原嘉孝主演 入山杏奈, 浜谷健司(ハマカーン), モト冬樹, 鈴木紗理奈, 宅間孝行 etc. タクフェス第9弾『天国』 いつもの笑顔は奇跡の連続、あれから10年、演劇は時代の鏡

宅間孝行の最新作、宮城県石巻市にある“山田劇場”を舞台に、映画、芝居、興行に奮闘するちょっぴりお間抜けな愛すべき人たちの優しさ溢れる日常を描く。実際にあった劇場がモデルとなっている。10月に名古屋公演から始まり、札幌、新潟、仙台、大阪と公演。12月1日より東京公演、サンシャイン劇場にて12日まで公演。

震災から10年ほどが経過、そして、新型コロナウイルスによってエンタテインメントの在り方が大きく変わった2021年。どの公演も例外なく影響を受けてきており、また、緊急事態宣言下の時は中止になったり、あるいは『コロナバージョン』と銘打った公演もあった。演劇は時代を映す鏡。
最初の出だしは現代。登場人物は皆、マスクを着用していることから、コロナ禍の最中であることがうかがえる。皆、黒っぽい服装。その中の一人、名前は島村龍太郎(原嘉孝)、セリフを言いながら着替える、という演出、文字を映写で「○○年」と見せる方法もあるが、アナログ的な、演劇的な演出にこだわる宅間孝行ならではの表現だ。「10年があっという間だったな」と言いながら…。そして、舞台上はその”10年前”に。ここは劇場、しかも古い、ネーミングも山田劇場。場所は舞台裏、皆が忙しく、嬉々として働いている。壁にはポスター、よく見るとかなり凝ってるので!ここはしっかりとチェックしてみたいところ。ソファーで本郷大(宅間孝行)が携帯電話を持っている、ガラケー、時代を感じる。龍太郎、所在なさげな感じだったが、アイロンかけを頼まれることに。なし崩し的に働くことになった龍太郎。本郷大の妻・理香子(鈴木紗理奈)とは今もラブラブ。本郷大の父である本郷穣(モト冬樹)、隠居のふた文字とは程遠い、元気いっぱい。一人娘の本郷さゆり(入山杏奈)が帰ってくる。東北大学の3年生、闊達でいかにも勉強できる感じのメガネ女子。そんなさゆりに一目惚れする龍太郎。


どこにでもある日常が舞台で繰り広げられる。そこから3か月後、蚊取り線香の豚の置物で夏、とわかる。家族で飲み会、つまみが…本物(笑)。また、客席に向かってしゃべる場面もあるので(ここは拍手)。本郷親子は本当に仲が良い。これが、この劇場の空気を創っている。皆、楽しく動く、働く。山田劇場の従業員となった龍太郎、大好きなさゆりもいるし、本郷家族の優しさに触れ、すっかり溶け込んでいる。そして、劇場なので!スターがやってくる!ここでは、もう一大イベント!ゲネプロでは中村玉緒。もう、ここは抱腹絶倒、お約束なセリフはもちろん、想定外なことも。なお、ゲストは毎回変わるので、ここはお楽しみコーナー。


季節は巡り、大晦日、皆で楽しく。映画を観終わって感動して大泣きする龍太郎、ガンツさん(浜谷健司)、稲妻くん(広田亮平)。そこから数ヶ月後…。勘の良い観客は察しがつくと思うが、想定外な出来事が…その時日本にいた全ての人々にとって驚くべきことが…。

ラスト近く「生かされたものだけが立ち上がる」「前を向かねば」というセリフが出てくる。当たり前だと思っていた日常、みんなで笑いあって過ごすことが普通だと思っていた日々、それは実は奇跡、ただ、そんな日々が続くと、そこにあることにありがたみを感じなくなってしまうのかもしれない。この『天国』では、その”何も起こらない平凡な日々”を丹念に描いている分、そして、登場人物たちの笑顔をしっかり見せることで、その日々の愛おしさがより大切に感じる。”宅フェス・マジック”。現代のシーンのボロボロに汚れた山田劇場の看板が切ない。セリフは皆、方言。それが温かみを感じる。観終わった後は、きっと”退屈”な日常はどこかへ飛んでいくことだろう。

