松山ケンイチ主演 舞台『hana-1970、コザが燃えた日-』会見レポ

沖縄返還 50年目の2022年、舞台「hana-1970、コザが燃えた日-」が上演される。

常に時代と向き合い演劇の力を信じて力強い作品を送り出している演出家・栗山民也が長年見つめてきた沖縄を題材に、 同志のようと信頼する作家・畑澤聖悟に書き下ろしを託した新作。松山ケンイチは今回会話劇初主演となる。弟役に岡山天音、二人を息子として引き取り、育てるおかあに余貴美子。
松山ケンイチが演じる祝(いわい)ハルオは家族は沖縄戦で死亡。親も自分の名前もわからない状態で生き残っておかあに引き取られ育てられた。おかあの期待を裏切ってドロップアウト。金武のAサインバーでバンドマンをしていたが、ある日を境に、現在はギターを弾くこともなく アシバー(ヤクザ)となった。そのため、おかあから出入り禁止(勘当)を言い渡されている。ハルオの弟を演じる岡山天音、照屋アキオはおかあの近所の子だった。沖縄戦の折、米軍 の艦砲射撃によって家族は死亡。共に生き残ったおかあに引き取られる。高校、大学と進み、教員に。沖縄教職員会の幹部として、沖縄県祖国復帰協議会(復帰協)の活動に勤し む。就職を機に「祝」から「照屋」に復姓。余貴美子は二人の育ての親であるおかあ、祝ユキコ。嘉手納基地の滑走路で潰された野里村(現嘉手納町)生まれ。1944年 (昭和19年)日本軍の中飛行場設置のため村ごと強制接収された。同年の十十空襲で も被災。沖縄戦の折、家族は米軍の艦砲射撃で死亡。生き残った近所の子(アキオ)と 身元のわからない子(ハルオ)を引き取って育てる。戦後、コザの収容所にいたときに元日本兵のジラース(神尾佑)と援助金のために偽装結婚。自分の子どもたちに教育を受けさせ 「まっとうな」仕事に就かせるために脇目も振らずに働いてきた。コザ騒動の日の血の繋がらない家族の物語。
都内某所にて記者会見が行われた。登壇したのは松山ケンイチ、岡山天音、余貴美子、舞台衣装で登場。 司会は竹内香苗アナウンサー。


松山ケンイチは「コザ騒動自体、名前は知っていた」そう。「そこに行き着くまでの沖縄の人たちの感情だとか、思いみたいなものは、知らなかったので、現地に行っていろんな方とお話をさせていただいた」といい、さらに「そこに行き着くまでの沖縄の人たちの感情や思いみたいなものは、知らなかったので、現地に行っていろんな方とお話をさせていただき、驚いたし、今でも消化しきれない。自分の中で消化しきれない状態、何かがずっと残りながら稽古をやってます」と語った。
岡山天音は「実際にコザ騒動があった場所を歩きました、渦中にいた方からお話をお伺いし、街を回りました。この体験はすごく大きい、そこで実感を持てた、力になった気がします」とコメント、それを受けて松山ケンイチが「圧倒されたよね、今、起こったかのように話してくださって…今も解決されていない問題、それをきちんと発していらっしゃって圧倒されました」と語る。その話を横で聞いていた余貴美子が「二人ともえらいですよね!!70年代のその頃、私は14か15歳、沖縄は珊瑚と海、三線(さんしん)の稽古したり、泡盛飲んだり、両親とも台湾なので、食べるものもヘチマ、ゴーヤ、毎日あって、沖縄そっくり、だから、沖縄は居心地がいい…なんで誘ってくれなかったの(笑)」といい、松山ケンイチ、岡山天音、思わず笑う。


また台本を読んだ印象について松山ケンイチは「びっくりしたことばかり。日本と沖縄のギャップが台本に表現されていてびっくりしました。感じたことをそのまま、届けられるようにしたい」と語る。岡山天音も「歴史の固有名詞だったり見慣れないエピソード、今も続いている沖縄、日本の実情を伝える作品になってると思うので…キャラクターの感情が裏で繋がってて、人の声で出来事を説明したり、そういうベースが発せられると人間の生き様が身をもって感じられた、根本は同じ人間だけど」と台本の深さを感じた様子。余貴美子も「読んだだけではとても理解できなかったことを、稽古で相手がいて、話して読み解いていくと実感が湧いてきて…『こういうことだったんだ』と。相手がいて話す大切さ。話していくと沖縄の言葉もなんとなく実感してきて。時代の熱い感じとかも。頭の中だけではわからないなと」としみじみ。

作品のテーマは家族であるが、松山ケンイチは「哀しみ、怒りの対になる部分があると思うのですが、それが家族のやり取りの中で表現できるのかなと。おかあとハルオ、テンポ感、やり取りが昔からあって、昔からこんな風に過ごしてきたんだなと実感できるのがおかあ。その温かさと幸福感に救われるのを自分自身感じていますので、稽古で試して、新しいものができたらいいなと」いい、余貴美子も「演出家が『言葉の力を信じろ』と。『言葉だけで人を殺すこともできるし、60年代、70年代の時代を表現するには、人と関わっていくことでしかこの時代は表現できない、今はそれを止めてしまったと、怠けているんじゃないか』とおっしゃる、実人生でも『そうだな』と。この作品に出会えて良かったなと思いますね」としみじみと。


