彩吹真央主演 “五重人格”のサリーの心の軌跡を描く傑作小説 舞台化 「五番目のサリー」~The Fifth Sally~ 開幕!突然、出てくる別の”私”、覚えていない…私。

五重人格のヒロイン、サリー・ポーターが主人公のダニエル・キイスの小説「五番目のサリー」を、「ミュージカル『王家の紋章』」、「アルジャーノンに花束を」、など、数々の名作を手がける荻田浩一の脚本・演出で10月21日に開幕する。難役・サリーに挑戦するのは彩吹真央。

離婚歴のある地味なウェイトレス、サリー・ポーター(彩吹真央)は、自分の中に、デリー(藤田奈那)、ノラ(小寺利光)、ベラ(仙名彩世)、ジンクス(中河内雅貴)という四つの異なる人格を持っていた。何か耐えきれないことが起こると出てくる別の人格である。
デリーは楽天家でウェイトレスの仕事を心から楽しむことができる。
ノラは自殺願望のあるインテリで、精神分析の書物や前衛芸術が大好きで、自分で絵も描くアーティスト。
ベラは歌とダンスが大好きで、ひそかに女優になることを夢見ている。
ジンクスは最も危険な人格で、憎悪にまみれた彼女は、離婚した夫や主治医のロジャーを殺してしまおうと思っている。
サリー役は彩吹真央、それ以外の配役はベラ(*)他に仙名彩世、看護婦マギー、母ヴィヴィアン他は小野妃香里、デリー(*)、他に藤田奈那、ジンクス(*)、マーフィ、他に中河内雅貴、上司エリオット、他は大山真志、ロジャー・アッシュ医師は荒井敦史、同僚トッド、他に井澤勇貴、前夫ラリー、ノラ(*)、他に小寺利光、そしてInter Self Helperは駒田一。(*)はサリーの別人格、彩吹以外の俳優が演じるが、特に男優が女性キャラクターの別人格を演じるところは注目ポイントとなるであろう。

歌から始まる、澄んだ歌声、それから物語が始まる。一人の女性、名前はサリー(彩吹真央)、実はある症状で悩んでいた。医師・ロジャー・アッシュ(荒井敦史)の元を訪れる、「覚えていなくって」と。彼女には複数の人格がいる。その隠れた人格が表面化すると、その人格に支配され、しかも名前まで変わってしまう。そして元の人格、つまりサリーに戻ると、きれいさっぱり忘れてしまうのだった。医者から問診を受けている最中にも、隠された人格が出てくる。ロジャー(荒井敦史)は尋ねる、「名前は?」、「サリー」と答えなければ、今、目の前にいる人物はサリーの中の隠れていた人格が表面化していることになる。隠された人格は4つ、デリー、ベラ、ノラ、ジンクス 。こんな状態ゆえに結婚して双子の子供までもうけたのに離婚、もちろん親権も剥奪、今はウエイトレスの仕事をしながらの一人暮らしだ。医師・ロジャーは彼女を治療することに。サリーは果たして、この解離性同一症、つまりこの多重人格障害を克服できるのか否か、というのがだいたいの流れ。

彼女の葛藤が描かれる。隠された人格は他の俳優が演じるのだが、サリー役の彩吹真央と動きや台詞がシンクロする場面も。快活な人格の時は踊ったり、男性を誘ったり、それが突如、暴力的な人格に豹変したり、そして「サリー」に戻ったり。元夫に電話するも相手にされない。それもそのはず、サリーが感知できない別人格の時に、どうも電話したりして困らせていた様子。八方塞がりのサリーの苦悩、誰かを傷つけてしまうことへの恐れ、振り回される人々、懸命に彼女を救おうとする医者。そして後半、彼女がなぜ、このような障害を持つことになったかが次第に明らかになっていく。

隠された人格が時には一同に会したり、時には彩吹真央は舞台端の椅子に座り、別人格役の俳優が様々なことをしでかしたり。サリー役、医師・ロジャー、そしてサリーをサポートするInter Self Helper役以外は複数役を演じる。
衣装は白と黒を基調にしたシンプルだがミステリアスな模様を施したもので、基本、着替えることはない。せいぜいエプロンをつけたり、帽子をかぶったりする程度。よって演技力が問われる。主演の彩吹真央はほぼ出ずっぱり。解離性同一症、多重人格障害、実際もそうだが、前触れもなく突然キャラ変する。いきなり快活になったり、時には相手を殺そうとしたり、瞬時にスイッチ、瞬発力が必要な役柄、宝塚に16年、退団後も様々な役柄に挑んできた彩吹真央、しっかりと演じきっていたのが印象的だ。

