「ヘタミュ」の愛称で人気のミュージカル「ヘタリア」が新シリーズとして帰ってくる。前回シリーズお馴染みのキャストが集結、そして新シリーズ初登場キャラクターはロマーノ、演じるは樋口裕太、最強のヘタミュ布陣となる。脚本と演出は、これまた最強のタッグ、なるせゆうせいと吉谷晃太朗。この二人の楽しいトークが実現した。前シリーズの思い出から、今回の見どころなど、語っていただいた。
――『ヘタミュ』シリーズを振り返ってみていかがでしょうか。
なるせ:いちばん思い出深いのは、第2弾「The Great World」のときのイギリスとアメリカの話。(廣瀬)大介と(磯貝)龍乎のときだったんですけれど。龍乎が根を上げるのを見たことがいままであんまりなかったのに、ソデはけたときめちゃくちゃ疲れている姿を見て、ある意味感動しました(笑)。新鮮でしたね。あとは、物語を作る上で短編的な原作を舞台という形にしなくてはならなかったので、それを体系的にしていくのが苦労したのかなと。原作に対して、パズルゲームのように時間軸をつなげたり。
吉谷:第1弾「Singin’in the World」で苦労したところといえば、戦いの描き方みたいなところをどこまで直接的にできるかというところでしょうか。逃げても伝わるものでもないし。『ヘタリア』という世界観の中だったり、みなさんが思う歴史の話というのも含めて、これが殺伐としたものになってしまうとミュージカルとして楽しめないので、そこには行きたくなかったし、その匙加減は難しかったと思います。
なるせ:普通に作ったら、まあまあシビアなものが出来上がりそうですよね。
吉谷:だから例えば、音声的な要素で銃声を入れるのか入れないのか、とか。やるべきだろうというのはもちろんあるんですけれど。でもそれをお客様が観た場合、拒否反応を示されてしまいかねない。だからここをやりたいのになぁ……とか現場では悩みながらやっていましたね。
――世界史の上では戦いの描写は避けては通れない要素ではありますが、それを表現してしまうと『ヘタリア』っぽくない、と思われてしまう……そういうところでしょうか。
吉谷:そういう方向でも観られたくないし、意図していないところに行ってほしくないというのはありましたね。もちろん、みんなわかっているし、大事にしていることなんですよ。その誤解を受けてほしくないな、と。
――そこが、ほかの作品とは大きく違うところでもありますしね。
吉谷:とはいえ、歴史を含めて知っている人なのであれば、匂わせている表現とかがわかるようになっているから。二度楽しいのが『ヘタミュ』といって間違いないと思います。
――今回、新シリーズということですが。イタリア近辺がメインになってくると思います。見どころについてはいかがでしょうか。
吉谷:今回はイタリアとロマーノの関係性をラブストーリー的に描きたいなと思っていて。恋愛を表現するという意味ではなく、もっと大きな意味での愛みたいな感じで。でもそれは今までの『ヘタミュ』のタッチではなかったんですよ。そこが見どころかなって思います。
――イタリアとロマーノは、兄弟といってもかなり違いますものね。
なるせ:第3弾「in the new world」まで三回公演をやって、その後ちょっと期間が空いて、新シリーズをやろうというときにイタリアを軸にしようというのは決めていたんです。イタリアと、ロマーノをメインにして「ヘタリアまた始まるぞ」っていうアピールをしたかったんですよね。
――もともとバラバラだったイタリアがあって、それが1つになって、という背景を抑えておくとより面白くなりそうですよね。
なるせ:ほかにはプロイセンも結局いなくなっちゃって、ドイツがうまれて…そこらへんのところをこれまでしっかり描けているかというとそうでもないので。「それぞれのキャラクターがうまれるまで」をもうちょっと丁寧にやれるといいのかなって思っています。
――たしかに、お客様の中には歴史に詳しくなかったりもするし、描き方としてはそこが難しいのかなって思います。
吉谷:そうですね。もちろんどういった方にも楽しんでもらいたいという気持ちがあるから、たしかにそういう部分ですよね。とはいえ勉強的な知識を詰め込んでいる作品にはしないだろうし。
なるせ:そこがまた、みなさんの……エンターティナーの見せ所ではあります。
吉谷:だから、体感として「そんな感じなんだ」って思うくらいでいい。歴史を知りたいと思ってくれればよりいいものになるし。
なるせ:そこが『ヘタリア』の持つ魅力でもありますしね。いつか世界史の教科書に載せればいいのになって思っています(笑)。
吉谷:どこかの学校の図書館にはおいてあるらしいですよ。
なるせ:それはすごいな(笑)。
――キャストさんも、前シリーズに出た方がほぼほぼ続投してらっしゃいますね。
なるせ:『ヘタミュ』ってすごく愛されている作品なんですよ。最近はあまり舞台に出ていない人も出てくれていますしね。(廣瀬)大介とか。
