ミュージカル「少女革命ウテナ~白き薔薇のつぼみ~」

  アニメ「少女革命ウテナ」(1997年放映)を原作とするミュージカル「少女革命ウテナ~白き薔薇のつぼみ~」、実はメディアミックスは盛んで、1997年には三ツ矢雄二脚本・演出で舞台化され、1999年には月蝕歌劇団でも舞台化され、2000年にも別のカンパニーで舞台化された。今回は久しぶりの舞台、ミュージカル化となる。アンシーと出会ったウテナが、桐生冬芽や西園寺莢一などの生徒会メンバーと“薔薇の花嫁”を奪い合う決闘が描かれる。演出はエモーショナルでスピード感あふれる舞台創りで定評のある吉谷光太郎。実はテレビアニメ版、漫画版、小説版、劇場版ではそれぞれ、話の展開や設定が異なっている。今回はアニメが原作となる。

 舞台上には薔薇で縁取られたセット、この作品は“薔薇”がキーワード。教会の鐘の音が鳴り響く。「昔、昔のお話です」と歌う。「僕も王子様になる」と言う天上ウテナ、男装がよく似合い、学園の女子から「ウテナ先輩、かっこいい!」と声援がとぶ。そんな声をうけて「かっちょいい王子様になりたいんだ」とウテナ。そんな折、姫宮アンシーに出会うが、寂しげな空気感でウテナは気になる。そんな頃、女子学生の憧れの的生徒会メンバー・西園寺莢一に親友の篠原若葉は、もう西園寺に首ったけだ。ラブレターを出したら、西園寺によって掲示板に張り出され、恥をかく篠原若葉、そんな様子を見て真っすぐなウテナはもちろん、許せない!とばかりに西園寺に猛突進、ウテナがつけている左薬指の指輪(薔薇の刻印)を見て「君が次のデュエリストか」西園寺はウテナに言う。いよいよ決闘、その場所にいくと真っ赤なドレスを着たアンシーが現れるのであった……。

 

 最初から楽曲と歌が連続、本格的なミュージカルシーンが続く。オープニングは激しくも立体的なダンスで、惹き付けられる。モノトーンの衣裳をまとったアンサンブルのダンススキルの高さ、ここは圧巻。そして本格的に「少女革命ウテナ」の物語が始まる。そもそもウテナは幼い頃に助けてくれた王子様に憧れて王子様になりたいと願う。そして「薔薇の刻印」と呼ばれる指輪を持っているがために薔薇の花嫁をかけた決闘ゲームに巻き込まれていく。

 

 この戦いを通して内面が変わっていくウテナ、自分らしく、思うがままに真っすぐであろうとする。また、その他のキャラクターの陰の部分が興味深い。薫幹は人当たりはよいが幼い頃、妹とピアノの連弾をしていた頃の思い出を胸にしまう。西園寺莢一は粗暴な性格であるがアンシーを愛する。有栖川樹璃はいわゆる男装の麗人で、気位も高い。学園一のプレイボーイである桐生冬芽はアグレッシヴで周囲の者を利用する傾向がある自信家だ。そんなひとくせもふたくせもある、そんなキャラクター達の光と陰、特に陰、心の闇が時折透けてみえるところが、この作品に奥行きを与えている。そして様々な思惑が交錯し、ラスト、再びウテナは決闘に挑んでいく。明るく、正義を信じるヒロインものとは異なり、屈折した思いや過去の記憶、そういった、ともすると“負”の感情が渦を巻き、それがキャラクター達をしっかりとした“人物”として魅せる。清々しさよりも心の“ノイズ”を臆する事無くみせていく物語、そんな奥行きのある原作だからこそ、息の長いコンテンツなりうるのである。

 

 ウテナ演じる乃木坂46の能條愛未、キャラクターの成長と共に舞台上でスキルアップ、将来性のある俳優、また、姫宮アンシー演じる山内優花は歌唱力が高く、よく通る伸びやかな歌声が印象的。桐生冬芽役の戸谷公人、西園寺莢一役の横井翔二郎、共に闇を抱えるイケメン、かっこいいだけじゃないキャラクター創り、皆、健闘。布やシルエットを使った演出も効果的で、映像を使わない、アナログ表現で徹底的に魅せる。少々、小振りの劇場、CBGKシブゲキ!!、密な空間でのウテナの革命的なストーリー、舞台は区切りのよいところで終わっているが、この物語はまだまだ、先がある。キャラクターの“闇”の部分が奥行きがあるので、続きも見たくなる、また、TVアニメと劇場版もストーリーが異なるので、そういったアナザーストーリーもミュージカルで観たい気になる、そんな出来映えであった。

 ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは天上ウテナ:能條愛未(乃木坂46)、姫宮アンシー:山内優花、桐生冬芽:戸谷公人、西園寺莢一:横井翔二郎、有栖川樹璃:立道梨緒奈、薫幹:大崎捺希。

 大崎捺希は「稽古は楽しくって毎日、毎日面白い、いい座組!」と言い、立道梨緒奈は「みんなで高め合って」とコメント。横井翔二郎は「いい現場だった」と言い、稽古場の雰囲気はすこぶるよかった様子。能條愛未は「キャラクターが各々、個性的で魅力的。観ていて飽きない」と作品キャラの感想をコメント。山内優花は「作品の世界観が美しい」とコメントしたが、原作の「少女革命ウテナ」は単なる学園アニメや変身バトルヒロインものとは一線を画す。男装の麗人、影絵の少女達によるなんとも不可思議な劇中劇(この舞台でも登場)、ちょっとアバンギャルドな空気感、哲学的な言葉もあり、そこが人気の秘密のひとつ。また、戸谷公人は「ラストシーンは派手になっています」と語るが、ここのバトルは必見!立道梨緒奈は「ワクワクするシーンがたくさんあります!」とコメント。能條愛未は「20年前のアニメということですが、ショーアップされていてパワーアップしています!ミュージカル『少女革命ウテナ』を全力で!」と力強く会見を締めくくった。なお、ゲネプロには多くの観劇者が訪れ、熱いステージが展開された。

 

【公演概要】

ミュージカル「少女革命ウテナ~白き薔薇のつぼみ~」

 

日程:2018年3月8日(木)~3月18日(日)

会場:CBGKシブゲキ!!

 

<スタッフ>

原作:ビーパパス
スーパーバイザー:幾原邦彦
脚本・演出:吉谷光太郎
企画・製作:エグジットチューンズ/ポニーキャニオン
制作:ポリゴンマジック
主催:ミュージカル「少女革命ウテナ」製作委員会

 

<キャスト>

天上ウテナ:能條愛未(乃木坂46)

姫宮アンシー:山内優花

桐生冬芽:戸谷公人

西園寺莢一:横井翔二郎
有栖川樹璃:立道梨緒奈
薫幹:大崎捺希
桐生七実:鈴木亜里紗
篠原若葉:竹内夢
影絵少女A子:熊田愛里
影絵少女B子:NENE
冬芽・幼少期:池田謙信
西園寺・幼少期:山内涼平

 

公式サイト:http://musical-utena.com

 

(c)ビーパパス・さいとうちほ/小学館・少革委員会・テレビ東京

(c)ミュージカル「少女革命ウテナ」製作委員会

 

文:Hiromi Koh