『フランケンシュタイン』は、イギリスの小説家、シェリーが1818年3月に匿名で出版したゴシック小説。
原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』。フランケンシュタインは同書の主人公であるスイス人科学者の姓である。今日出回っているものは、1831年の改訂版。本書を原案とする創作は数え切れないほど。ゴシック小説の代表であるが、同時にロマン主義の小説とする見方もあり、書簡体小説の形式もとる。科学技術を背景とする着想ゆえに最初のSF小説とする評価も。しかし後世の映像化・創作・パロディ作品では、主人公が博士であったり、怪物の知性が低い、あるいは生まれつき凶暴であるなど、原作とはかけ離れた翻案がなされている例が多い。
七海ひろきが演じるのは、若き科学者が禁忌を犯した実験で生み出した名もなき“怪物”。人間から虐げられながらも家族の営みに「美しさ」を知り、愛する人と「心」を通わせたいと願う怪物を「儚さ」を漂わせた斬新なビジュアルで体現。
そして、怪物の創造主である若き科学者ビクター・フランケンシュタイン役を岐洲匠、怪物と心を通わせる盲目の娘アガサ役を彩凪翔が演じる。元宝塚歌劇団雪組・男役スターの彩凪は退団後初となる女性役に挑む。
このほか、判事やアガサの兄フェリクスなどに蒼木陣、知的障害があるビクターの弟ウィル役などに佐藤信長、ビクターの婚約者リズ役とフェリクスの新妻サフィ役の二役に横山結衣(AKB48)、フランケンシュタイン家に仕える召使いジャスティーヌに北村由海、アガサたちの祖父ラセー役に永田耕一。
一人の白衣を着た男が登場する。彼の名前はビクター・フランケンシュタイン(岐洲匠)。恐るべき発明に挑んでいる。「あと少しでお前の病気を治せるのだ!」と叫ぶ。雷鳴が轟く。「くそ!」と焦る。その時…心臓の脈打つ音が…。「成功だ!なんて綺麗なんだ!」ここはスイスのジュネーブ。ビクターは恐るべき発明に成功、名もなき【怪物】(七海ひろき)。あえて名前をつけなかったのは愛着が湧いてしまうから。しゃべることを教えてみる。すると、しゃべるように!「出来た!」と叫ぶビクター。子供の脳を用いているので覚えるのは早い。ところが!その【怪物】が逃げてしまった。「どこへ行った!」。それからタイトルロール。
一転して陽気な酒場のシーン。人々が楽しそうに飲み、そしておしゃべり。そこへふらふらと【怪物】が入ってきた。その容姿、不気味な手、我先に逃げる。しかし、そこに居合わせた新聞記者、”仕事魂”が!首尾よく撮影に成功する。見た目と怪力で人々から拒絶される孤独な【怪物】、しかも空腹。そんな時、杖をついた娘に出会う。目が見えないので、相手の容姿はわからず、触って確認する。彼女の名前はアガサ(彩凪翔)、先入観を持たず、【怪物】のピュアな内面を感じ取り、【怪物】がひとりぼっちであることを知る。そんなアガサは【怪物】に食べ物を渡したり、あるいは図書館で本を借りて【怪物】に渡したり。【怪物】はそこからあらゆる知識を吸収していく。
一方のビクター、フランケンシュタイン家は名家な上流階級の家柄。資産も十分にある。ビクターには弟がいた。彼の名前はウィル(佐藤信長)、いわゆる知恵遅れ。ビクターは弟が心配、どうにかしてやりたいと思っている。そしてビクターには婚約者リズ(横山結衣)がいた。身寄りのない彼女は幼くしてフランケンシュタイン家に養子になったが、ビクターの母が死去、彼女はあることを企んでいた。ビクターは新聞で自分が作った【怪物】が街中に出没したことを知る。【怪物】を探さなくては、と考えるビクター。
【怪物】はアガサと一緒にいるときは幸せ、知識が増えるだけでなく、人間として大事なことを学んでいく。だが、その容姿からアガサの家族、アガサの兄フェリクス(蒼木陣)、フェリクスの新妻サフィ(横山結衣)、祖父ラセー(永田耕一)は恐れおののき、【怪物】を攻撃してしまう。再び、天涯孤独になった【怪物】は、偶然にもビクターの弟・ウィルに出くわす。ウィルは確かに知恵遅れだが、彼もまたピュアな心を持っていた。すぐに二人は意気投合し、”友達”になったが、それが更なる悲劇を生むとは知る由もなく…というのがだいたいの流れ。
