本作はゲームクリエイター・イシイジロウの原作をもとに、脚本・演出を松崎史也が手がける舞台シリーズの第2弾。2017年3月に上演された「龍よ、狼と踊れ～ Dragon,Dance with Wolves～」の続編にあたるもの。“伝説剣豪×新撰組”の新解釈幕末転生エンターテインメント活劇、幕府転覆を目論む不逞浪士と戦う新撰組、彼らを潰そうと蘇りし剣豪たちを奇兵隊として率いる革命の麒麟児・高杉晋作、暗躍する坂本龍馬らによる幕末の戦いを描くもので、今回、松崎史也の特別インタビューが実現！
「主人公ハジメ＝赤澤遼太郎の、成長物語です」
原作が存在する舞台作品、例えば小説原作、あるいは昨今、流行の2.5次元舞台、予めストーリーは知っている、特にアニメやゲーム原作になると、声優の声＝作品やキャラクターのイメージとしてファンの脳内に定着する。そんな【安定路線】ではない、ゼロから物語を紡ぐ、というチャレンジ精神にあふれた作品、初演の手応えに関して松崎は「この話は、主人公ハジメ＝赤澤遼太郎の、成長物語です。僕の考える凄まじい俳優達が凄まじい役を纏い、惜しげも無くその技術と経験値と、今を注ぎ込んでくれてそれにまっすぐ向き合い続ける遼太郎の日々がそのまま作品としての手応えでした」と語る。俳優と物語のキャラクターの成長がリンクする。そして、全く奇想天外なストーリーも面白く、幕末物でありながら、ファンタジックな設定、いわゆる“レジェンド”な剣豪が大勢登場するのが、この亜作品の特長だ。この時間を超えた“剣豪の競演”的な、この設定については「フィクションには含蓄も哲学もあるべきだと思いますが一番はやはりワクワクがそこにあるのが、僕は嬉しいです。何周もしているエンターテイメントの世界においてもう一度ど真ん中を行く「伝説の剣豪、夢の共演」。で、ど真ん中だからこそ超豪速球じゃなきゃいけない。だからこその、あのキャスティングでした。僕が思う現代演劇界最強の剣豪達に戦ってもらっています」とにかく、強者揃いで剣の達人大集合！初演は、そんな空気感である種の華やかさもあった公演だったが、今回も、かなりの剣豪がそろい踏みだ。
「演劇でしか作れないものがあると思っています」
演劇界だけでなく、映画界も漫画やアニメの実写化が目立つ昨今、そこをあえて！舞台発のメディアミックス、つまり、「舞台が原作」、３次元から２次元に、というチャレンジ、いわゆる“逆流”、きっと面白くもあり、難しくもあり、が本当のところではないかと思うが、それに関して松崎は「演劇でしか作れないものがあると思っています。俳優というそれぞれ一人ずつのクリエイターが毎日顔を突き合わせて作品を創り上げて行く過程、毎日ぶつけ合って行く本番。これを行うことによって、作品にもキャラクターにも奥行きの発生や互いの深い理解、極限まで無駄の削除など、非常にブラッシュアップした状態で作品を完成することができます。原作（＝舞台）の完成度を受けてメディアミックス作品を創れることは新しい潮流になるのではと思います」と語るが「難しいことは、この舞台が原作であることによる知名度の無さですね(笑)。どんな作品か知ってから見に行けるモノは大外れが少なく、安心して見に行けると思うので。そこは永年、演劇の課題だし悔しいですが、翻って結局そこが楽しいとこでもあります」、楽しさと難しさはある種の裏表な関係、ゼロから創造することの喜び、しかし、原作モノの強み“話、知ってるから安心”、という観る側の気持ち。しかし、そこにチャレンジする意味がある。
「創作期間の全てが愛おしいです。どうか、一秒でも、一人でも届いて欲しいと願っています」
しかも松崎は脚本・演出だけでなく、自分自身も出演するという八面六臂ぶり！観どころに関しては「新キャラクターとして、宮本武蔵、高杉晋作、吉田稔麿、柳生十兵衛ら幕末のレジェンドも剣豪のレジェンドも更に現れます。どういった形でこの物語に関わってくるのか。彼らの性格、見た目、行動、演技が見どころですし、それを迎え撃つ新撰組、龍馬、フラン、小次郎、五右衛門らももちろん前回以上に見せつけてくれるはずです。自分が演じる山南敬介は、今回大きな転機を迎えます。このメンバーに囲まれたからこそ生まれた言葉があり、それを自分で書き発せられるということは丸裸になることで恥ずかしいですが、幸せなことだと思っています」とコメント。
最後に「凄い奴らが凄い舞台をやる。それに尽きます(笑)。この先、このメンバーとこういう演劇を創ることはきっととっても困難で創作期間の全てが愛おしいです。どうか、一秒でも、一人でも届いて欲しいと願っています。メディアミックスがヒットした時に『私、原作の舞台から追っかけてたから』と、自慢してもらえるよう、まずはこの舞台頑張りますね！」と締めてくれた。
舞台発のメディアミックス、まずは、その誕生の瞬間に立ち会いたい！
＜松崎史也（まつざき・ふみや）＞
日本大学藝術学部演劇学科卒業。演劇企画『SP/ACE=project』主宰。
アドリブ舞台『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』の”医師 マドック」役”をはじめとした俳優としての活動に加え、2014年、自身のオリジナル作品と『Casual Meets Shakespeare』（「普段着でシェイクスピア」をコンセプトに、シェイクスピア作品を脚色し上演するシリーズ）の2通りの企画を中心にライフワークとして取組む場所として演劇企画『SP/ACE=project』を立ち上げる。
近年ではマンガ・アニメ原作の舞台化の脚本・演出も多く務め、その活動の場所を広げている。
代表作
『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ～さよなら絶望学園～』脚本・演出（2015年）
『PRINCE OF STRIDE THE LIVE STAGE』演出（2016年～2017年）
『龍よ、狼と踊れ～Dragon,Dance with Wolves～』脚本・演出（2017年）
【公演データ】
「龍よ、狼と踊れ～Dragon,Dance with Wolves～」～草莽の死士～(そうもうのしし)
期間：2018年3月21日～4月1日
会場：紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
原作：イシイジロウ
脚本・演出：松崎史也
題字：憲真
キャラデザイン：西村キヌ
音楽：横山克
設定考証：芝村裕吏
出演：
ハジメ： 赤澤遼太郎、土方歳三： 谷口賢志、高杉晋作： 鎌苅健太、宮本武蔵： 山口大地、沖田総司 ：大平峻也、吉田稔麿 ：横田龍儀、赤袮武人 ：安達勇人
宮部鼎蔵： 村田恒、女 ：大野未来、フラン： 前島亜美 、近藤勇 ：加藤靖久、 山南敬介： 松崎史也、藤堂平助： 川隅美慎 、永倉新八： 澤田拓郎 、葛木伊織： 田口涼、石川五右衛門： 村田洋二郎、佐々木小次郎： 鐘ヶ江洸 、岩倉具視 ：ウチクリ内倉 、トーマスグラバー： 鈴木ハルニ 、坂本龍馬： 萩野崇
制作：Office ENDLESS
公式サイト：http://officeendless.com/sp/ddw
公式ツイッター:@jinroddw
取材・文：Hiromi Koh
