ゲストには真田佑馬、梅津瑞稀らフレッシュなメンバーから、小林けんいち(動物電気)、谷山知宏(花組芝居)といった 劇団の黎明記を支えたメンバーまで、活動20周年に相応しいゲストが集結し、 劇団員と共に、
紀伊國屋ホール・IMPホールの東京・大阪 公演。
脚本は丸尾丸一郎、演出は菜月チョビ。 活動20周年を記念する意欲作。さらに、シンガーソングライターのタテタカコが、今作でも音楽を担う。
作品は、ファンからの根強い人気を誇る代表作「キルミーアゲイン」。 新たなキャストと劇場、そしてタテタカコの音楽に乗せて大幅リライト、20周年ならではの作品。
物語の場所は山間にある川沿いの村、古い劇場「たにし座」。東京から遠い村、劇場に雑然と置いてあるパネル、平台など。そこへ一人の男がやってくる、彼の名前は藪中(真田佑馬)、大きな荷物、もともとはここの出身で東京から帰ってきたのだった。そこへ藁を被った男がやってくる、イノシシを引きずっている。彼は河本(丸尾丸一郎)、藪中の同級生、高校卒業の時にこの「たにし座」で芝居をするはずだった、二人、箒でチャンバラ、記憶が蘇る。この村ではダム建設の話で揺れている。なぜならダムが出来れば村は川底に沈んでしまうからだ。故郷がなくなるかもしれない。村の人々に故郷の大切さを思い起こさせたい、それには芝居が有効と考えるが…。様々な記憶、思い出。楽しくもしょっぱい、切ない、しかしそれなりにキラキラとしていた。舞台は過去の風景に戻ったりする。重層的な構造で藪中を中心にした彼らの想いを見せていく。劇中劇もあり、賑やかであればあるほどに、切なさが込み上げる。劇中劇の舞台『人魚伝説』、人魚は300年生き続けるが、死んだら泡となって消える。この舞台シーンは見所、竜宮城の場面(『人魚姫』と『浦島太郎』が!)、人魚の群舞が楽しく、特に人魚に扮した面々の熱演が!虚と実、実と虚、重なり合いながら見せていく。高校生たちの吹奏楽の場面、また菜月チョビが演じる及川やまめ、彼女は人魚と噂されているが、本当のところは何者なのか。
随所で繰り広げられる劇中劇、演じている面々の演劇に対する想いが劇場いっぱいに充満していくのを感じる。人々が抱えている過去、ダム建設で沈んでいく山村、心に刺さるセリフ、止まった時計、17年前の悲劇、何があったのか、後半、そこは明かされていく。17年前の嵐、サイレンの音、緊急避難指示、やまめちゃんの秘密、生きること、人を想うこと、寓話の中に散りばめられ、観る人の心を打つ。藪中は物語の中に逃げ込んでいた、いやその中に入り込み、さまよっていた。
ちょっとしたパロディー的な場面では文句なく笑える。”お人魚クラブ”シーンでは昭和なアイドル風、たにし座のマスコット、たにっしー…どこかで見たような格好(笑)、人魚は…ガタイがいい!吹奏楽のシーンは本当に演奏、これがリアル感を増幅させる。カオス的なエンタメ要素満載で、笑って笑って、しんみり。人はそれでも生きていく。挿入される歌の歌詞が響く。観ているといつの間にかこの”鹿殺し”マジックにかかってしまう。
<作品について>
人魚伝説が残る、山間の渓流にほど近い村。 ダム建設の是非に揺れる村に、東京から一人の男が帰ってきた。 村がダムに沈むのを止めるべく、起死回生のお芝居を作ろうと集まる人々には抱えてきた過去があり…。 想いを込めるほどに何故か生まれる滑稽なドアングラ劇と錯綜する過去の記憶。
「もう一度、殺してくれ!」 喜劇の奥で、男たちの叫ぶ声がこだまする。
劇団鹿殺し、活動20周年の幕開けを飾る、 渾身の王道音楽劇。
<概要>
[東京公演] 9月30日〜10月10日 紀伊國屋ホール
[大阪公演] 10月15日〜17日 IMPホール
作 丸尾丸一郎
演出 菜月チョビ
音楽 タテタカコ
[出演]
丸尾丸一郎 菜月チョビ 鷺沼恵美子 浅野康之 メガマスミ 長瀬絹也 内藤ぶり 藤綾近 前川ゆう
真田佑馬 梅津瑞樹 小林けんいち(動物電気) 谷山知宏(花組芝居) 阿部葵 今村花 笠井唯斗 清水篤志 ばんこく 松本彩音 若月海里
古澤芽衣 アイザワアイ 松永治樹 田中優真