最後にPR。
余貴美子「参加者全員のむきだしの丁々発止の会話をお楽しみいただけると思いますので、劇場へ足を御運び下さい」
岡山天音「沖縄のコザ騒動、そういう史実に触れて、現代に生きる人たちにこそ、ぜひ、観て欲しいなと思います。今の人たちが知らなかったり、どこかに置いてきてしまった人間の美しさみたいなものがふんだんに描かれた作品、沖縄のエネルギーを観にいらして下さい」
松山ケンイチ「一言で言える作品ではないのですが、血の繋がらない擬似家族みたいな。アシバー…つまり遊び人、ヤクザがいて、教師がいて、生活のために密貿易をやってるおじさんがいたり、米兵がいたり、デモを熱心にやっている人がいたり、多様性のあるキャラクターたち、当時、この多様性は普通にあったはず。もしかしたら、何かをなかったことにすること、多様性を見出そうとしているんですが、向き合っていくことが多様性なんじゃないかなと…稽古をして感じたことなんですね。この作品もテーマとして一つあるかもしれない、今にも通じる部分があるかもしれないので、ぜひ、観ていただきたいと思います」と締めて会見は終了した。

[コザ騒動について]
1970年(昭和45年)12月20日未明、アメリカ施政権下の沖縄のコザ市(現在の沖縄県沖縄市)で起こったアメリカ軍車両および施設に対する焼き討ち事件。
当時のコザ市にはアメリカ軍嘉手納飛行場と陸軍のキャンプ桑江があり、アメリカ軍人や軍属相手の飲食店、土産品店、質屋、洋服店が立ち並び、市民には基地への納入業者、基地建設に従事する土木建築労働者、基地で働く軍雇用員も多かった。事件当時はベトナム戦争の最中、沖縄を拠点に活動していたアメリカ軍関係者の消費活動は激しく、市の経済の約80パーセントは基地に依存していた。アメリカ軍向け飲食店であるAサインは「全沖縄のほぼ3割を占める286軒」が集中。しかし日本人の間にはアメリカ軍に対する不満が鬱積。その最たるものがアメリカ軍人・軍属による犯罪、アメリカ人男性による性的な被害を訴える女性もいた。1968年12月には嘉手納飛行場B-52爆撃機炎上事故が発生。沖縄の人々は日本およびアメリカの憲法のどちらも適用されず、身分的にきわめて不安定な立場にあった。アメリカ軍人や軍属が犯した犯罪の捜査権・逮捕権・裁判権はアメリカ軍に委ねられており、加害者は非公開の軍法会議で陪審制による評決で裁かれたが、殺人・強盗・強姦などの凶悪犯罪であっても証拠不十分として無罪や微罪に、あるいは重罪が科されても加害者が米国へ転属して結果や詳細が不明となることが多々あり、沖縄の住人の被害者が被害を賠償されることはほとんどなかった。
事件当時の沖縄はベトナムからの帰還・一時休暇の兵士で溢れており、沖縄のアメリカ軍人や軍属による犯罪は、ベトナム派兵が本格化した1965年から1967年に1000件を超え、その後は減少したが暴動が発生した1970年は960件と急増、うち348件がコザ市で発生。コザ騒動の年の9月、糸満町(現・糸満市)の糸満ロータリー付近で、酒気帯び運転かつスピード違反のアメリカ兵が歩道に乗り上げて沖縄人女性を轢殺。同年12月7日に軍法会議が行われ、被害者への賠償は認められたが、加害者は証拠不十分として無罪判決に。

【あらすじ】
1970(昭和45)年12月20日(日)深夜。 コザ市ゲート通りにある米兵相手のパウンショップ(質屋)兼バー「hana」では、看板の灯 が落ちた店内で、おかあ(余貴美子)、娘のナナコ(上原千果)、おかあのヒモのジラースー (神尾佑)が三線を弾きながら歌っている。 そこへ、アシバー(ヤクザ)となり家に寄り付かなくなった息子のハルオ(松山ケンイチ) が突然現れる。おかあが匿っていた米兵を見つけ、揉めていると、バーに客がやってくる。 「毒ガス即時完全撤去を要求する県民大会」帰りの教員たちだ。その中には、息子のアキオ (岡山天音)もいた。この数年、顔を合わせることを避けていた息子たちと母親がそろった 夜。ゲート通りでは歴史的な事件が起ころうとしていた。 血のつながらないいびつな家族の中に横たわる、ある事実とは。

<概要>
タイトル:『hana -1970、コザが燃えた日-』
日程・会場:2022年1月9日~1月30日 東京芸術劇場プレイハウス
※2月 大阪、宮城 公演あり
[出演]
松山ケンイチ
岡山天音
神尾 佑
櫻井章喜
金子岳憲
玲央バルトナー
上原千果
余 貴美子
[スタッフ]
作:畑澤聖悟
演出:栗山民也
美術:伊藤雅子
照明:服部 基
音楽:国広和毅
音響:井上正弘
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:田中麻衣子
舞台監督:加藤 高
主催:ホリプロ
企画制作:ホリプロ

公式HP https://horipro-stage.jp/stage/hana2022/
公式Twitter https://twitter.com/stagehana