【怪物】演じる七海ひろきがだんだんと知識と愛を知り、人間よりも人間らしく変貌していく様を中性的な魅力を存分に活かしながら、また、時折見せる【怪物】の笑顔は光輝くような満面の笑み、観ている方も思わず笑みがこぼれる。そして【怪物】を作り出した天才とも言えるビクター・フランケンシュタイン、演じるは岐洲匠。そもそもの【怪物】を作った動機が家族、弟への想い。ラストで様々な真実を知る瞬間、驚愕の表情と孤独をにじませる。蒼木陣と横山結衣が複数役を演じるが、その役が”真逆”。アガサの兄フェリクスと新妻サフィは絵に描いたような素朴な愛ある夫婦で祖父のラセー(永田耕一)を尊敬し、妹のアガサと仲が良い。ところが、判事(蒼木陣)とビクターの婚約者リズ、実はこの二人、ただならぬ関係。
特にリズは心の奥底では何を考えているかわからないダークなキャラクター。この真逆な役割を蒼木陣と横山結衣が物語の重要人物として存在感を放つ。召使いジャスティーヌ(北村由海)、細かいところに気配りができるキャラクターを好演、後半はダークな二人に…。
佐藤信長のウィルは可愛らしく、兄が心配するのもよくわかる。そしてこの物語の”光”を担うのが盲目の娘・アガサ。宝塚の男役スターだった彩凪翔の初女性役でしかも盲目という難役。優しく、温かく、【怪物】の凍てついた心を溶かしていくには十分のキャラクター、初女性役とは思えないようなたおやかさ。
ゴシックホラー的で推理要素もあり、愛、正義、差別、人しての倫理観などを内包した脚本は岡本貴也、目が離せない展開、テーマを明快に見せる。オーソドックスで奇をてらわず、俳優陣の持ち味を存分に活かし、ヒューマンドラマを全面に出した演出、錦織一清の手腕が光る。
なお、東京公演千秋楽、大阪公演千秋楽を含む全4公演のライブ配信が決まっており、七海ひろきメイン特別スイッチングDAYと彩凪翔メイン特別スイッチングDAYが用意されており、アーカイブ視聴期間も設けてある。また22年7月にはBlu-rayの発売も予定されている。また、急に時間が空いた場合、当日券も販売しているので!
<ストーリー>
19世紀、欧州。若き科学者ビクター・フランケンシュタイン(岐洲匠)は、科学の力で死体を蘇らせる禁忌の実験に成功し、名もなき【怪物】(七海ひろき)が誕生する。【怪物】は言語や知性を習得し、感情が芽生え、やがてコントロールできなくなるほどの怪力を身につける。その怪力に身の危険を感じたビクターからは見捨てられ、周囲の人々からも拒絶され疎外されて孤独になった時、盲目の娘・アガサ(彩凪翔)と出会う。彼女の美しい心に触れたことで、人間の理解と愛を求めた【怪物】が彷徨い行き着く先とは…。
<概要>
タイトル:舞台「フランケンシュタイン-cry for the moon-」
日程・会場:
[東京]2022年1月7日(金)~1月16日(日)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
[大阪]2022年1月20日(木)~1月23日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
原作:『フランケンシュタイン』(シェリー作 小林章夫訳 光文社古典新訳文庫刊)
演出:錦織一清
脚本::岡本貴也
出演:七海ひろき、岐洲匠、彩凪翔/蒼木陣、佐藤信長、横山結衣(AKB48)、北村由海/永田耕一
主催:舞台「フランケンシュタイン-cry for the moon-」製作委員会
公式HP https://stage-frankenstein.com
公式Twitter @franken_cftm
公式Instagram @frankenstein_cftm
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