ゲネプロ終了後に会見が行われた。登壇したのは原嘉孝、入山杏奈、浜谷健司(ハマカーン)、大薮丘、広田亮平、モト冬樹、鈴木紗理奈、宅間孝行。
宅間孝行は「コロナ禍で去年、青天の霹靂っていうんでしょうか…まさに演劇が…足元をすくわれました…興行やってる方は苦しい思いをしている。今年の3月にこの物語を作りました。みんなへの応援歌、メッセージ、地方の芝居小屋のバックヤードのお話、発端は10年前の津波、調べたら津波に埋もれた古い映画館、劇場がありました。震災ですべて変わってしまった、ちょっとしたシンパシーっていうんでしょうか。今の状況、どれだけ日常が素敵だったか…。いわゆる死んでしまった人たちがいく『天国』よりも、パラダイスっていう意味での『天国』、日常がいかに素晴らしい『天国』だったか…」とコメント。劇場で働く人々の平凡な日々、なんということのない積み重ねがいかに大切か、それを受けて入山杏奈は「5年前にご一緒させていただき、みんなで囲んでご飯を食べてて、仲の良いカンパニーだったなと。今年はみんなでご飯はなかなか難しい、でも今回はすごい、すごい!仲はいいです!」とコロナ前の”みんなでご飯”を懐かしそうに。原嘉孝は「初参加です。稽古中、一ヶ月ちょいみんな通ってる、出番がない時もみんなで見てて…作品に対する思いを込めて向き合う、濃い、素敵なカンパニーです」とこの座組の良さを。鈴木紗理奈は「3年ぶり以来です。”もっと、こうした方がいい”とか、仕事に対する取り組み、姿勢、誰も置いていかれることなく全力で向き合ってる!」とカンパニー全員が作品に向かって一丸となって!大薮丘も「僕も3年前の『あいあい傘』で…モト冬樹さんとかと一緒で心強い、大好きなカンパニー、あったかい、幸せです!」と語る。モト冬樹も「『あいあい傘』に出まして、2回目です。宅間くんは厳しいです。ありがたい厳しさ!」と笑顔。浜谷健司は「座長がが導いてくださる、宅フェスは初参加ですが、宅間さんとは今年1月の明治座でご一緒させていただきました。モト冬樹さんとは20年ぐらい前に…鈴木紗理奈さんとも20年前…僕が渋谷で働いてた時に…縁がありまして。家族みたいな」とエピソードを。さらに「毎日、充実しています」と。広田亮平も「初参加です。最初会った時に宅間さんから『周りから色々、聞いてる?』と聞かれて間違ってるとやばいので『いえ、聞いてないです、楽しみです』と(一同、笑)。役者への愛情に溢れていて、宅間さんが真ん中にいる(稽古は)楽しく充実した時間を過ごせて幸せでした」
感染者が減ってきている昨今ではあるが、今はまだ客席に空席がある劇場があり、この状況で舞台に立つということについて原嘉孝は「どこか客席が寂しかったりすると、早く元通りになってほしいと思いますが、(これでも)来てくださるお客様には感謝です。早く元通りになるといいなと」とコメント、一同、大きく頷く。そしてジュニアを離れたことについて聞かれたが「一人なんだ〜と(笑)自立していかなきゃという覚悟も。一人の大人として!」と語る。何事もチャレンジ。それからゲストシーンについての質問に宅間孝行は笑いながら「あれが決まってるわけないじゃないですか…ぶっつけ本番です」と玉緒さんがモトさんに向かって「モトさんのこと、食っちゃってごめんね」と言ったそうで(笑)。いや、登場した途端に独特のオーラ!!「玉緒さんの自由さ!舞台ならでは!」と宅間孝行。
また、今回の公演はセリフは方言、仙台公演では、そこでしか使えない方言を使ったそうで大いに盛り上がったとのこと。方言のセリフは独特の雰囲気でリアリティも感じられた。
最後に原嘉孝が「地震の怖さは忘れてはいけない、それと、いかに日常が幸せなのかを!大切な方と観に来ていただけたら」と締めて会見は終了した。

<あらすじ>
石巻に、実際にあった古き良き劇場をモデルに、映画、芝居、興行に奮闘するちょっぴりお間抜けな愛すべき人たちの優しさに溢れた物語―。
2010年春ー。
宮城県石巻市にあるひなびた映画館“山田劇場”の事務所に忍び込んだ高校生、島村龍太郎(原嘉孝)は、ひょんなことからこの映画館で働くことに。かつては芝居小屋だったこの劇場、今は社長の本郷大(宅間孝行)が、妻の理香子(鈴木紗理奈)、父の穣(モト冬樹)と共に移動映画上映会や演歌の興行で生計を立てていた。
まさにこの日は年に2回開催される「ヤマゲキがんばれ会」のイベントの開演直前。龍太郎はバタバタと大慌ての舞台裏で、東北大学に通う大の娘、さゆり(入山杏奈)にバッタリ出会い、心奪われ…
それから一年、怒涛の日々を過ごす山田劇場は、2011年の春を迎える。

概要
タイトル:タクフェス第9弾『天国』
作・演出: 宅間孝行
配役
原 嘉孝:島村龍太郎
入山杏奈:本郷さゆり
浜谷健司(ハマカーン):ガンツさん
大薮 丘:光明寺くん
広田亮平:稲妻くん
モト冬樹:本郷穣
鈴木紗理奈:本郷理香子
宅間孝行:本郷大

日程・会場:2022年12月1日~12日 サンシャイン劇場
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:神ノ川智早
宣伝:石橋千尋、前木理花
票券:河野英明
制作:立野順子
アシスタントプロデューサー:小島友希
プロデューサー:佐々木 悠
協力:テイクオフ
企画:タクフェス
製作:エイベックス・エンタテインメント
問合:0570-00-3337 (平日12:00~15:00)
主催:エイベックス・エンタテインメント/サンライズプロモーション東京

公式HP:http://takufes.jp/tengoku/
公式twitter: @TAKU_FES_JAPAN