山田裕貴,松雪泰子,ユースケ・サンタマリアetc.出演PARCO PRODUCE2021音楽劇『海王星』ついに初演!

寺山修司は、『中国の不思議な役人』(1977)『青ひげ公の城』(1979)をPARCO劇場に書き下ろし、演出するなど、ゆかりの深い作家。近年もパルコ・プロデュース作品として、数多くの寺山作品を上演してきたが、寺山が1963年「天井棧敷」結成前に書き下ろし、未上演であった音楽劇『海王星』を新生PARCO劇場にて開幕する。

出港しない船上ホテルを舞台に繰り広げられる、父と息子と父の婚約者の甘く哀しい祝祭劇。寺山の詩的な音律が映える台詞と、想像力をかきたてる魅惑的で怪しい登場人物によって彩られる世界は、まさに「寺山ワールド」の原点。主人公・猛夫、その父・彌平、彌平の婚約者・魔子の3人をめぐる悲恋の物語。
猛夫を演じるのは、大ヒット映画「東京リベンジャーズ」出演の山田裕貴、PARCO劇場『藪原検校』出演の松雪泰子が魔子を、そして彌平を2015年の『タンゴ・冬の終わりに』以来のPARCO劇場出演となるユースケ・サンタマリアが演じる。
悪魔的少女そばかすに清水くるみ、猛夫を慕う那美を伊原六花と若手俳優がキャスティング、さらに実力派の大谷亮介、中尾ミエらが共演。そして演出を手掛けるのは眞鍋卓嗣。昨年、第55回紀伊國屋演劇賞 個人賞及び、第28回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した眞鍋は、今作がPARCO劇場初進出。また作曲を手掛けるのは、志磨遼平(ドレスコーズ)。舞台音楽は『三文オペラ』(2018年)、『人類史』(2020年)につづく3作目となりますが、かつて「毛皮のマリーズ」として活動し、寺山修司からの影響を大きく受けた志磨による楽曲と、寺山の言葉の奇跡的な出会い、しかもドレスコーズの生演奏による上演。

初日に先駆けてフォトコールが行われた。披露されたのは第1幕の出だしの部分と1幕の終わりの部分。
まず、1幕の出だしの部分、時代設定は現代。北海岸のとあるホテル。海の音、舞台中央には老婆(中尾ミエ)が浮かび上がり、哀愁をたたえながらブルースを歌う。さすがの歌唱力は健在。

それから中幕が開き、一転して!嵐で船出が延期されている、と言う状況。パーティが始まる。客たちがグラスを片手に賑やかに、やや狂乱気味に盛り上がる。その中で猛夫(山田裕貴)は乗り気でない様子。バンドの演奏、客たちの合唱とダンス「酔いどれ船」、華やかな場面。オープニングにふさわしく、またこれから始まる物語を予感させる。

それから、1幕の終わり部分。難破して死んだと思っていた父・彌平(ユースケ・サンタマリア)が生還したことを告げられる猛夫と魔子(松雪泰子)。出会い、愛し始めてしまった二人。この事実が受け止めきれず、抱き合い切なく歌う(『紙の月』)。

猛夫は「愛し合う権利は二人にしかないから薔薇の花は2本あれば事足りる」という。残った薔薇の花を燃やす。女の子・そばかす(清水くるみ)は二人の恋の邪魔を。盗んだ薔薇の花を持って猛夫に見せ、「お父さんにあげようかな」と言い立ち去った。
そんな折に父・彌平はボーイ(山岸門人)と那美(伊原六花)とともにやってくる。上機嫌な様子。那美は猛夫に心を寄せている。父は魔子を驚かせるために結婚披露宴をやりたいとボーイに告げる。
父・彌平は息子である猛夫に声をかける。戸惑う猛夫、さらに「魔子には会ってくれたかね?いい女だろう」と上機嫌。だが、元気のない猛夫をいぶかしく思うところへ、那美が「猛夫さんが愛しているのは魔子さん」と告げる、まさに青天の霹靂。にわかに信じられない、いや、信じたくない父。そこへ追い打ちをかけるようにそばかすが「二人は恋人同士なんです」と爆弾発言。大波乱の予感しかない。

ここで歌われるナンバーは『わが人生の時』、歌うはユースケ・サンタマリアと山田裕貴。
『たし算の歌』は女学生たち。

会見に登壇したのは山田裕貴、松雪泰子、ユースケ・サンタマリア、音楽・音楽監督の志磨遼平(ドレスコーズ)そして演出の眞鍋卓嗣。

眞鍋卓嗣
「いよいよ来たかと。未上演の作品、いろんなやり方がある中でどう作り上げようか、丁寧に積み上げて…楽しみです。自分自身がぞくぞくした感じです」

山田裕貴
「3幕ものなのですが、それを2幕構成で休憩挟んで3時間ぐらい。寺山修司さんの伝えたいこと…短いシーンで起伏が激しかったり、隅まで伝えるのは相当な技量と精神力が必要だなと思って。それを演出の眞鍋卓嗣さんといっぱいディスカッションさせていただいたり、松雪さんともいっぱいお話させていただいて。お芝居でないところで笑顔にしてくれたり。志磨遼平さんの音楽に助けられて、みなさんが歌や踊りですごく盛り上げてくれているので、まずはこの舞台に立つみなさんが『海王星』をやりきれたと思えるような舞台になったらいいなと。僕はまだ、若輩者で未熟者で力不足を感じている日々なのですが、みんながこれをやりきれて、みんなが楽しんだら、お客さんも楽しんでもらえると感じています。初日、頑張りたいと思います」