吉谷:ROUも。イギリスとオーストリアの絡みとか見ているとなぜかうれしいんです(笑)。そこやってくれているっていうのが。
なるせ:なんかうれしいですよね。
吉谷:スタッフもみんなシリーズで変わっていないんです。そこがみんなで「おかえり」みたいな。珍しいですよね。
なるせ:こういうのって何人もキャストが変わってとしてもおかしくないのにね。
――役者さんが楽しんで役に取り込んでいるのがよくわかるのがいいですよね。
なるせ:結果的に今回ドイツがいないっていうのもちょっとそれが面白かったりします(笑)。
吉谷:そこは逆に未来を感じさせてもらっていると言うか。彼が1回おやすみしたということがちょっと希望があるというかね。あのドイツがシエスタしてる!?みたいな(笑)。そういうところも含めて、『ヘタミュ』な感じもしますし。たまたまのめぐり合わせでさえ遊べると言うか。こうなったからこうしよう、と考えられる。
――稽古についてはいかがでしょうか。
吉谷:いま、ちょうど半分くらいは構成できているところです。もちろんミュージカルなので、振り付けとか歌の部分も入ってくるんで、普通のお芝居よりかは時間はかかるんですけれども。キャストについては前回よりもちゃんと僕の話を聞いてくれるんです(笑)。前はちょっと騒がしかったりしてたんですけど(笑)。
なるせ:稽古場では、(長江)崚行は、稽古場の佇まいがほかより大人な感じが。引っ張るつもりはないんだろうけど、自分がそこにいるということで知らずにまとめようとしているみたいなものがありましたね。
――それでは、最後のメッセージを。
なるせ:『ヘタミュ』は三部作として区切りよく終わるかなと思っていたんですが、また新たにシリーズがはじまるということで。これはすごく数奇な運命といういか。このコロナという状況があって、もう一回世界が元気になろうという空気の中で、必然的に復活したんじゃないかっていうのを思っていて。『ヘタリア』って世界平和じゃないけれど、世の中がゴタゴタしている中で「元気になろうぜ」っていうテーマが流れているから。これを観てもう一回、世界に対する見方をいい方向に向かわせられるような、そんな作品にしたいなと思っています。
吉谷:僕は「in the new world」のときに、終わるのちょっとさみしいなって思っていたんですよ。「FINAL LIVE」もそうなんですけれど、卒業式を作るのってこういう感じなのかって。そういう意味では楽しめなかった部分もあったんですが、また新しくシリーズが始まるので。今度はそこを感じることなく、楽しんでいきたいなと思っていますし。やっぱり、昔の話ではあるものの今、どうみんなが生きていてというところをリンクして作っていきたいなという気持ちのままでいたいなと。結構舞台美術とか、プランが二転三転したり難航したところもあって。それはこのタイミングということがあるからなのかなと思っています。コロナ禍が今の所は落ち着いているだからこそそうなのかもしれないですけどね。今作るならこうだ、というのを提示していきたいなと。
――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。
<ストーリー>
その昔、世界の中で、大きくてひろーい心をもったローマ爺ちゃんと一緒に、イタリアとロマーノの兄弟は楽しく陽気に暮らしていた。
やがて時は流れ、周りの者たちが次々と力をつけ始め、そうして気がついた頃には、ローマ爺ちゃんはいなくなり兄弟も離れ離れになっていく。
「また会おうね!いつか、ローマじいちゃんのように強くなろうね!」そう誓いを立てて・・・。
<概要>
ミュージカル「ヘタリア~The world is wonderful~」
日程・会場:
2021年12月16日〜19日 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホ-ル
2021年12月23日〜31日 東京・品川プリンスホテルステラボール
演出:吉谷晃太朗
脚本:なるせゆうせい
振付:MAMORU
音楽:tak
◆キャスト
イタリア:長江崚行、日本:植田圭輔
アメリカ:磯貝龍乎、イギリス:廣瀬大介、フランス:寿里
ロシア:山沖勇輝、中国:杉江大志、オーストリア:ROU
スペイン:山田ジェームス武、プロイセン:高本学、ロマーノ:樋口裕太 他
企画・プロデュース:4cu(Frontier Works Inc.)
制作:ポリゴンマジック
主催:ミュージカル「ヘタリアWW」製作委員会
【公式サイト】http://musical-hetalia.com/
【公式Twitter】@hetamu_official https://twitter.com/hetamu_official
©日丸屋秀和/集英社・ミュージカル「ヘタリアWW」製作委員会
取材:高 浩美
構成協力:佐藤たかし
なるせゆうせい撮影:金丸雅代