・エンタテインメント

文:Hiromi Koh