松雪泰子
「眞鍋卓嗣さんの演出、緊張感を切らさずに劇の中で私たちが表現することに集中していきたいなと思っております。豊かな作品になるように精一杯、頑張りたいと思います」

ユースケ・サンタマリア
「僕は媚びた舞台はあまり好きではないんです。今回の『海王星』は、ものすごくあまり見たことのないような感覚、思ったよりできたなと手応えを感じています。眞鍋さんが本当に真摯に、かつ…ガンガン怒る演出家は嫌いなんです(笑)、優しく優しく…なんか、何やっても許してくれる。『本当にやっていいんですか?』って(笑)。稽古真面目にやったら飽きるから、バカなことをやったら、『それ、やります?』みたいな(笑)、『やってもいいんですか?』みたいな。優しすぎる、でも、すごい真摯に寄り添ってくれる。見事な柔らかい演出っていうんでしょうか、頼りになる人です。志磨遼平さんは、寺山さんが書いた詩、それに最初からついていたかのような見事な曲を書いてくれた。曲だけとってもかっこいいと思う。観た人は、なんか熱かったなと、中身詰まってるなと思うような舞台になると思います。頑張ります!」

志磨遼平
「普段はバンドやってます、歌うこともあります。演劇は、僕が普段いる世界、ロックとは全然違う世界、全部刺激的です。毎日楽しくお稽古をさせていただきました。普段は人に歌っていただくことはないので、皆様に当て書きするような曲を書きまして、その書いた曲をご本人が歌ってくれる、光栄です。みなさんの歌声が素晴らしいです。僕は寺山修司さんのファンで、『毛皮のマリー』っていうのを勝手に拝借してました。それから20年ぐらいたって寺山さんの未発表の作品、また音楽劇であるということ、音楽をつける、恐れ多いです。共作みたいなことができるなんて夢のようです。張り切って作りました、生演奏で…嬉しいです!頑張ります!」

そして、山田裕貴に質問が出た。本を読んだ印象を改めて、ということで、
「読んだだけでは決めてはいけない気がしました、こういう人物だということを。稽古場で確かめていく作業がすごく多かった気がします。今も『こうなんじゃないか、ああなんじゃないか』ということが思えるくらいにお話としてはシンプルですが、感情を、隅まで伝えるのは、どうしたらよいかをすごく考えながら、一個も逃さずに集中力を切らさず演じなければならない。感情がフラットでいられるシーンがないというか…何かに苦しんでいて…苦しいですよ……それがやりがいでもありますし、日々進化していく舞台になるのではないかと思います」
公演は12月6日より30日まで。それから大阪、富山、仙台、名古屋にて公演。

<あらすじ>
舞台は、戦艦の船底にある「北海岸ホテル」。
嵐で船出を先延ばしにされた怪しげな人々が集まり、かりそめのパーティーに興じている。
主人公・猛夫は一人落ち込んでいる。父、彌平の乗る船が嵐で難破し死んでしまったのだ。
悲しむ猛夫のもとに、父と再婚し、義母となるはずだった魔子が現れる。
彌平の思い出を語り合う内に惹かれ合う猛夫と魔子、しかし、死んだはずの彌平が、生還したことにより、悲恋へと舵を切る。恋仇となった仲の良い親子、さらに猛夫を慕う那美と悪魔的少女そばかすの存在が、3人の恋慕を悲劇的に加速させる。そして、魔子の心は揺れるまま、彌平との結婚式を迎える。物語は、この5人を軸に、ブルースを唄う老婆や昆虫採集の少女たちなど寺山修司的な登場人物が現れ、様々な心情を唄い踊り、物哀しい祝祭劇を彩っていく。

<公演概要>
公演名:PARCO PRODUCE2021音楽劇『海王星』
日程:2021年12月6日(月)~12月30日(木)
会場:PARCO劇場
スタッフ
作:寺山修司
演出:眞鍋卓嗣
音楽・音楽監督:志磨遼平(ドレスコーズ)
キャスト:
山田裕貴 松雪泰子 清水くるみ 伊原六花
佐藤誓 冨永竜 山岸門人 澤魁士 眼鏡太郎 野々山貴之
内田慈 坪井木の実 白木原しのぶ
小山雲母 片桐美穂 金井美樹 島ゆいか 吉井乃歌
大谷亮介 中尾ミエ ユースケ・サンタマリア
地方公演:大阪、富山、仙台、名古屋ほか
公式WEBサイト:https://stage.parco.jp/program/kaiousei