また駒田一演じるInter Self Helperは主に後半に活躍、主人公・サリーを内側からサポート、時には励まし、時には寄り添う。そして少しずつ、サリーは前進する。

この障害、誘因はほぼ常に,小児期に体験した圧倒的な心的外傷。診断は病歴に基づくが,ときに催眠法または薬剤を使用する面接法も併用。治療は長期の精神療法,ときに併存する抑うつや不安に対する薬物療法を併用。ここでは主に面接法を用いている。根気よく向き合う医者、サリーにとってはこれが唯一の解決への道。分裂した人格の統合を試みる。サリーが幕切れに見る景色は?

公開稽古終了後に会見が行われた。登壇したのは彩吹真央、仙名彩世、中河内雅貴、駒田一。
主演の彩吹真央は「多重人格の役はなかなかない。役者として出させていただきました。膨大な作品を2時間に、先ほどダメだしがありましたが『安心してやってください』と言われました。楽しみです」と語る。駒田一は「チームワークが良い、素敵な現場です。荻田さんがいい作り方をしてくれた…皆さんにもいろんな人格がある、共感できる作品です」と笑顔で。仙名彩世も「すごく楽しみです」とコメント。中河内雅貴は「本読みから荻田さんがじっくり丁寧にやってくださった。想像力が膨らむ作りです。やることをやって集中力を使って…理想の稽古場。自信を持って立てる、お届けできます。チームワークが素晴らしい」とコメント。
また多重人格を演じることについて彩吹真央は「瞬時に別の人格になる瞬間、役同士の関係性、瞬間的に声色を変える、自分の中で正解を染み込ませないと。私はおっとり型なので〜。宝塚には16年いたので、ジンクス役は宝塚時代の凄みを出して!でも『ちょっと、男役すぎるのでやめてください』と言われたり…これはなかなかできない体験、演じることの快感も」と語るが、ジンクスは最も暴力的で”男”、まさに男役としての経験が役に立った、ということ。また「怒り、プライド、哀しみ、すべて自分の中にある感情。それをはみ出さないようになってるんだな、と」と語ったところで記者席から「発散できる?」と聞かれて彩吹真央、ニコニコ。

また衣装が白と黒を基調にしたシンプルかつオシャレなものだが、役に合わせて着替えることがないので「演技力のハードルの高さはある」と彩吹真央。
また出てきてほしくない性格については仙名彩世は「緊張するんで…これは出てきてほしくない」と語る。駒田一は「年齢で記憶なくなる(笑)、でも隠す必要もないのと、昔ほどではなくなった、今は『ま、いいっか』」とコメント、キャスト、関係者、記者席から笑いが。彩吹真央は「しょっちゅう拗ねてる。末っ子だったので、拗ねたら(お菓子)もらえるから」といい、中河内雅貴は「(昔は)売られた喧嘩は絶対に買う!(物騒な発言)最近は殺意を覚えなくなった(笑)、自分自身がどうあるべきか考えるようになった、今は誰に対しても明るく!」
コロナ禍のため、稽古中はマスク必須だったが、公開稽古で初めてマスクとったそうで。駒田一は「違和感あった」とコメント。マスクが当たり前な昨今、マスクなしは新鮮だった様子。
彩吹真央は「コロナ禍で自分を見つめ直す機会が増えたと思いますが、人間って複雑でいいんだなという優しい気持ちになっていただけたら」といい、最後に彩吹真央が「ぜひとも皆さんの目で見届けてください。人間の温かさや暗いところを見て『頑張ろう』と思っていただけたら」と締めて会見は終了した。

<公演概要>
タイトル:「五番目のサリー」~The Fifth Sally~
日程・会場:2021年10月21日~10月30日 全14公演 よみうり大手町ホール
原作:ダニエル・キイス著「五番目のサリー」(ハヤカワ文庫)
脚本・演出:荻田浩一
音楽:TAKA
出演者:
彩吹真央
仙名彩世
小野妃香里
藤田奈那
中河内雅貴
大山真志
荒井敦史
井澤勇貴
小寺利光
駒田一

公式サイト: https://music-g-h.com/stage/sally
公式 Twitter:https://twitter.com/The_Fifth_Sally (@The_Fifth_Sally)
問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 (平日 11:00~18:00/土日祝 10:00~18:00)
主催・企画製作:M・G・H/ニッポン放送